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地獄の先にこそ私は春を見る、欲しい言葉すぎた

虎に翼はどうしてあんなに名作なんだ。

もともと性差別とかジェンダー問題に敏感な家庭で育っていたので、若造ながらこの手のドラマはたくさん見たつもりだった。でも朝ドラでこんなに真正面から不条理な差別に向き合った作品があったかしら。

主人公・寅子の台詞は本当に戦前生まれとは思えないほど現在に通じている。驚くほど共感できるし、まだ変わってないんだぁとがっかりもする。
彼女の「はて?」に詰まった、結婚が良いものと思えない漠然とした不安感も、女子が勉強を少し良くできるだけで特別扱いされることへの疑問も、子どもができた途端に他人の「善かれと思って」を押し付けられる時の辛さも、多分今とそう変わらない。

何が良いって、寅子が戦うのが男性じゃないことが良い。彼女は父親や穂高先生に認められて法曹の世界に入るから、男性に対する怒りはもともと少なかったんじゃないかな、性別で判断する大人の男性が身近にいなかったと言うべきか。むしろ母親や女友だちの「夫をたてる」姿勢へ疑問をたくさん持ってましたね。基本的に怒り<疑問なのが寅子の好きなところ。
弁護士になった時の祝賀会でも、「私怒ってるんです。」とは言いつつ、絶対に「男性がこんな世界にしたんだ」と性別で分断しようとしなかった。怒ってるのは世間や法律が変わらないことにムカついたから。「みんなで変えませんか」って仲間を増やすことに積極的なんですよね。その点友だちのよねさんは怒りに満ち溢れている、でもその気持ちも大事なんだと思う。寅子の戦い方には芯の強さだけでなく軽やかさや穏やかさがあって、好きになっちゃいますね。

だからこそ「もう私しかいないんだ」の週は辛かった。そんなことないって言いたいけど実際そうだから。一人で何かを背負うこともしんどいけど、後がない状態で続けることもしんどい。もっと言えば、ようやく開けた道を閉ざすのが自分になってしまうなんて辛すぎる。自分ひとりで台無しにしてしまう怖さ。辞めるのが簡単だからこそ簡単に辞めるなんて言えないことってあるよなーと思いました。

ドラマの話はこの辺にして、主題歌の良さを語りたいんだけどよろしい?
米津さんの朝ドラソングってどんななんだと思ってたけど、歌詞が寅子の人生とリンクしすぎててびっくりした。
「100年先も覚えてるかな 知らねぇけれど さよーならまた明日」ですよ?これ寅子が書いただろってなるくらいのぴったりな歌詞。絶対寅子「知らねぇけれど」って思ってるもんね。ねぇ?NHKさん。

中でも「人が宣う地獄の先にこそ私は春を見る」が大好きで。
あれだけにこにこしてヘラヘラしてまったり生きてるような寅子だけど、彼女の選んだ道は地獄なんだよな。でもその道じゃないと嫌なんだよね。地獄が地獄じゃなくなるまで戦う姿が目に浮かぶのだよ。すごく良い歌詞だよ。

個人的な話をすると最近ようやく自分の進みたい道が定まってきてて、今まで楽して生きてきた分ちょっと苦労しなきゃなとか思ってて。
そんなときに寅子の顔を思い出せば「まだいける」って思えるだろうな。あの子の地獄を考えれば軽いもんだろって、まじで無限に頑張れる。春が見えるのか分からなくてもとりあえず飛び込める。

曲の最後に「100年先のあなたに会いたい 消え失せるなよ」って歌詞が多分あったと思うんだけど、「消え失せるなよ」は刺さりますわよ米津さん。
まだまだ自分が気づいてない差別があるんだろうと思うと、絶対差別を受け入れる人間になりたくないし、差別する側になる怖さも忘れちゃいけないと思う。あと自分の性別を理由にして楽したり甘んじたり許したりしたくないね、難しいんだろうけど。寅子たちが死ぬ気で切り開いた道だから、うっかり消え失せないよう、まだまだ地獄のような世間に覚悟して飛び込みたい。という野心メラメラの私になりました。

これから色んな経験するだろうけど、辛いことも楽しめる姿勢でいたいなー
今の私は完全「とりあえずやってみよう」モードで、苦難ハードル挑戦どんとこいなので、1年後の自分が楽しみですね。本当に良いドラマに出会えた、ロールモデルを「猪爪寅子」にしてしまいそうな私です。


「虎に翼」気になった人はぜひNHKのYouTube行ってね。20分で振り返る動画とかたくさんありますよ(回し者)。ぜひとも見てほしいですね。

読んでくださりありがとうございました~