もし社会科教師が、未経験の『ハンドボール部』顧問になったら①
私が教師になった2013年には、まだ「学級運営と授業と部活動を全部やってこそ一流の教師」的な風潮が残っていた。実際、それを目指したいとも思っていた。
・・・しかし、時代の潮流は大きく変わった。
世の中の「働き方改革」の流れの中で、メディアによって大々的に「教師=ブラック」が叫ばれた。もはや、教師はかつてのように憧れの職業ではなくなった。その渦中にあるのが部活動だ。そもそも、授業や学級運営の業務をブラック視する人は少ないだろう。
私は、望んでいない教師まで部活動指導をすることを是であるとは思っていない。土日まで「やらされて労働する」のが良いとも、到底思えない。それでは教師は疲弊し、結果的にしっぺ返しを食らうのは子どもたちだ。
教師を魅力的な職業として復権させ、子どもたちに元気な先生でいるためには、部活動改革は至上命題だ。
ただ、部活動が教師の仕事として消えてしまうかもしれないその前に、競技歴ゼロのド素人ハンドボール部顧問が、「やって良かった!」と思う点について、改めて書き留めておきたいという衝動に駆られた。
①マネジメントなど「組織運営理論」について学べる
部活動の顧問を受け持つということは、ある意味小さな会社を経営することに近い。キャリアが浅い段階で、理念形成から組織運営までを一手に担うことで、多くの失敗と小さな成功を何度も何度も経験できるというのは、その後のキャリア形成を考えても、大きな財産となる。
恥ずかしながら私は「本」をあまり読んでこなかった。ただし、教師という職業は一日に何度も「ライブ(=授業や部活動指導)」の舞台に立たねばならない。つまり、猛スピードでアウトプットを迫られるのだ。行き詰って自分の中に最適解がなくなったとき、部活動は書籍にあたる動機もプレゼントしてくれる。
教師は教科教育や生徒指導、学級運営のプロではあっても、どうしても実践ベースに偏ってしまうため、理論を学ぶ機会は現場に出るとそう多くない。
いわゆる強豪校ではなく、「勝ちたい!!!!」「仲間が欲しい」「フィットネスクラブ的な・・・」といったように、参加動機も多様な部活動の組織運営を行うにあたり、「哲学」がなければ、組織はバラバラになる。
教師側に「何をやるか?」の前に「なぜやるか?」があれば、組織はブレにくくなる。ある意味、大学等のアドミッション・ポリシーに近いものである。だからこそ、運営責任者たる部活動顧問に、理論や哲学は不可欠なのだ。
(http://yamagenmemo.blogspot.com/より引用)
組織運営を行う上で、戦略的思考やマネジメント、リーダーシップなど、様々な「思考のフレームワーク」に触れてきた。というか、学ぶ必要性に強く迫られるのだ。結果的に、それらは部活動だけでなく学級経営や授業、その他、校内外のプロジェクト運営にも大いに役立った。
(株)BYD代表取締役の井上創太さんにお会いした際、「リーダーシップを学ぶには、自分でプロジェクトをやること」と仰っていた。まさに部活動は生徒にとっても教師にとっても一大プロジェクトである。ボトムアップ理論を提唱している畑喜美夫先生の「全員リーダー制」を取り入れる動機にもなった。何より、部活動顧問にもリーダーシップが求められることは、言うまでもない。
子どもたちにとっては「競技経験・指導経験豊富な方から教わった方が幸せなのではないか?」という思いはいつも消えないが、ハンドボール未経験の自分だからこそ、競技の面白さを理解しつつ、ハンドボールを目的化せずに、教育の手段として客観的に見つめられている点については良かったなと思っている。
【オススメの参考文献5選】
1.『THE TEAM 5つの法則』:組織運営を「システム」で体系的に示した良書。部活動運営だけでなく、幅広く汎用性のある内容になっている。
2.『超集中で人は変わる ~弱者を甲子園に導いたリーダーの能力を伸ばす最高の方法~』:正攻法のみにとらわれず、文字通り「超集中」させるための具体的かつ本質的な事例が盛りだくさん!
3.『ラグビー もっとも受けたいコーチングの授業』:ラグビーを題材とした本だが、練習の組み立て方に関する基本的な考え方が示されている。コーチングについて学ぶ手段としても◎
4.『チームスポーツに学ぶボトムアップ理論 高校サッカー界の革新者が明かす最強の組織づくり』:言わずと知れた畑喜美夫先生の書籍。ブラック部活の対局に位置する、部活動改革の指南書としても。
5.『カリスマ体育教師の常勝教育』:いわゆる困難校で全国大会常連を果たしたカリスマ教師、有名な原田先生の著書。ドラマとしても面白い。
次回は、「②定点観測が可能である」ことについて、綴ろうと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?