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連絡帳に書かれた家族からの申し出

障がいのある人が利用する事業所を経営しています。福祉業界には、利用者のご家族と支援者の間を行き来する連絡帳があります。ある休み明けのことです。連絡帳に「悪いことをしたらきつく注意してください。隠さず教えてください。」という一言が書いてありました。利用者の家族からです。

連絡帳を書く

福祉業界に存在する、連絡帳の必要性について考えています。利用者の中には、自分で一日のできごとや連絡事項を家族に伝えることができる人がいます。それでも連絡帳を書きます。また、利用者の中には、支援者が連絡帳に書く内容について神経質になっている人もいます。

私の法人では、連絡帳を書く目的を明らかにして、読み手が不安に思わないような書き方にするようにしています。その中で、冒頭の言葉が連絡帳に書いてありました。

注意しない工夫をしよう

私は、家族に連絡を取りました。家族は、別の人から、その方の家族(利用者)への対応で、支援者が困っている様子を何回も見たと言われたとのことでした。しかし、連絡帳には何も書いていないので不思議に思ったと言っていました。また、ご家族は、「施設の人が言ってくれないと人の言うことを聞かなくなります。もっと厳しくして欲しいと、今までもお願いしてきたのに…。」とおっしゃっていました。確かに、あらためて連絡帳を読み返すと、ご家族の方針が読み取れる箇所が幾つかありました。

支援者は、家族からの申し出と法人理念の間で板挟みになっていました。私の法人では、法人理念を具現化した支援姿勢の中で「注意しない工夫をしよう」と掲げています。支援者は、家族からは「厳しく注意してくれ」と頼まれ、法人からは「注意する前に工夫しよう」と言われていたのです。

注意してという要望

障がいのある人の中には、意思疎通がうまくいかず、粗暴な行動に出てしまう人がいます。それを「問題行動」とラベリングします。しかし、私たちはそこまで見越して利用をしてもらっています。「何でそんなことするの」と注意する前に、そうならないようにみんなで工夫をしようというのが法人の考えです。

利用者が粗暴な行為に出ることは、ある程度予測ができます。そこを察知して被害を最小限に食い止めます。その工夫や予防策は、支援計画に書いて、本人や家族、支援者間で共有をします。しかし、家族からは、注意して欲しいという要望がたくさんあります。

連絡帳の盲点

多くの利用者は、養護学校を卒業してから事業所の利用を始めます。在学中に複数の事業所で実習をしてから利用先を決めます。しかし、事業所と本人の相性、活動内容、所在地などすべてが希望と合致するところはあまりありません。そのため、利用を始めてから家族の方針と法人の方針が合わないということがあります。さらに、支援者は、書くことに集中して家族の方針まで読み取れていませんでした。

連絡帳でのやりとりは、コミュニケーションの一つです。ただし、連絡帳は、補助的なツールです。家族の高齢化に伴い、連絡帳でも伝わらないことが増えました。利用者やその家族に応じたコミュニケーション方法が必要です。また、連絡帳には、時差があります。さらに、文字は、何度も読み返して考え込み、余計に煮詰まります。話の内容に応じた連絡手段を選ばなければいけません。

他にも連絡帳に関する記事を書きました。


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