2020年頃のエスペラント大会申込はこうなる?

(この内容はフィクションです。サイト名・団体名・イベント名・国名は架空のものです)

2020年春……。

「お、ローカルなエスペラント大会の案内が来てる」

 メールに添付された案内のパンフを確認する。

「場所は、隣県の緑中市か」
「日時は……土日の2日開催。この日はライブ無し。出るか」

 メールのリンクをクリックし、大会主催団体の「みどりエスペラント会」のウェブサイトを開く。「緑中市で初めての地方エスペラント大会……」から始まる紹介文を読み飛ばし、場所やプログラムの説明を読んで、申込フォームを開く。

「ええっと、名前とローマ字の名前を記入して」
「昼食はあり、っと」
「参加費は『一般』で申込が3月、昼食はありだから……合計5,000円か」
フォームを埋めていく。

「少ないけど1,000円だけ寄付するか。……っておや?」
 今まで寄付は参加費と一緒に振り込めばよかったが、今回は手続きが違うようである。説明を読む。

「大会への寄付はクラウドファンディングサイトfavor4からお願いします」

 なぜ寄付の方法を変えたのだろうか?
 フォームの入力内容を再度確認、送信。続いてリンクをクリックしfavor4のサイトを開く。

クラウドファンディングで寄付

「古民家を改修して、外国人旅行者のためのゲストハウスを作りたい!」
「地元の新種のゆずを商品化したい!」
「離島の患者を救うためドクターヘリを購入したい!」
「沖縄→アフリカに三線の音色を届けたい!」

 サイト上にはファンドの一覧が表示され、「集まっている金額 ○○,○○○円」と、ネット上でファンドに共感した人たちが寄付した金額が表示されている。

「で、エスペラント大会のクラウドファンディングはどこだ?」
 ページをスクロールしていく。
「これか」

アフリカの青年を日本での国際交流ベントに招待したい

 アフリカの青年が緑星旗の下で民族楽器?を演奏している写真とともにファンドの名前がある。

集まっている金額: 102,000

 寄付を郵便振込あるいは銀行振込などで集めた場合、主催者側がツイッターなどで途中経過を伝えないかぎり、どれだけ集まっているかはリアルタイムで分からない。
 しかしクラウドファンディングだと、リアルタイムで何円集まっているかがわかる。
 また、クラウドファンディングで募集することで、サイトを見た人たちからも協力を得られるかもしれない。

 詳細を開く。

 Saluton!(こんにちは) みどりエスペラント会の高松晴敏です。(主催者の顔写真が貼られている。)

 エスペラント大会は、エスペラントを話す人達(エスペランティスト)の国際交流イベントです。
 昨年はのどか市で開かれ、韓国・台湾・ベトナム・マレーシアから多数のエスペランティストにご参加いただきました!

 さて、エスペラントとは……
(中略)

 今年はわが緑中市の姉妹都市、中央アフリカのグンマー民主共和国ルウィンゴマから、現地の青年を招待したいと考えており、旅費の一部をfavor4で募集します。


 概要を読み終わった後、応援コメントをクリックする。ここには寄付者が投稿した応援コメントが一覧となって表示される。

・応援しています!
・日本とアフリカの交流が進みますように!

「応援がいっぱいだ。これは運営委員にとって励みになる」
 応援している人のアカウント名を確認すると、見覚えがあるエスペランティストのハンドルネームが多数見つかった。
 エスペランティストでない人の寄付の割合はどのくらいなのだろうか? コメントだけでは判断がつかない。一通り応援コメントを読んだところで、寄付に進むため支援コースを選ぶをクリックする。

・ 1,000円―・サイトに協力ありがとうお名前掲載
・ 3,000円―・サイトに協力ありがとうお名前掲載
         ・グンマーのポストカード
・ 10,000円―・サイトに協力ありがとうお名前掲載
                      ・グンマーのポストカード
                      ・グンマーのキーホルダー
・100,000円―・サイトに協力ありがとうお名前掲載
         ・グンマーのポストカード
          ・グンマーの手芸バッグ

「金額によって、お礼がグレードアップするのか。ポストカードが付く3,000円にしよう」
 3,000円のコースを選び、クレジットカードで決済する。これで手続きは終了。最後にツイッターアイコンをクリックし、寄付したことをつぶやく。

 ちなみに、クラウドファンディングについてエスペラント版ウィキペディアではamasfinancadoとして記事が作成されているので、amasfinancadoという単語を使ってエスペラントでもツイートする。

成功と失敗

(そして一ヶ月後)

「お、クラウドファンディングからメールが来てる」
 寝る前にメールチェックすると、ファンドの募集金額が目標金額に達したことを知らせるメールが届いていた。
 メールのリンクをクリックしファンドのサイトを開く。締切直前に達成率100%になったらしい。
 エスペラント大会主催者の代表のお礼メッセージが掲載されている。

 このファンドは「成功」として、サイトに記録が残った。
 今後、他のエスペラント大会での寄付でも、クラウドファンディングが広まることだろう。
 実績が積み重なれば、やがて「〇〇のエスペラント訳の本を出版したい!」のようなファンドも組成できるかもしれない。

 そういえば、あの時募集していた「古民家を改修して、外国人旅行者のためのゲストハウスを作りたい!」のファンドはどうなったのだろうか?
 海外のエスペランティストが来日した時に利用してもらえればいいかもしれない。

 古民家改修ファンドのページを開いた。残念ながら募集期間中に目標金額まで資金が集まらず失敗していた。
 資金集めに失敗したとき、その記録もサイトに残ってしまう。

 もしエスペラント関係のファンド募集失敗が続けば、どのような悪影響があるだろうか? あまり考えたくない。

 時計を確認するともう寝る時間だ。ブラウザを閉じ、少しでもファンド募集の成功確率を上げる方法がないかと考えながら布団を被る。

・集めた資金の使途はより明確にして
・目標金額はあまり欲張らない方がいいかも。
・支援者特典はエスペランティストでない人向けも用意して。
・外国のエスペランティストの人からの「寄付お願いします」メッセージを載せるのもいいかもしれない。
・それから……みんなからアイデアを……zzz。

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