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叱る、𠮟る、そして化と比

「しかる」という字は二つある。かたや「叱」、もう一方は「𠮟」。
よく見てみるとつくりが微妙に違う。
片方はカタカナの「ヒ」に近く、もう一方は漢字の「七」。

それぞれのつくりの読みについて、
カタカナの「ヒ」に近いほうは「カ」、「七」は「シツ」とのこと。
横棒が飛びだした「ヒ」を「カ」と読むのは、ばける「化」の字のつくりとおなじだから、のようだ。(それにしたって「化」のつくりの横棒は飛び出していない)

Wikipedia の「匕部」には篆書体では字形が違うふたつのつくり「匕」が、楷書体で同一にされたとある。
だから「匕」にはもうひとつ、「ヒ」という読みが存在する。(こちらはくらべる「比」の字に使われる)

  • つくり「七」──読みはシツ(切るを源字)。「𠮟」

  • つくり「匕」──読みはカ(人が転倒した形から)。「化」

  • つくり「匕」──読みはヒ(さじの形から)。「比」

“𠮟る” と “叱る” | 2014年 | ブログ | hydroculのメモ によると、「𠮟」(シツ)は常用漢字、「叱」(カ)は非・常用。
ディスプレイに表示される形は「叱」だけれども(※)、昔も今も常用漢字は「𠮟」で、これが印刷標準字形。
※というのは Shift-JIS の第一水準ではこの字形(グリフ)で、両字を抱き合わせたかららしい。

なお Windows の IME パレットでは「叱」が「デザイン差」と表示される。

しかしふたつはデザイン差ではなく別の──音も読みも、運ぶ意味も違う(はずの)──漢字。康煕字典でそれぞれ調べてみたいものである。

* * *

𠮟責、𠮟る、𠮟咤激励。
これらはいずれも𠮟(シツ)の字をつかうのが正しい。
ただし Shift-JIS では第三水準。そして Unicode のコードポイントとしてもかなり後方。(UTF-8 エンコードで4バイトを占める希少な日本語漢字)

ただしく「表示されない」環境が(まだどこかに)存在するかもしれないので、使用にあたってはご注意を。

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