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〈2022年8月から9月に食べたもの〉

食べたもの──とくに食材を店で自分で選んで自分でつくって食べたものを毎回写真に撮り、少しのメモをし……ということを続けてゆくと、食べることと生きることの境目がなくなってゆくような、どちらが鶏で卵なのかわからなくなるような、妙な錯覚にとらわれる。栄養を摂取して細胞が分裂して脳や神経や身体が何かしらの脈動(比喩的表現)をしてゆく生命活動において、自意識というものがあるらしいのけれど──私は自意識というのがどのようなものなのか実のところよくわかっていないし、きちんと認識できた試しがない──それは食と生のあいだのどの隙間に挟まっているのだろうと考えることもある……が、これから晩めしをつくるので考えるのはいったんやめる。

〈某日〉
先だっての所用で外出時に腹が減り、好きな店が近くにあったので、好きなメニューを食べた。ここのオムライスが好きだ。オムライスというメニューはこの食堂では高価な部類に入る。カツ丼よりほんの少し安く、玉子丼やラーメンよりは高い。材料費としては高価な食材はつかっていないが、ひとりの調理人と火をひと口、ある程度の時間占有するのだから当たり前である。だから店が混んでいるときは頼まないとルールを決めている。私は上にひと筋ひかれたケチャップはスプーンの背で伸ばしてから食べる派だ。


〈某日〉
イベント出演のために、一泊で東京に行く用事があった。正確には、着いた当日は用事を済ませたあと居酒屋で朝まで過ごしそのまま高速バスで帰阪するので0泊二日、都内滞在時間は15〜6時間程度だったろう。予定の時刻よりも少し早く着いて、神田「まつや」と三鷹「みたか」で蕎麦とラーメンを食べてからイベント開催場所に余裕をもって到着するつもりだったが、豪雨で新幹線が80分ほど停まる。東京駅に到着したのは会場入りまでギリギリの時刻で、急ぎ電車を乗り換えイベントのスタッフ入り時刻寸前に阿佐ヶ谷駅へ着き、駅南口すぐの富士そばで春菊天そばを啜る。

イベントは23時過ぎに無事終わり、始発が動く時刻まで居酒屋で友人たちと過ごす。始発に乗り高速バス乗り場(バスタ新宿)のある新宿で一旦降りるが、しばらく来ないあいだにすっかり変わった新宿駅南口・新南口で朝めしを探してうろつく気にはなれなくて、東京駅まで移動する。しかし、東京駅。お店もお土産も多くて地下街も巨大で綺麗でそれは凄いよ、凄いけれど「旅人が少し座る」スペースぜんぜん無いのどういうことだ。お店で椅子にすわる権利を金で買えぬ者以外は立ってろってことかもだけど、駅の外もこんな感じだ。

店が開く前の朝5時6時台に着くと途方に暮れるぜ、東京の顔役だろうに? と呆れ果てる(スーツケースを引きずり重いリュックを背負い朝6時に東京駅に着いてみるといい)。一国の首都の名前を冠し、新幹線からあらゆる路線から停まるハブとしての場所の自覚はそこんとこどうなのだ。駅まるごと排除アートというか、まるで遊具もベンチも撤去されちまった公園みたいだ。いま自分が子連れだったなら「せめて子供だけでもどこかに座らせてやりたい」と感じただろう。

駅ナカのやぶが閉まってから「東京」駅なのに江戸蕎麦三大系統「藪」「更科」「砂場」どれも食えないことにも少し前まで怒っていた。無性に腹が立つので、八重洲口改札外の「そば処 為治郎」(本店は京都)の冷やしたぬきと、改札内「そは'二○」(更科系)の朝そばと、駅そばを続けて食べる。


東京駅のことに関してTwitterに書いたら、(休めるスペースをつくると)「ホームレスが集まっちゃうから」と、それで自身の中で納得しているひとの意見がチラホラきて、そーいうこと言ってんじゃねえーんだしそれで納得してるなよ、あたまんなか経済的合理性奴隷根性が詰まってんのかい、と苛々した。

