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福祉サービスの課題/サンクコスト重視

「サンクコスト(埋没費用)」という考え方があります。行動経済学です。ここでやめてしまうと、今までの努力が無駄になる、もったいない、そんな意識です。私たちは、日々の生活の中で合理的な判断より感情的な選択をしています。また、福祉サービスにおいては、コーディネーター役の支援者がサンクコストに価値を見出していることもあります。

私は障がいのある人が利用する事業所を経営しています。今は理事長です。しかし、現場の支援者でもあります。また、ときどき外部の支援者による会議に呼ばれることがあります。ある支援者会議でのできごとです。

事業所になじめない利用者の支援について

対象の利用者は、養護学校の高等部を卒業して福祉サービスを提供する事業所の利用を始めました。学校時代にその事業所で体験実習をしました。そのときは、積極的に活動に参加し、気持ちが荒れることなく5日間の体験実習を終えました。そのことからその事業所の利用を始めました。しかし、正式に利用を始めたのち数か月が経つと興奮して大きな声を出したり、支援者を振り切って飛び出すことが始まりました。その利用者は辛いと訴えています

事業所の支援者は、内部で会議を開催しプログラムを変更したり、グループを変えたりしました。また、定期的に外部の専門機関と支援者会議を開催し、対応を検討しました。会議では現場の支援者がさまざまな取り組みを報告し、専門機関がアドバイスをします。そのような会議が何回も繰り返されました。しかし、成果がでませんでした。

会議の〆の言葉

その会議の最後に、コーディネーター役(外部専門機関)の支援者がこう言って場を閉めました。

「それでは様子を見ながらですね、何かありましたら情報共有をお願いいたします。それでは次回は…」

そこで私は言いました。

ちょっと待ったー!

「すみません、様子を見ながらって何を見るんですか?」

私が質問にコーディネーター役の支援者が答えてくれました。

「ご本人も支援者も、せっかくここまでがんばってきたので、ここはもう少しこのままですねぇ…」

ちょっと待ったー! その2

利用者は、毎日、つらいよーと大声を出し、その場から逃れたくて支援者の手を振り切っています。これは、がんばりではなく我慢です。また、支援者は、働いてお金をもらいます。がんばるのは当たり前です。そこを今までのがんばりが報われないと言っては解決にいたりません。他の事業所やサービスを使うことも必要です。福祉サービスは、いまだ結果より過程重視です。

私の「ちょっと待った」が原因か、コロナの密回避のためかわかりません。最近、会議に呼ばれません。この利用者のことが気になります。

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