中井久夫先生のささやかな思い出 8

 中井久夫先生の名前を知ったのは大学生になってから。友人の勧め。その友人は内科医になり、やがて弁護士として活躍するようになった。ちなみに国会議員とは別人である。 
その彼は、学生実習、いわゆるポリクリで、ある自己免疫疾患を持つ患者さんの経過を、中井先生が寛解過程論で示された図のように、発現した症状順に図示して、カルテ用紙を横に4、5枚つなぎ合わせた臨床経過図を作った。

それは学生ならではと思われたのか、新潟だからだからか、学生指導にあたる医師はかみ合わず、絢爛な経過図にはあんまりピンと来ていないようであった。

あとにもさきにも『中井式の経過図』を論文でなく臨床実習とはいえ現場でみたのはそれきりである。
中井先生の本は著作集が図書館にあったので読み耽り、卒業後はかつておられた東大分院神経科に行くことを決めた。
行ってみたら。安永浩先生、内海健先生の勢いがある。その一方で神戸で絵画療法を学ばれた穏やかな方がいらして嬉しかった。

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