丸の内側に出ると、それなりに座れるスペースはあるんだけど、高速バスの乗り場は八重洲口のほうなのだ。新幹線乗り場内だって、椅子が少なすぎて階段に座ってるひとがめっちゃ多い。

新宿駅は5時からならバスタもあるし新南口側にそれなりに逃げ場があるし、大阪だと大阪駅(梅田駅)は駅構内にもグランフロント周りにも休めるスペースがあってバスや電車の時間を待つ旅人がよく座っている。子供たちが座っている。用事がないひとも座っている。東京駅の異様さは、実際にスーツケース引いて重いリュック背負って早朝や深夜にうろついてみたらその場所で少し座って休む権利に「課金」するひと以外は完全に排除するつくりになってるのがよくわかる。そして7時前は開いてる店すら数少ない。地下に広がった巨大なモールのヤエチカ、グランスタ、東京駅一番街、沢山の食事・沢山のお土産、はい、素晴らしいですよ。でもお店に入らずとも少しのあいだ座れる場所は数えるほどしかないよ。「顧客」のほうしか向いてないまちもスペースも大嫌いだよ。目的もなくきたひとに居場所があるまちやスペースが好きだよ。

梅田駅に着いて即座にピッコロでカツカレーを食べる。



〈某日〉
S&Bやハウス食品のチューブ。どれも便利にありがたく使わせてもらっているけれど、みんなもっとホースラディッシュを買ってくれ、取り扱いがないスーパーが多いのだ。いちばん使い勝手がよい。カンパチの刺身なんか、オリーブオイルと塩とホースラディッシュで食うのがうまいんだから。そこに胡麻油を少し垂らすのもいい。醤油とワサビなどに出番はないぜ。

〈某日〉
ついに手に入れた〝こいつ〟さえありゃあヨォ……駅そば・立ち食いそばの、〝山菜〟が家で食えるってェ……寸法ヨォ……おろし山菜そばにだってお好み次第ヨ……美しいぜ……食らうぜ……。



〈某日〉
とんぶりを白飯にかけるとき、あんまり醤油ジャブジャブにすると味わいがなくなるし、とんぶりにマヨネーズをつけるとプチプチ感が薄れる。ドレッシングも「これだ」という白飯とのマッチングが未だ見つからない。現段階では醤油で味付けしたツナマヨを白飯にのせ、とんぶりの下に敷くという解決策をみた。


〈某日〉
小ぶりだが「こりゃなんだいカップ酒かい」な価格まで値引きされてた甘鯛を鮮魚店で手に入れ塩をして焼く。しかし甘鯛ってどうしてこんなにも隠し包丁がいれにくいんだ。身や皮は柔らかいのに包丁が鈍った錯覚をおこすほど刃先が入らねえ。あんたさては隠し包丁いれにくいランキングで上位ランカーだろ。食べ終えて「皮は硬いな」と残るならともかく、身も皮もまったく残らないのに何故あんなにも包丁の切っ先が入らないのだ。外見も態度もとっつきにくいが仲良くなると柔らかい心の持ち主かのようだ。

〈某日〉
生麺とスープが二食入りで透明プラにザックリいれてあって、安売り99円とかで売ってるラーメン、特に醤油ラーメンは高速サービスエリアの味がしてうまい。札幌味噌ラーメンとか佐野ラーメンとか京都ラーメンとか高井田系 ラーメンだとか以外に、高速SA系ラーメンというのがあるんです。確固としてある。あるのだ。

〈某日〉
500えんくらいでこういう弁当が日替わりで買えるお弁当屋さん、まちの宝だ。(少しはみ出したり盛り付けが崩れてる部分は私の運びかたが悪かったせい)

〈某日〉
エビと空芯菜とニンニクの炒めものは2分でジャッとつくって2分でジャッと食べる。

〈某日〉
空芯菜とタコの炒めもの。こういうのは2分でタタッとつくって2分でタタッと食べる。

〈某日〉
きみは海をこえてやってきた。きみは文化も風習も違うこの国で嫌な目にあうこともあるかもしれない。でも私は君と話す機会が訪れたなら目を見て挨拶をしたいと思っている。もし友人になれたらもっと話せるのになと思っている。モンゴイカのゲソはいつもおれを悩ませる、きみはどうしたってうまいやつさ。きみがこの国に着いて解凍が下手できみを台無しにしてしまう野郎がいたら、怒らなくてはいけないのはこの国に住む私のほうさ。

