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『本業2024』感想 010│田代まさし『マーシーの超法則』

田代まさし『マーシーの超法則』
(マガジンハウス)


田代まさしさんと言えば、80年代の後半から
90年代まで、タレントや司会者として
毎日の様にテレビに出演していた。
当時、タレントショップも全盛期で、
彼のグッズを持っている人もたくさんいた。

当時のベストセラー『マーフィーの法則』の
パロディ本として彼の著作『マーシーの超法則』が出版された。
それより前に出版された『田代まさしの道徳読本』
(講談社)では、その後の“事件”を予告するような
フレーズが並ぶと言う。

盗撮、のぞき、覚醒剤・大麻所持、交通事故、
銃刀法違反まで…。
次々と事件を起こして逮捕され懲役刑となり、
初めは浅草キッドも漫才のネタにしていたが、
さすがに洒落にならない事態になっていった。

一方で、最初の事件後、謹慎期間を終え、
田代氏は大学での講演会で復帰するものの、
その様子を盗撮され、切り取られ、晒された。
都合良く報道するマスコミの在り方に対しても
この章では言及している。

罪を償って再起を図ろうとしても、
社会に馴染めずに再犯を繰り返すケースは多い。
過剰な報道も一因としてあるかもしれない。

また、出演者と観客が“共犯関係”で楽しむ
ライブや舞台も、盗撮・盗用される事により、
それを楽しめなくなる可能性もある。

この章の本編の最後、水道橋博士から
田代氏に向けた言葉が印象的だった。

シャネルズ、改め、ラッツ&スター。
ドブネズミだって光り輝くスターとなることもある。が、も落ちれば、ただの路傍の石でしかない。
しかし、その石ころに過ぎない誤った人生の選択でさえ、多くの一般人に対し他山の石となるのが、晒し業である芸能人の道であるはずだ。
覗きで罪に問われてしまったのであるならば、今度は自ら裸になって、大衆に全てを晒し、覗かれるべきだ!
それこそが、黒塗りの過去からランナウェイする事なのである。

『本業2024』75頁

やはり最後の一行がいい…。

元々は大きな石も、風雨にさらされ、削られ、
小さくなって転がり堕ちていく。
その転がるスピードは加速度を増し、
誰も止める事はできなくなる。
最後は砂となり、己の実体は無くなってしまう…。
だからこそ、崩れそうな時も、転がりそうな時も、
踏ん張らなくては…と思っている。



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