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Ep.6 Tenerife #2

前日にいろいろあったおかげで昨晩はぐっすりと眠れた。
旅のトラブルの疲労感は日常生活のものとは質が違う。そのせいで深い眠りにつけた。
まだうとうとしているミライを横目にベッドから抜け出してカーテンを開けると一日の始まりを告げる柔らかな光が部屋に差し込む。

時刻は7:00。

前日にスーパーで買ったバケットとターキーハム、そしてバナナを詰め込んで出発だ。

夜だと気付けなかったが街は壁のようにそびえる山のすぐ側にあった
水平線の向こうから1日が始まる
街が目を覚ます頃

Teide

スペイン最高峰はどこにあるかご存知だろうか。
フランスとの国境のピレネーに?いや、違う。
アストリアス地方?残念!

正解はこのスペイン領カナリア諸島、テネリフェ島にあるテイデ山だ。
標高3715mのテイデ山は活火山であり、最後に噴火を確認したのは1909年。実は大西洋の島の中でも標高はテイデ山が最も高く、そしてテネリフェ島自体が世界第3位の火山島なのだ。
そして今日の午前中はこのテイデ山の山頂を目指す。

宿泊していたLa Orotavaから一気に山道を駆け上る。
1時間程後だろうか。平坦な道に出たと思うと広大な岩石砂漠が広がっていた。La Orotavaの南国情緒溢れる街からは想像できないような、また別の国に来たかのような感覚だった。

車を登山口まで1kmほどの場所に停める。空気はカラッとしていて街の空気とは全く性質が違った。太陽も高度を上げ、じりじりと温められた大地からの熱気がくるぶしに伝わる。11月のはずなのに、8月のような日差しだった。
少し歩ける簡単な周回ルートがあったので歩いてみる。一歩踏み出すとサクッサクッと砂を踏みしめる音が砂漠に響く。
真っ青な色をした空と太陽の光で白く輝く砂。そして遠くに鎮座する巨大な岩たち。今まで自分が訪れたことない、見たこともない景色で、自然の奥深さを感じる。

原始の地球を見ているような光景
遠くに人が歩いているのがわかる

駐車場には見晴台があった。僕とミライはそこで、買ってきたパンとハムでサンドイッチを即席で作って食べた。

バイクで駆け抜けたくなる景色
朝のサンドイッチ

登山へ…そして撤退

食事を済ますと登山口まで駐車場から道路を歩いて移動する。ほとんどの観光客は僕らが車を停めた駐車場の先にあるロープウェイで上を目指す。テイデ山の山頂は植生保護の対象となっており、1日に山頂に立ち入ることが可能な人数は決まっている。そのため予約している者しかピークを踏むことは許されない。なので今回は頂上付近のロープウェイの終点を目指す。

序盤は順調だった。何も問題なかった。緑は全く無いが、そんな景色を横目にひたすら砂利道を登っていく。最初は海が見えたりして景色も楽しめたが、それ以上変わることはなく、次第に飽きてしまった。
それにしても、持ってきた水分が少なすぎた。往路は2時間程の山行の予定だったが、じりじりと照りつける太陽の余りの暑さに水を必要以上に飲んでしまった。
頂上付近のロープウェイ乗り場まであともうひと踏ん張りの地点だったろうか。体の異変を少し感じる。汗が全くでないし、体がだるい。
おそらく水分不足による軽い熱中症だろう。登りながら色々葛藤したが、後の予定への悪影響を最小限に抑えたかったし、"もしも"があるのが登山なので、下山することにした。ミライには本当に申し訳なかった。
あんなに暑い中登ってきたのにどんどん遠のいていく山頂。「しかたない。しかたない。」と心で唱えながら気持ちを切り替えようとしながら来た道を下って行った。
この文章を書いている今でも、心のどこかであの時もう少し頑張りたかった自分が、下山を決めた自分にブーイングを送っているのがわかる。

下山後のジェラートはおいしかった。
今日は美しい星空が見れそうだ。
つづく。


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