悩んだあげく麺にのせる当初案をまるごとボツにし、空芯菜とMắm nêm(マムネム)で炒める。20秒で食べ終える。マレーシアからきたイカと東南アジア原産の菜をベトナムの調味料で食べる。

〈某日〉
「けっして怪しいものじゃありません、少し水をいただけませんか」「あんた怪我してるじゃないか。その服装も旅人には見えないが」「はあ、いちおう考古学者でして……」「それは銃創だろう、学者先生が銃で撃たれるかね? 傷口を消毒したら腹ごしらえをするといい」と出してもらった温かいスープ。

「窓の近くに立っちゃダメです!」このあとサイゼリヤは元スペツナズの傭兵たちに囲まれるんだけど、キートンの機転で脱出するのだ。


〈某日〉
朝定食。白飯味噌汁を土台にハムエッグや焼鮭がつくスタイル。その中で私は生卵と焼き海苔のソリッドなタイプが好きだが小鉢で納豆がありネギを添えられたら「納豆にネギを入れない側の人間」として困る。いや、困らない、ストリートワイズだ、味噌汁に入れるのだ、決まり金玉(東江一紀氏によるFuck Yesの名訳)。

チェーン系の朝定だと「松のや」の玉子丼は好きだ。ただ、先に書いた生卵と焼き海苔スタイルが好きな理由の裏返しでもあるのだが、食べると昼めしのタイミングをつかむのが難しくなるデメリットもある。朝めしをしっかり食べると夕刻まで腹が減らんのよ。

〈某日〉
「私ゃ個人的にはね、大阪の鮮魚店で「生食用」と書かれた甘エビで刺身のまま食べて心底うまいと感じたものはこれまでありませんでしたぜ。外食や高級スーパーなら違うんだろうが、北海道や石川県の現地で食べるモノとは別物だ。店が悪いわけじゃない、単純な話──距離さ。現代の冷蔵冷凍解凍技術でも限界がある。」

「なにせ写真のこいつはこの量でほんの298円さ。だからお店に無理難題は言えないぜ。それに甘エビって食材は、手にとって頭をもぎミソを啜り殻を剥いてそのまま食べるのがうまいのさ──産地の近く以外で食べる刺身としてなら、殻を剥かれ並べられたものなど論外だ。それなら塩辛かピラフか頭ごと味噌汁がオススメですぜ。回転寿司の軍艦巻きの甘エビはたまに皿をとるし、かいわれとマヨネーズを添えた手巻き寿司などは私の好物さ。だがね、それとこれとは別問題──刺身の話だ。」

「ボウルに入れて塩をふる。ラップをして30〜60分ほど冷蔵庫に入れる。これで味が凝縮され臭みも消える。そのあと日本酒で洗う。さらに水を一度か二度ほど替えて──これは甘エビの状態を見つつ、だ。」

「キッチンペーパーで上下を挟んでしっかり表面の水分をとる。おっと話しかけないで……ここからは慎重に……水分は吸収しすぎちゃいけないのだ。あくまで表面だけだ。」

「私見だが、食材として海老と蟹の最も大きな違いは、海老のほうが圧倒的に白飯にあうことだと思う。先ほど〈甘エビは頭をもぎ殻を剥いてそのまま食べる〉と言ったろう? 箸をいちいち置いて殻を剥いて食べてから手を拭くかね? そんなことしてたらせっかくの甘エビ刺身がぬるくなっちまう。ではどうするか! 回答はこれさ!」

「甘エビを手で剥きながら、おむすびを食うんだ。ワサビはおむすびの皿についているだろう? これは時折、指につけてそのまま舐めるのさ。」「フジタ!! 行儀悪いネ!!」「これがいちばんうまいんだからしょうがないだろサラ。」(突然の『ギャラリーフェイク』)

