放送大学 グローバル経済史('18) メモ11 グローバル経済の深化とライフスタイル

意外にも学校教育や余暇の制度もグローバル経済の影響だという。

シラバス

放送大学 授業科目案内 グローバル経済史('18)
https://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H30/kyouyou/C/syakai/1639609.html
グローバル経済史(’18)

11 グローバル経済の深化とライフスタイル

産業革命以降、安い工業製品が供給され広く一般の人々が買えるようになったという面があるが、一方で労働者は貧困、過酷な長時間労働や不衛生な環境の問題が発生した。この問題は全ての国の工業化の過程で見られており、現代において発展途上国が工業化される際にもその反省が活かされたとは言えない。

ロバート・アレン「発展の標準モデル」において教育が条件の一つとされる。産業革命で工場労働者が必要になると学校教育が政策的に整備された。初等教育では基本の読み書きや計算、時間を守る、社会性を身につけさせるなど労働に必要な素養が教えられ、中等、高等教育では従来の大学に加えて実務・技術に特化した専門学校などが整備された。イギリスにおける識字率は近世以降一種の初等教育が行われたが50%を超えるのはやはり産業革命期(18世紀)であり、また女性の識字率は10ポイント程度低く、教育が立ち遅れたことがわかる。

「Time is money」(Benjamin Franklin)ともいわれ、労働者が時間で労働力を切り売りする賃金労働制度が確立した。時間の概念も変化し、太陽の動きや教会の鐘から時計が決めた時間に従う生活へと変化した。

労働者階級の出現は制度的な余暇の必要性を生み出した。都市では公園が整備されたほか、19世紀に交通の発達とともに旅行ビジネスが生まれた。イギリスのトーマス・クック社は団体鉄道旅行、時刻表、トラベラーズチェックなどの商品を開発した。同じ時代にイスラム圏でもメッカ巡礼が庶民階級に広まったり、日本でお伊勢参りがブームになったのは、表向きは宗教活動であるが同時に余暇活動を兼ねていたともいえる。

都市化による環境悪化と交通の発達により伝染病が拡散したことはグローバル化の負の側面といえる。14世紀モンゴル帝国の時代にペストが中国から中央アジア、ヨーロッパで猛威を振るい人口減少をもたらした。16世紀には新大陸に持ち込まれた天然痘により先住民の人口が激減したと考えられる。逆に新大陸から旧大陸には梅毒が拡散し16世紀には日本に到達した。コレラは1817年第1次パンデミックでカルカッタから鎖国体制にあった日本でも流行が起きている。

天然痘については18世紀半ばに牛痘法が、1798年にエドワード・ジェンナーがワクチンを開発するなど、パンデミック対策は近代医学の進歩を促してきた。パンデミックの防止には検疫制度など国際的な協調が必要であり、1851年第1回国際衛生会議(パリ)、1948年にはWHOが設立されるに至っている。

第1次大戦後、自動車の普及などでアメリカは世界経済の牽引役となりWW.ロストウが提唱した世界初の「高度大衆消費社会(high mass-consumption)」となった。先進各国がこれに続いたが、今後多くの発展途上国でも工業化が進展し大衆消費社会となっていくにつれ、資源問題及び環境問題が避けられない。

感想

そういえば大学の歴史学だったか教職だったかの講義で、だいたいどこの国でも最初にできる教育機関は支配者層・エリート向け高等教育(大学とか藩校とか)、次に経済が発達して労働者を育成するための初等教育(小学校、寺小屋)、最後に、間をつなぐための中等教育(中学、高校)の順番らしい。

19世紀イギリスで労働者階級の余暇活動のために旅行が普及したのは分からんでもないんだけど、江戸時代の日本でも、イスラム圏でも旅行ブームになるのは何故だろうと思います。興味深い偶然の一致なのか、やはりグローバル経済を通してつながっているのでしょうか。

そして最近の訪日・インバウンドブームや麻疹の再流行などを見ると、歴史は繰り返すというかなんというか。

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