〈2024年1月16日 火曜〉『歌われなかった海賊へ』

〈2024年1月16日 火曜〉
 子と一緒に八時半に布団に入り寝たが、私は夜中に起きてしまい、少しKindleで本を読む。

 以前に読んで大変に面白かった逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房,2021)。同書の印象的な挿画を手がけた雪下まゆ氏が田島昭宇のファンだったというインタビューを目にして、それを田島さんに伝えたら「そういうのは素直に嬉しいね、本屋でみて面白そうだなと思ってた、たぶんカバー絵が目に入ったんだと思う」とおっしゃってくださったことがあった。

 昨年10月に出ていた逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』(早川書房,2023)を読み始めた。

 ワンダーフォーゲルという言葉がドイツ語なのを初めて知った。1896年にとある人物がドイツ国内の徒歩旅行記を刊行したのをきっかけに誕生した徒歩旅行のムーブメントは、近代化する大人社会への若者による意思表明として流行した。そんな「どこか第二次世界大戦後から六十年代にかけてのビートジェネレーションにも似た」(「」内は私の感想)自主独立の気風を尊んだ雰囲気は、次第に青年団的に組織化されてゆき、末裔としてヒトラーユーゲントなる模倣者を生むことになる。この物語序盤において、ふとしたきっかけで知り合ったナチ政権下の不良少年たちはあえて「ワンダーフォーゲルしよう」と言い出すのである。

「故に、ナチ政権下にあって、ヒトラー・ユーゲント体制に同化しない若者たちにとっては、半世紀前の若者たちが熱中したワンダーフォーゲルとは、奪われた理想であり、禁じられた自己実現であって──だからこそ、彼らを魅了したのだった。」

 —『歌われなかった海賊へ』逢坂 冬馬著(早川書房,2023)

そういえば逢坂冬馬氏はデビュー前に、ケルベロスサーガとコクリコ坂世界をクロスオーバーさせた二次創作をPixivで『横浜解放区 ケルベロス✕コクリコ坂から カルチェラタン闘争編』と題して発表してたらしいのだけれど、これいまからでも読めないものかな。押井×宮崎×鈴木のカップリングですよ。そそられる。


ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?