放送大学 物質・材料工学と社会(’17)第15回 明日の材料開発

最終回! 環境問題と安心・安全枠

シラバス

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物質・材料工学と社会(’17)
Materials Science and Engineering in Our Society ('17)
主任講師名:谷岡 明彦(東京工業大学名誉教授)、里 達雄(東京工業大学名誉教授)

- 執筆担当講師名:谷岡 明彦(東京工業大学名誉教授)
- 里 達雄(東京工業大学名誉教授)
- 放送担当講師名:谷岡 明彦(東京工業大学名誉教授)
- 里 達雄(東京工業大学名誉教授)
- ゲスト:秋鹿 研一(東京工業大学名誉教授)

概要

- 材料開発の今後について、環境とインフラの安心安全の観点から考える。

- 新興国では一人当たりCO2排出量は一人当たりGDPの伸びにつ淹れて増加している。先進国では一人当たりGDPが伸びず、一人当たりCO2排出は減少傾向である。COP21では2050年までに日本がCO2排出量を60-80%削減することとなった。試算として日本の人口が年率-1%減少とし石油だけ年率-2%とした場合が2050年で58%削減となる。厳密には再生可能エネルギーのCO2はゼロではないが化石燃料よりははるかに少ない。

- 現状ではどのエネルギーの種類でも経済性とCO2排出の少なさが両立できておらずトレードオフとなっている。一つの解決策として、海外の安いエネルギー源(再生可能、もしくはCO2固定化)で水素を生成し、液体水素、有機ハイドライトMCH 、アンモニアNH3などのキャリアの形で日本に輸送することが考えられる。水素はこれらから復元されるか、アンモニアの場合には直接使用することができる。

- アンモニアは燃焼してガスタービンで使用することができる。旋回流によって高速に混ぜると燃焼が低速なアンモニアでも強力な火力が得られる。また石炭火力発電に混ぜることもできる。また水素の代わりにアンモニアを用いる燃料電池も研究されている。ここではプロトン導電性膜ではなく酸素導電性膜を使用する。これはTiO2やZiO2が不定比酸化物で酸素イオンが動く性質を使っており、酸素センサー(第9回)と同様である。

- インフラは2026年以降、建設50年を超えるものが急増するので、そのメンテナンスと安心・安全が課題である。

- コンクリート構造物の劣化要因、アルカリシリカ反応(反応性骨材に含まれるシリカの吸水膨張)、凍害、塩害、疲労

- 鋼構造物の劣化要因、腐食、亀裂・疲労亀裂。

- ライフサイクルコストLCCの考え方で評価・診断・寿命予測を行って補修・補強を決める。通常大規模補修と架け替えが必要になるところ、小規模な補修を適切に行って経費を節約することができる。

- 生体・医療用材料(Tiや有機材料など)ではより難しい要件がある:化学的に安定、生体組織適合性、静的強度、適度な弾性率と硬さ、対疲労性、耐摩耗性。今後は単に生体と反応を起こさないだけでなく、治癒を促進させるといった方向が模索される。

- 5R (Reuse, Recycle, Reduce, Repair, Refuse)という循環型社会に向けて法律の整備が進む。これに伴うCO2発生は消費者にとっては自明ではなく、LCAによる環境影響評価が必要である。ライフサイクルアセスメントLCAとは製造-廃棄・再利用までの各段階の環境負荷を明示し改善策を利害関係者とともに議論する手法である。蛍光灯、コピー機トナー、アルミ缶、ペットボトル等は進んでいる。その他のプラスチックではガス化・水素化も行われる。

- 今後の材料開発について、第1種基礎研究(分子・原子の性質)、第2種基礎研究(材料の機能)、と工業製品の間には死の谷があり、多くの研究は実用化されない。これはボトムアップ型研究であったが、現在は課題をもとにしたトップダウンアプローチが必要でリニア型からネットワーク型への転換が必要。

- 資源の元素戦略とは、希少なもの、有害なものへの依存性を低下させていくことであり、鉄や炭素などユビキタス元素を使いレアメタル、レアアースへの依存度の低減させることがリサイクルの面でも有効。

感想

全ての問題は環境問題に通ずという感じですが、特に水素キャリアへのエネルギー媒体・輸送形態の大転換が起きるのかどうかがこの10年ぐらいの焦点になりそうでしょうか。

「安心・安全」はよくセットで語られていますが、どうも国の研究予算などで一つの枠を形成しているようです。

全体を通してみると、生活に密着して興味深いトピックが多く面白かったですが、どうしても知識詰込みになりがちなのが辛いところ。自分はモノづくりをする人ではありませんが、産業の成り立ちを考えたり、買い物や商品を利用する際にも何か意識が変わっていくような感じはします(漠然)

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