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龍田

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私のものの見方、感覚を根底から変えた能「龍田」について
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陰謀の記憶と騒乱の予兆 「龍田」成立の時代

「龍田」のシテは龍田姫、前半は四番目モノ、後は龍田明神が出現する脇能、神の能です。神様の能は格別なストーリーもなく、美しい謡と舞で安寧を言祝ぎ、繁栄を願うものが多いようです。この龍田もまたそうしたひたすらに美しい能のようでありながら、同時に能にはよくあるように、何か別のことを隠しているかのような思わせぶりな道具立てが仕込まれているようにも見えます。  最初に引かれる  龍田川 もみぢ乱れて 流るめり わたらば錦 なかや絶えなむ の歌は詠み人知らずですが、実は奈良帝(なら

氷る紅葉は天へのきざはし 龍田姫追想

はじめに 私は企業のウェブサイトや営業ツール、展示会グラフィックなどの企画・コピーライトを生業としています。エネルギー、エンジニアリング、業務システムなどが主戦場なので仕事でエモーショナルな文章を書くことは皆無です。日頃の鬱憤を晴らすべく本能の儘に書いた「鬼たちに捧ぐ」を始め、羽生結弦選手の演技についての文章が思いもかけずたくさんの方にお読みいただく機会に恵まれ幸せなことでした。鑑賞するこころを教わったのは能楽からです。能は決められた形に忠実に、数百年謡い継がれた言葉、節、