〈某日〉
お盆とはいえ別に自分の休日があるわけじゃなしずっと子の相手やら子のワクチン副反応やら子連れ外出が休みなく十二、三日続いたのもあるのか、この日の夕方ドンッと音をたてて疲労がきた。カップ焼きそばすら口にしたくない。こうなったら水茶漬けよ。白飯、しらす、辛み大根、白だし、醤油、氷水。

〈某日〉
ビフテキ。どうしたって少し醤油をかけてしまうとき日本育ちだなと感じる。塩胡椒だけでウェルダンにしたときはステイツの風が吹く。私が事情や理由があって別の国に住むとして「あいつ牛肉焼いたあとになんか変なモノかけて食ってんだぜ気持ち悪い」とその国のそのまちのひとに言われるかもしれない。

この本なかなかいいんだけれど、読む日は冷蔵庫にビーフがないと少しばかり困ったことになるぜ。日本編の六本木老舗有名店でA5神戸牛の石焼きを前にして〈天井からジョン・レノンの『イマジン』──フルート用にアレンジされたBGM版──が聞こえる〉くだりがいい。

〈某日〉
ソース焼きそばも塩焼きそばもイイ、どっちもどっちもたまらんよ。

でも「味噌焼きそば」って知ってるかい?昔太陽系で粋に暴れ回ったっていうぜ。A.味噌を味醂で溶く、ナスとモヤシと塩豚をAで炒めとく。麺は添付のソースをほんの少し使う。炒まった麺と具を合わせる。グレートだぜ。(実際に味噌焼きそばという料理がすでにあったとして、これはまるで無関係な思いつきだ)

味噌焼きそば、たぶん味噌にあう具──この場合ナスとモヤシ──を選ぶのが突破口になると予想している。

モヤシといえば、カレーにモヤシを使い成功した試しがこれまでない。「カレーにあまりもん、ぜんぶブチこんだるぜ」とやるときに失念して「しまった、モヤシはあかんのや……」とやらかしたことが幾度も。

〈某日〉
マイ冷や中。大人は勝手にこういうので夏を感じればええけど、子供はほうっておくと季節の流れに浮いてるだけだ。季節感にはディテールが必要で、未就学児はそれを自身だけでは手に入れられない。

〈某日〉
フワとハツを山盛りで竜田揚げにする。辛み大根を皮ごとおろす。揚げホルモン添え辛みもり蕎麦を食う。郷土蕎麦は多々あれど、このタイプはないのではなかろうか。


〈某日〉
赤エビの頭とニンニクをオリーブオイルでゆっくり炒めてなにをつくってっかってえと、白魚とタコとエビのスパゲティ。

魚屋で生食用の白魚が安くなるのを狙っていた。鮮度が多少落ちてるので生では食わない。洗って塩でぬめりをとったあと少し口にしてそう判断した。赤エビは食べるとき面倒でも殻つきで火を通す。

それにしても──こういう海産物スパ、特に少し醤油垂らすような和風味付けのスパならなんでもかんでも刻んだ大葉をのせてしまうのは疑問だ。薬味としてあうとは思うが、魚も貝も甲殻類もツナもぜんぶ同じ味になっちまう。和風スパに彩りとしてのせるなら、大葉よりもワケギか三つ葉のほうがうまいのではないか。少なくとも好みとしてはそうだ。

具が大葉とニンニクだけならうめーよ。名づけて和風スパゲティ・ポヴェレッロ(貧乏人のパスタ)は、金ねーときに4kgくらいの安スパゲティ買ってきてよくつくってた。味付けは醤油をひと回し。

〈某日〉
雨の中自転車走らせ子を園に送り、園から出たら雨はやんでいて、いいぞ、これはいいぞとセブンイレブンへ行く。エリックサウスのビリヤニを今日は試すぞ、と行く。しかし弁当はまだ到着せぬか品出し前で棚はがらんとしていた。でもおれにはこのふたつがある。こんなとき口にする言葉はいつも同じだ。

