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バッセン師弟空間#1 「あいつ、家族以外と初めて2人で出かけたんです」

とある金曜日の夜8時。
東京都足立区・隅田川沿いにあるバッティングセンター・アミューズパーク足立アメージングスクエア店に1人の若い男性がやってきた。
彼の名は、同地区内で活動する少年野球チーム・柳原スターズの監督・大久保隆人。
25歳の若さながら、創部27年の伝統あるチームの指揮を執る。
彼は週3日、このバッティングセンターに足を運んでいる。
これは何も自らの練習の為ではない。

本連載の舞台・足立区内のバッティングセンター


「今日は眼科が長引きそうということでお休みみたいです」
本来であれば、同チームからもう1人来る予定だった。
勝負強さとシュアな打撃センスを持ち、4番打者と副キャプテンを務める龍君(小学6年生)だ。

試合前、集中した面持ちの2人


試合前の打撃練習に臨む龍君


大久保監督と龍君の関係は、家族でもなければ親戚でもない。
ただの監督と選手という関係性に過ぎない。
しかしながら、大久保監督は同バッティングセンターにて、自らの時間を龍君の指導に充てている。

龍君への指導自体はまだ1年半と短いが、この、選手とバッティングセンターを訪れるという活動はかれこれ5年間続けているという。
周りを見渡してもかなり稀なケースであると感じる。
実際に、「よくそこまで面倒見れるよね」と監督・コーチなど同業界から驚きの声も絶えないという。
筆者も、その原動力を知りたく、深掘りして聞いてみた。

「最初は、当時在籍していた選手のお父さんが野球に詳しくなかったから、『じゃあバッセン行く?』って誘ったのがきっかけです」

元々、このチームの卒団生だった大久保監督。
小学6年生での卒団と同時にコーチに就任し、指導者としての道をスタートさせた。
そして3年前、晴れて監督に就任した。
熱心な指導には定評があった。

龍君へのバッセン指導が始まったのも、同じようなきっかけだったようだ。
「お父さんは野球経験者ではあったんですけど、まあ野球好きそうだったから『行く?』みたいなかんじで」
龍君のお父さんは「あいつ、家族以外と初めて2人で出かけたんですよ」と興奮気味に言っていたという。

「やることに対して特段意味はないです。野球が好きなら見てあげたい。ただそれだけです」
親切心そのものだ。

最後に、この活動を通して今後龍君にどうなってもらいたいかを聞いた。
「特に希望はないです。別に野球以外のスポーツをやってもいいし。そこは強制できることではないので。まあ、願望としては野球を続けてもらいたいですけどね、高校くらいまでは」

長嶋監督による付きっきりの指導で花開いた松井秀喜氏の例にもあるように、令和になった今でも、各地を見渡せばこういった師弟関係は少なからず存在しているのだろう。
手塩に掛けて磨いた原石は、どんな輝きを放つのか。
今後、この2人から目が離せない。

野球少年とその親で賑わう同バッティングセンター。
次は大久保監督と龍君の2ショットが見れるか。


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今後、2人のバッティングセンターでの練習を追った記事を連載としてお届けしていきます。
是非お楽しみに!

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