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トイレットペーパーはどのタイミングで交換

「村上、トイレットペーパーはどのタイミングで交換するのがいいと思ってるんだ?」
「えっ・・・一条さん、何いってるんスか、そりゃあ無くなったときっスよ」
「それはひとりの時だろ? 同居人がいるときは違うぞ。俺たちはそういうレベルで満足してはいけない、いつでも次のことを考えるんだ」
「次ですか?」
「そうだ、結論からいうと自分の感覚であと三回かな、というタイミングだ。これ以外に正解はない」


「えっ、でもそれってなんかもったいないというか・・・」
「よく考えてみろ普段買っているシングル18m18ロール税込438円。実に32400cmだ」
「cmにすると意外に長いっスね」
「うむ 1cmあたりの単価は約0.0135円。芯を実際に計ると直径約4cm、円周はπ×直径だから、芯に近い部分はひと巻きが約12.56cmになる」
「・・・・・・」

「つまり、18m18ロール438円のトイレットペーパーは、芯に近い部分のひと巻きあたりの価格は0.169円だ、ゴロゴロゴロと幼児が遊ぶかのように10回転させても2円足らず。それを年間あたり何回分惜しんで、同居人にトイレットペーパーを交換させるんだ?」
「ううっ・・・」

普段トイレットペーパーの残りが少なくなってきたときに気がついて買って帰るのは圧倒的に村上なので一条がこんなことを語っても説得力は皆無・・・! だが村上は反論しない・・・! なぜなら得意げに語っているときに水を差されると人は意固地になってしまうからだ。そう・・村上は本人にハッキリとは指摘しないが一条にはめんどくさい部分がある──

「1ロール24.3円だが、かといって1/3ほど残っているのに交換するのは無駄遣いだろう。しかし残り一回だと・・・ここからが重要なんだが、トイレットペーパーの使う量はひとによって違う」
「ああっ!た、たしかに・・・気がつかなかった・・・さすが一条さん!」
「ククッ、だろ? 自分の感覚で残り二回分と思っていても、ひとによっては、そして手洗い中に鼻をかんだりしたら一回では足りなくなるんだ」
「その余白を考えての三回なんスね!」
「そうだ、トイレットペーパーの交換は目分量で残り三回分のタイミングしかない」

翌週、買い置きのトイレットペーパーがなくなったとき、これまでこまめに買っておいたのは村上だったことにようやく気がついた一条は「あ〜〜〜〜〜? カカカ・・・! あれほど得意になってトイレットペーパーの交換タイミングを村上に述べていたのに・・・なんという道化!」と自己嫌悪に陥るのだった──


( 参考:『上京生活録イチジョウ』(福本伸行/萩原天晴/三好智樹/瀬戸義明))

https://comic-days.com/episode/13933686331794993306

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