フットボールの拡張とは

我々、東京都社会人サッカーリーグ4部に属している世田谷ユナイテッドは、
サッカーの勝ち負けにこだわるのではなく、フットボールを拡張することにこだわって歩みを進めている。

フットボールを拡張するとはそもそも何なのか、表現するためにはどうするべきなのか。というところから大きなテーマを持って活動している。

世田谷ユナイテッドのテーマ

2022年1月1日から稼働して、リーグ戦を4節戦ってきて、これはひとつフットボールを拡張しているな。と思ったことがある。
東京都社会人サッカーリーグ4部は、J1を頂点にしたピラミッドのなかで最下層のリーグ。もちろん東京都4部リーグには休みの日に仲間と集まって、楽しくサッカーに興じるクラブがボリュームとしてあって、稀に、上を目指す我々のようなクラブがいる。
おそらく平日に集まってチームとしてトレーニングをしているところはほぼないと思う。

僕らが試合会場に着くと、他の4部チームの試合がやっていることがあるので、観てみると、当然4部らしい試合が繰り広げられている。

年齢が高めの人が多かったり、明らかに体型的にフィットしていなかったり、トラップやパスすらうまくできていなかったり、前半で足を攣っていたり、そもそも試合開始時から11人がフィールドに立っていなかったり。
でもまぁ、それで全然いいと思うし、それぞれがそれぞれの目的でサッカーをエンジョイできているのは素晴らしいと思う。ドイツ10部とか12部とかはもっと酷いし、毎回審判が3人いるだけでも素晴らしい環境だと思う(ドイツだと主審ひとりとか全然ある笑)

4部リーグって良くも悪くもそんなもんだから、世田谷ユナイテッドなんて常に圧勝じゃん!余裕でしょ!つまらないでしょ!とよく言われるけど、じゃあ、実際に試合をすると楽勝で、圧勝しているのか?というとそんなことは全くない。

これは僕も正直驚いている。
試合前に観た他の試合(4部ってこうだよね)とは想像できないくらい、我々と対戦する相手は意外とやってくるのである。

意外とやってくる。という感覚は、多分チームみんなが感じていると思うし、外部のひとが思っているより、全集中して、いい声かけをして、本気で、モチベーションを上げて毎試合望んでいる。

事実、0-0で引き分けた試合もあるし、前半は苦戦した試合もある。(というかどの試合も楽なものはなかった)
では何故、戦力的にはかけ離れているであろうチームどうしでもそう簡単にはいかないのか。を考えてみたらひとつの仮説に辿り着いた。

「サッカーは相手がいて、初めて成立するもの」

当たり前に思えるかもしれないが、この不変がそうしている気がする。
世田谷ユナイテッドと対戦するチームのインサイトはおそらく、世田谷強いよね、ボールめちゃ繋ぐよね、動けるよね、Live配信あるかもね、もし勝っちゃったら気持ちがいいだろうね。と考えて試合を迎えているだろう。
最大のリスペクトを持ってピッチに立ってくれている。

要は、相手チームには格上に一泡吹かせてやるという共通認識が生まれる。
そうするとやることはシンプルになり、みんなでワークハードして、絶対に失点しないで、どこかでひっかけてショートカウンターで得点をもぎ取る。
プランとして0-1での勝利、もしくは0-0で引き分け。を特に打ち合わせをすることなく、チーム全員(出ている人、ベンチの人、応援している人)の認識が擦り合わせられる。

サッカーは攻撃することより何十倍、何百倍も守備をすることのほうが簡単なスポーツ。
いつもだったらちょっとおしゃれにドリブルをしちゃったり、FWはめんどくさかったら守備をサボっているだろうというときも、余計なことはせず、全力で守備に集中することができる。
ブロックを敷いて、ゴールを固めて、守備にフォーカスされて受けて立たれると、いくら力の差があってもそう簡単にゴールを奪うことはできないというのは、先日の日本vsブラジルの試合をみても分かると思う。

世田谷ユナイテッドの対戦相手は、攻撃を排除することで、役割が明確になることで、普段より力を発揮することができ、動きが良くなっているのではないだろうか。
もしかしたら俺たちってやれるよね。世田谷相手にも善戦できたじゃん!と自信になったかもしれない。
ここで、最初のフットボールを拡張するとはなんなのか。というところに繋がってくる。

世田谷ユナイテッドはフットボールスタイルを貫くことで、東京都4部リーグの相手チームも拡張しているのではないかと。

ただ勝つだけなら今シーズンはそんなに難しいことではないかもしれない。
ただ敢えて、これからもフットボールを拡張することにこだわって活動していくことに意義があるのではと思う。

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