バッセン師弟空間#3 龍君流・スランプの乗り越え方
最近、快音が聞かれない。
ここ数日は差し込まれてのポップフライやゴロが目立っていた。
この日も前回と比べ、芯で捉えた鋭い打球は少なかった気がする。
「調子はあまり良くない」と口にした龍君。
「大体月に2・3回くらい、不調な時がある」
別々に聞いたにも関わらず、龍君の答えと大久保監督の答えは一致していた。
これも1年半を共に歩んできた師弟ならではか。
不調の原因を「ポイントが後ろになっているのと、手首の返しが早い」と分析した大久保監督。
前回同様、彼はバッティングゲージに入り、真後ろから助言を送った。
今後、試合が多く組まれる時期に入る。
龍君の一打なくしてチームの勢いは生まれない。
長いトンネルにならないことを祈るばかりだが・・・
そう心配している筆者を見て、大久保監督はあるエピソードを話してくれた。
「振り返れば、以前も試合前日までスランプが続いたことがあったんです。
その時は、『野球ノートに書いたことを振り返って、家で10回でもいいから素振りをしよう』とアドバイスを送りました。
そしたらその翌日の試合でランニングホームランを打ったんです」
相好を崩しながら口にしてくれた。
すぐに実行して、さらには形にしてくれる。
指導者として、これ以上の喜びはないだろう。
見事、監督のアドバイスに一発回答した龍君。
「監督に言われたことを意識して、それをただ守りながら打つだけです」
監督とは対照的に、ただ淡々と語っていたのが印象的だった。
何事にも動じず、ただひたすらバットを振る。
これが彼のスランプの乗り越え方である。
チームを引っ張る立場である以上、いちいち立ち止まってはいられないようだ。
口にした言葉通り、彼は今日も教えを守り、打席に入る。
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