放送大学 グローバル経済史('18) メモ7 開発と人口

開発とか産業革命というと工業ばかり思い浮かべてしまいますが忘れてはいけない農業の話。

シラバス

放送大学 授業科目案内 グローバル経済史('18)
https://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H30/kyouyou/C/syakai/1639609.html
グローバル経済史(’18)

7 開発と人口

世界の農地・草地(牧草地)面積は19世紀後半から増加し(8+5 -> 34+15 Mkm2)、その一方で森林や草原面積は減少している(60+60 -> 48+36 Mkm2)。主任講師が専門とする南インド・チングルプット県でも19世紀はじめと後半では大きく農地が増加している。この地域では年降水量は1000ミリ未満で年・季節変動もあり元は稲作できなかったが19世紀後半-20世紀にかけて灌漑により実用化され雑穀の5倍の収穫がある。灌漑は水路・ため池・井戸(特に菅井戸)の順に普及していった。ため池は平均して1村に1つあり、共同体の維持に必要不可欠であったことがわかる。同時代に人口も激増している。

東京大学川島博之先生インタビュー。耕作可能面積をGISから推定すると、すでに東アジア、西アジア、南アジアなどでは過剰開発により耕作可能な部分を超えて農地が広がっていることがわかる(段々畑など)。一方、単位面積当たりの収量は古代ローマやインダス、エジプトの文献からも小麦1ヘクタール当たり1トン前後で近世まで長く変化がなかった。そのため増産=開拓であった。

東京大学川島博之先生インタビュー。イギリスで4穂式(小麦-根菜-牧草で回し休耕しない)が始まり18世紀から面積当たり収量が増加し始める。化学が発展すると19世紀にはドイツのリービッヒによって作物の収穫量低下の原因が窒素成分不足であることが解明され、チリ硝石を肥料として輸入するようになった。20世紀初頭にハーバー・ボッシュ法が実用化されアンモニアを空気から合成することで価格が大幅に下がり、窒素肥料(硫安)が一般化する。また在来品種は窒素不足に強い作物であったが20世紀には窒素が豊富なことを前提にした収穫量の多い作物が品種改良で開発されるようになり、「緑の革命」(単位面積当たりの収穫量の増大)につながっていった。今ではインドは米輸出国である。現在も南アジアやアフリカなど窒素投入量の少ない地域があり、食糧生産は改善の余地がある。

東京大学川島博之先生インタビュー.世界人口は18世紀にヨーロッパで人口爆発が始まり、20世紀には世界平均で年率1%ペースで増加したため深刻であったが、21世紀に入りアフリカおよび西アジアの一部の紛争地域を除き安定化の方向である。これは人口爆発が主に農村部に顕著で、都市化が進むと住宅問題がおきるためだと考えられる。アフリカでも都市化が進んでいることからいずれ人口は安定するのではないかと考えている。

東南アジアでは現在米の輸出が盛んで、そのほか砂糖や天然ゴムなどもグローバルに重要な産物であった。耕作面積ではジャワ、下ビルマ、タイなどの地域で19世紀中盤からの100年足らずの間に2倍-6倍程度に拡大し、人口も各地域で19世紀から20世紀前半にかけて年率1%で増加、インドネシアでは人口は2億人を超えている。東南アジア地域は農作物の生産でも消費でもグローバル経済で存在感を示すに至っている。

感想

川島先生の語る地球の人口問題と食糧問題に関する超楽観的な見通しが衝撃的でしたが、肥料や都市化の影響をなめたらあかんということですね。子供のころから信じていた「地球ヤバイ」的なイメージは何だったのかと。学校の授業で習ったはずのインドの「緑の革命」、忘却の彼方でありましたが、この業界では本物の革命であったと。ということはこれから飢餓が深刻になるとすれば、それは生産の問題ではなくて流通・分配の問題だということになるんでしょうかね。

米が実は世界的な商品だとは普段の生活ではなかなか気が付きませんが、おっさん世代的には1993年の米騒動がそれを意識するきっかけになったんじゃないかと思います。https://ja.wikipedia.org/wiki/1993%E5%B9%B4%E7%B1%B3%E9%A8%92%E5%8B%95

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