「おれには、これしかないんだ!だから、これがいちばんいいんだ!」(松本零士戦場まんがシリーズ「パイロットハンター」)

まあ、実際、セブンイレブンのお好み焼きパンに替わるものなど、地球上にないのだけれど。ふだんお好み焼きをほぼ食わぬ子ですら、先日出先で「これひと口食べてみる?」「うん」「うまいで」「なにこれ!?グッド!」とひと口食べてサムアップしていた。

〈某日〉
あっさりした汁の平打ちのチルド麺のラーメンでうまいのがあり、そこにうどん出汁の素を足しちまう──邪道にもほどがある──このやり方はスープが強すぎて具を拒否する。力が欲しいか……?力が欲しいならくれてやる……。

ともあれ、それぞれのスープの成分は確認しておいたほうがいい結果は生む。この場合、原材料は二種類あわせて醤油砂糖塩以外に、チキンエキス、こんぶエキス、煮干しエキス、かつお削り節、さば削り節、むろあじ削り節、乾しいたけ、煮干し粉末となる。温度や割合がうまくいくと、「こんなのチャーシューや煮卵やメンマどころか、焼き海苔やネギすらのせらんねえ」という光麺(いわゆる素ラーメン/かけラーメン、ひき肉を「出汁」とするならば)になる。

〈某日〉
茹でてある豆もやしに少しのごま油と醤油かけて梅肉を。25時を過ぎるといいんだよな、こういうの。昼間に食べてもうまいはうまいんだけど、どこか深夜の味がする。


〈某日〉
焼きそば、実際問題めんどうだろうが手間がかかろうが具と麺を別々で炒めるほうがうまくなる条件が揃うのはハッキリしている。局面によっての制約があるから「正解」だとは限らないし、毎回やるわけにもいかないけれど。

のせる目玉焼きに関しても、同じフライパンを使うにせよ、白身と黄身は分けて火を通したほうが味が濃縮されてうまい。そのまま卵を割り落とすと黄身の下にある白身が黄身への熱を邪魔するから、フライパンに黄身を直接落としたほうがいい。写真では火が通った白身の上に、火が通った黄身をのせている。


〈某日〉
関西の夏といえばハモさ。ハモなんだそうだ。この季節、特に京都のひとは48時間以内にいちどハモを食べないと「怪体」(けったい)という妖怪になって「わや」になってしまうらしい。知っての通りハモは小骨の多い魚だ。

ハモちり、つまり湯引きさ。こいつあ大変だぜ。まな板の上でひたすら包丁をタントンタントン、それなりに包丁を使えなきゃ歯触りがよくねえ──まあ今おれが言ってるのは上にのせた梅肉のことで……無論、買うのは骨切り済みさ。ハモに梅肉が合うというのは先人のグレートな知恵ではあるのだけれど、湯からあげて冷水につける前のホカホカのをポン酢やもみじおろしで食ってもうまい。ほっこり。

〈某日〉
茄子と山芋の味噌炒め。以前から何度か書いたが、ナスは不思議な魅力があって、いま目の前の料理──焼きナスやら煮浸しやら天ぷらやら、そしてこの味噌炒め、どれにしても「これがいちばんナスのうまい食べ方だな!」と心の底から信じられる。

〈某日〉
魚焼きグリルでほんの少し焦がしたカリフラワーにオリーブオイルと塩というのは、シンプルな調理法で野菜をうまく食べる中でもかなり上位にランクインするのではないか。

〈某日〉
鯛の刺身、サッと湯がいたおかひじき。ポッカレモン、醤油、すりごま。鯛の刺身にすりごまを初めてかけた人物、どの時代の何者かは知らぬが傑物である。アルキメデス、ガリレオ、エジソン、ゲイツ、ジョブズ級だ。


〈某日〉
冷凍うどん、水なす、おかひじき。塩、オリーブオイル、白だし、適当なドレッシング。おかひじきは茹でて食べるのもおいしいけれど、手でちぎったのを薬味的に生でちらすのもいい。


