仕事のこと3

忘れる技術

業務提携を結んでいる、訪問看護ステーションがあります。そこの理事長からは医療に関する知識だけではなく、支援にたずさわるうえでの心得や管理者としての心得、生きる知恵、いろいろなことを学ぶことができます。

私たち支援の現場においては、個人情報の管理も大切な仕事です。しかし、現場の効率性や、支援者のこうあるべきであるという意識から利用者さんの個人情報を規程の範疇を超えて事業所間で共有してしまうことがあり、それが課題となっています。

利用者さんと事業所の間では「個人情報使用同意書」を結びます。そこには必要な場合において関係機関で情報を共有することに同意をいただいています。問題なのは、何をもって必要とするかということです。

日中活動と夜間の生活支援では利用者さんについて別々の情報を持っています。支援者はそれをすべて共有しようとします。たとえば、日中活動において利用者さん同士で口論からケンカになったとします。それを生活の場であるグループホームに伝える必要はあるでしょうか。ケンカになった相手が同じグループホームで生活をしているならば伝える必要があります。しかし、そうでなければケンカしたことをグループホームの支援者が知る必要はありません。知ってしまうとつい、今日、●●さんとケンカしたんだってと、話してしまい利用者さんはバツの悪い思いをしてしまいます。

生活の支援をしていると、ご家族よりご家庭の事情を聞かされてしまうことがあります。それはその方の支援には関係のないことです。そのことについて訪問看護ステーションの理事長はこうおっしゃいました。

必要のないことは忘れなければいけません。私たち(看護師)は忘れる訓練をします。

その情報を持っている必要があるかどうか私たち自身が考えて選択をしなければいけません。これは個人情報をあつかうすべての者が意識しなければいけません。

いろいろなことを示唆してくれる理事長は、元国立病院の婦長さんを務められた方で、今は80歳を超えてなお現役で私たちを引っ張って行ってくれる素敵な方です。

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