売り出し価格

 先日、「町中華という言葉が気に入らない」ということを書いた。

 しかし、なんだろね、その言葉が敷衍することで、何かしらの価値観の見直しが起こって、ブームでも再発見でもディスカバーでもなんでもいいんだけれど、これまで来店しなかった層がお店に来るようになって注文し金を払い店の利益となる。その店の多くは大資本のチェーン店ではなく個人商店だろう。たとえ一過性の流行だとしても、個人商店にお金が落ちるのはいいことなのではないか。それとも、これまで様々なジャンルで起こったように、大資本がその流行や価値観に目をつけて介入して個人商店よりも安価で小綺麗で高品質なモノをチェーン店で提供するようになり、個人商店は苦境に陥り、流行が去った後にはチェーン店も個人商店もどちらもなくなるということが今後あるのか。

 もう少し考えてみる。大資本のチェーン・フランチャイズのタコ焼き屋が近くにできても、昔からやっている個人商店のタコ焼き屋は何事もなかったかのように営業を続けている場合もある。ただ、その個人商店の半分くらいは生活費のある程度が年金で補えたり、まだ不動産が安かった頃に購入した自宅兼店舗のようにも思える。近所にある商店街で、ひとつの店舗が商売をやめた。それほど規模が大きい商店街でもないし、観光客が訪れたり大きな駅の近くでひっきりなしに人通りがあるというわけでもない。ごく普通の小規模の、混雑/閑散、そのどちらかといえば後者側の商店街である。閉まったシャッターに貼られた不動産屋の〈売り出し価格〉をどんなモンなんかなと読んで価格にたまげた。自分が予想していた三〜四倍ほどの値段だったのだ。

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