〈某日〉
初夏から盛夏にかけては摘果きゅうりの醤油漬けをつくってもつくってもすぐなくなる。つくって二晩目くらいがいちばんうまいな。唐辛子はお好みだけど、味の素やハイミーはいれたほうがいいな。きゅうりは包丁で切るのではなく手でポキポキと折り、きゅうりの太い部分は包丁で切るより包丁の腹で潰すほうが味の染みかたがうまいように感じる。断面がシュッと真っ直ぐよりもデコボコしてたほうが食感もいい。

〈某日〉
マグロのすきみはいろいろ工夫するよりも、片栗粉つけて多めのオリーブオイルでフライパンで炒めるので充分にうまいな。片栗粉をつける前に表面をキッチンペーパーで拭くだけ。酒とニンニクと醤油に漬けたりとかそういうひと手間もやったことはあるけれど、やらないならやらんでいい(やってもいい)。火が通ってから適当に塩とごま油とかワサビ醤油とかで味をつける。

〈某日〉
「おきゅうと」原材料:エゴノリ。初めて食べた。福岡の郷土料理。食感は寒天に近いけれど少し違うように感じた。からし酢味噌と鰹節で食べたが生姜と酢醤油でためしてもよかったか。

〈某日〉
餃子は少し遅くなった昼めし13〜14時か、夜中25時に食べるのが旬ではなかろうか。そりゃあ何時に食べてもいいけれど、冷凍餃子がやたらにうまくなった昨今では、その時刻に、より収まりが良くなったように思う。たくさん焼いてふたつみっつよっつ冷蔵庫に残してたのを電子レンジでチンする夜食などはたまらぬものがある。真夜中の残りものの餃子だけにしかない真夜中の気分。


〈某日〉
まーたホヤが安いよ、蕎麦を茹でなあかんなめんどくさいな(ニコニコ顔で)、1チューブがコンビニのおにぎりより安いよ、焼き海苔も炙らなあかんし、まいったなあ(ニコニコ顔で)。

いつ使うかもわからんのに前日から「かえし」なんかつくってらんないし、かといって冷凍蕎麦ではなくわざわざ茹でるなら市販のめんつゆは使いたくはないし──というときは白ダシを醤油で割ってそこにパックの鰹節をぶちこめばいいんよ。めんつゆよりうまいよ(ただし関東の蕎麦を食べ慣れてるひと向けの限定的手法かもしれない)。めんつゆ、近所のスーパーで手に入りやすいのしか使わんのだけど、調味料として便利だし、冷やしうどん、そうめん、ざるラーメンなんかを食うとうまいんだけど、ざる蕎麦にはあんまりあわないように感じる(高いのとかは知りません)。

温かい蕎麦なら、鍋の水に砂糖と味醂と白だしと醤油を適当にいれて火をつけて沸いたら火を止めて、そこに氷をいくつか放り込んで、5〜10分くらいしてある程度冷めたツユをもういちど温めるとうまいように思うけれど理由はわからない。



〈某日〉
お肉やお魚をお肉屋さんやお魚屋さんで買ってチラシや新聞紙で包んでくれると三割うまくなる。赤セン、ココロを魚焼きグリルで焼く。フライパンで炒めるよかうまい。ただ、タレに漬けてから焼くと焦げるのでタレは焼いてから。


そりゃあ直火の網焼きのほうがうめえよ、落ちた脂で煙が出て、ジュージューと心地よい音が出て。でもこれはそういうのじゃないんだ、子供を寝付かせてから台所で用意も後片付けもサッとできるめしのことを言ってるんだ、わかるかい。

〈某日〉
子を寝つかせて、漬け物と生卵でめしを食う。

〈2022年9月半ば〉
「今年の夏に食べたのでいちばんおいしかったもの覚えてる?」と子に問うた。子は「それはリンゴ飴やな」と即答した。夏祭り、盆踊り、あらゆる催しが中止になるギリギリ直前の7月末、園が終わって迎えに行ったあと、自転車の後ろにのせ少し離れたまちの祭りの屋台へ連れていったときに買ったものだ。二か月近く前のことを即答した。2022年の夏に祭りの屋台で買って与えてやれた唯一の食べ物だ。

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