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即席麺の暗黒面

いちばん食べる袋麺は「サッポロ一番 塩らーめん」で、これはもう生活必需品なわけだわな。議論の余地なく、あたりまえだ。で、「サッポロ一番 しょうゆ味」。これは私としては娯楽というか文化というか芸術というか、そういう位置づけにしてある。日常食とハレの日の食べ物の違いというか。前者は食料や流通や医療や上下水道といった社会インフラのようなもの、後者は音楽や映画と同じく「心の必需品」のようなもの、という言い方もできる。芸術や文化や娯楽がなかったらメンタルがしんどくなって病気になったり働けなくなるひとが増えるわけでしょう。となると社会を維持するのが困難になる。ならば国としてそれを保護・育成するのは当然に思える。

重病や難病・生命に関わる疾患だけに適用するのではなく、ちょっとした風邪や捻挫といった軽い症状まで広く健康保険を適用させたほうが、それが重病化するのを未然に防げて、実のところ全体の保険料は抑えられる、という理屈と同じだ。そこいら中でしんどさのあまりにアルコール度数高めのストなんちゃらゼロを飲んで毎日気絶してアル中や内臓疾患がどんどん増えるよりも、大麻でも解禁したほうが将来、国民皆保険の維持はできるんちゃうかなあ、なんてことも思うわけなんだけれど。

話が少しばかり逸れた(逸れてないけど)。で、袋麺をつくるときには、冷蔵庫の中にある野菜や肉の調子をみながら、上にのせる具材をいろいろと変えたり工夫してみたりちょっと香辛料や薬味などをフリかけたりなどしてみるわけだ。

しかし、スープそのものは、基本的に前述した二つの製品は完璧なので、これまでほとんど弄ってこなかった。せいぜいたまにラードを足すくらいだった。だが、やってしまったのである──私は、即席麺の暗黒面に堕ちてしまった。

「サッポロ一番 しょうゆ味」 袋の裏面にある説明書き通りの500mlの水、そこにスライスされた豚の腕肉──個人的には、袋麺にいれる肉としてはこれがいちばん脂も肉汁も出てうまいと思う──を入れて湯を沸かす。アクがでたらとる。麺を茹でる。炒めて作り置きしていた、ひき肉もいれる。焼き海苔をレンジで炙る(安価な寿司はね海苔も使う前にレンジの直火でサッと炙ると格段にうまくなる。やり過ぎると海苔が燃えるのでご注意を)。

ここまではいつもの作り方だが、そこに「アミの塩辛」「白だし」と二つの出汁の要素をベースに、タレとしてほんの少し「ヒシク さしみしょうゆ あまくち」を入れる。そして添付された本来の粉状スープは1/3ほどしかつかわない──なんたる高慢、それは混沌だ、調和の乱れだ。

罪の味がした。サッポロ一番を守るジェダイの騎士のつもりでいたが、いまの私はシスだ、ダース・サンコーだ、ポロパティーンだ。いやあ、うまいんだよねこれ……。

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