放送大学 物質・材料工学と社会(’17)- 第5回 自動車Ⅱ エンジン・二次電池・燃料電池

自動車は化学反応の塊。

シラバス

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https://www.wakaba.ouj.ac.jp/kyoumu/syllabus/SC02060200201/initialize.do
物質・材料工学と社会(’17)
Materials Science and Engineering in Our Society ('17)
主任講師名:谷岡 明彦(東京工業大学名誉教授)、里 達雄(東京工業大学名誉教授)

- 執筆担当講師名:里 達雄(東京工業大学名誉教授)
- 放送担当講師名:里 達雄(東京工業大学名誉教授)
- ゲスト:秋鹿 研一(東京工業大学名誉教授)

概要

- 自動車エンジンの構造材料は主にアルミニウム合金(Al-Si系)で、低温鋳造(シリンダーヘッド)やダイカスト(シリンダーブロック)で成形される。アルミニウム合金は軽くは熱伝導率(冷却)がよく鋳造性がよいなどの特徴が活かされている。Al-Si系は凝固収縮が少なく熱膨張率が小さい。摩耗しにくく、Cu,MG添加により高強度化が可能。実際のエンジン摺動部には鉄を溶射するなど工夫がある。

- 熱機関の効率は、高温側から熱Qhを受け取り低温側へ熱Qlを捨てる時の仕事WとするとW/Qhで定義され、カルノーサイクルの場合には1-Tl/Thとなる。これはヒートポンプの効率-Qh/Wの逆になっている。

- ディーゼルエンジン: 吸気時に空気のみ吸入し圧縮時に燃料を噴射して着火する。ガソリンエンジンより高温のため効率が良い(上記)
- ガソリンエンジン: 吸気時に空気と燃料の混合気体を吸入し圧縮時に着火する。


- ディーゼルエンジンでは直鎖状の分子の燃料が好まれる。例えばn-セタン(C16H34、セタン価***)のほうが分岐の多いヘプタ2,2,4,4,6,8,8メチルノナン(i-C16H34、セタン価15)より好まれる。これは酸素のアタックに出会いやすく着火すると一気に燃えるためである。バイオディーゼルに含まれるパルミチン酸メチルC15COOCH3もセタンとほぼ同じ形状の直鎖型である。
- ガソリンエンジンでは分岐の多い分子の燃料が好まれる。例えばイソオクタン(C8H18、オクタン価100)がn-ヘプタン(C7H16、オクタン価0)より好まれる。これは酸素のアタックを受けにくく空気と混合した状態でゆっくりタイミングを合わせて燃えるようにするためである。

- 原油は植物由来であるため硫黄や金属を含む。その残留濃度によりガス(-0)、ナフサ(0.05)、灯油(0.3)、軽油(1.5)、重油(5 S%)に分類され水素化脱硫されて製品になる。

- 理想的なエンジンではCO2, H2O, N2のみを排出するが、実際には空気過剰燃焼ではNO、燃料過剰燃焼ではCOが生成されることがあり、排気ガスを酸素センサーで監視し燃料と空気を調整している。酸素センサーはTiO2が半導体の性質を持つことを利用しており、酸素分圧が上がるとTiO2内のドープされた自由電子が酸素に置換され電気抵抗が上がる。適切な空燃比として(量論比)14.7が用いられる。

- 排気ガスはハニカム構造のマフラーを高速で通過する。その表面にはナノ白金粒子がコーティングされており、表面はダングリングボンドにより活性でありCOやNOが分解されより安定な物質に変化する。

- 2次電池は2種類の金属のイオン化傾向の差を利用して充放電を行う。正極・負極の材料の組み合わせにより電圧が決まる。鉛電池で約2V, Liイオン電池では3.7V、水素と酸素で1.23Vである。

- リチウムイオン電池の負極に用いられるLiは反応性が激しいため、実用的な電池ではグラファイトの層の間に閉じ込められている。正極にはLiCoO2などが用いられる。電解質としてLiイオンのみを通す物質が開発され実用化された。

- 東工大菅野先生「固体リチウムイオン電池ができると信頼性があがり直列に積層する際に個々のセル分離する必要がなくなる。正極、電解質、負極の粉末をシートにして貼り合わせたテストセルを真空で作成し、反応を調査したり充放電のサイクル数耐性の評価を行っている。」

- 燃料電池車では高圧水素タンク(700気圧)から燃料電池スタックへ水素を供給し、発電した電力をモーターに送る。このほかバッテリーも積んでおり「ハイブリッド車の構造に似ている(トヨタ)」。

- 燃料電池では水素と酸素のイオン化傾向の違い(H2->2H+2e-, 2e-+2H++(1/2)O2 ->H2O )を利用する。この際電解質にプロトンH+のみを移動させる材料Polymer-SO3Hが開発されて実用化が進んだ。

感想

あれ、第5回と6回が入れ替わってしまった。書き忘れていたらしい。オクタン価は車に乗らないので全然気にしてませんでしたがそういう意味でしたか。

リチウムイオン電池では不安定なリチウムを閉じ込めるためにグラファイトを使っていたのですねー。また燃料電池車の水素は高圧タンクに入っているということで、これはみんな驚きのようです。今後の技術開発に期待の分野。

ちょっと面白かったのが酸素センサー。半導体?の性質を使っているのかな。フィードバック制御になっているわけですね。

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