主任試験の論文試験を勉強するに当たって、意識しておくべきこと

主任試験が3週間後に迫り、勉強頑張っている方も多いと思います。
しかし、やみくもに論文を書き続けていないでしょうか。
一度冷静に自分の立ち位置を振り返り、合格に向けて戦略を立て直すことをお勧めしたいと思います。
公表されているので、言われてみれば当たり前だと思うかもしれませんが、意外と頭から抜けているであろうことを中心に書いていきたいと思います。
少々長いですが、お付き合いいただければ幸いです。

まず言っておきたいのは、論文試験は「平等な試験ではない」ということを認識していますか?ということです。
この「平等な試験ではない」という言葉を聞いて、「そりゃ一人の採点者が全員を採点するわけじゃないんだから、当然だよな」と思う方がいるかもしれませんが、そういうことではありません。
ここで言いたいのは、ほとんどの人が同じ会場に集まって、同じ論文に向き合っているということから誤解をしやすいのですが、「論文試験日には各自のスタート位置が異なっていて、ゴール(=合格)までもうすぐの人と、まだまだ距離がある人がいる」という事実です。
例えるなら、論文試験の日は、競馬なら「第4コーナーを回って残すは直線」とかマラソンなら「40キロ地点を過ぎてラストスパート」というシチュエーションなわけです。
公然の事実ですが、主任試験の合格判定は論文の評価に加えて、勤務評定、すなわち日々の業績評価が加味されます。過去何年分加味されるのかは明らかにされていませんが、少なくとも1年は確実ですし、もしかすると2年、3年分加味されている可能性があります。
つまり、第4コーナーとか40キロ地点というのはこれまで積み重ねてきた業績評価・勤務評定のことです。
今度の論文試験は主任試験レースにおける、こうした長い積み重ねの最後の仕上げであるということですね。

主任試験レースにおける最大の目標は当然のことながら「合格」すなわち、全体の上位3割以内でゴールすることだと思います。
ここまで書くと大体何を言いたいかわかってくるかと思います。先に「第4コーナーを回って残すは直線」とかマラソンなら「40キロ地点を過ぎてラストスパート」と書きましたが、これはあくまで自分とゴールの関係であって、自分はまだ第4コーナー、40キロ地点かもしれませんが、「前にも後ろにも多くの受験生がいて、その位置取り次第で最後の戦略が決まる。」ということが今回最も言いたいことです。

この位置取りについてですが、私は大まかに分けて、4つのグループがあると思っています。
第1グループは先頭集団で「このままいければ順当にゴールできる人たち」。つまり、現時点で先頭集団にいるので、無理してラストスパートしてまさかの息切れを起こしたり、全力ダッシュをしたことによって足がもつれて転んで、後続に抜かれるということは絶対に避けたい集団です。
第2グループは「当落線上にいる人たち」で、現時点で上位3割あたりに付けている人たちです。
今のままいけばギリギリ合格できる可能性があるが、後ろからは最後に追い上げてくる直線勝負に強い人たち(=論文が上手な人たち)が絶対にいます。一方で、先頭集団からも落ちてくる人たちが確実に何人かはいますので、そういう人たちは確実に抜きたい、つまり、前にも後ろにも気を付けないといけない位置にいる人たちです。
第3グループは、「第2グループが見えているけど、このままでは上位3割に入れない人たち」です。
現時点で後れをとっており、このままのペースでは上位3割に入れず不合格になってしまいます。何としてもここからラストスパートをかけて、上位3割に食い込む、すなわち、トップクラスに近い論文評価をとることが必須な人たちです。
第4グループは、「第3グループにも差をつけられていて、もはやスパートしても間に合わない人たち」です。論文と勤評の配分が明かされていない以上、論文で1位の評価をとればどんな勤評でも合格できる可能性もあるのですが、私は総合評価はもちろん、個別評価でもC評価が混ざるような職員は主任にするにはまだ早いと思っている人間なので、こうした第4グループが存在する可能性もあるとしておきたいと思います。
(厳しいことを言うようですが、第4グループの人たちはレースに出る以前の問題です。仕事ができなくても昇任できるような甘い世界ではないので、まずは論文試験の前に日々の業務をミスなく素早く遂行して、まずは並の評価をもらえるように努力しましょう。)

以上のように、仮に第4グループがなかったとしても、第1~3グループのどこにいるのかによって、「当たり障りのない無難な論文」でもよいのか、「他の人の論文と比較してキラリと光るものを感じさせなければならない論文」や「キラリどころかまぶしすぎるくらいキラキラしている素晴らしい100点満点に近い論文」を書かなければならないのかどうかが決まってくるということを自覚して論文の勉強をしていますか?ということを投げかけたいと思います。

大体の方は局から配られる合格者論文を参考に、同じような論文を書けるように上司などに添削をしてもらっているかと思います。第1グループの人たちはそれで良いですが、第2グループ、第3グループの人たちはそれでは危険です。
おそらく論文を添削してくれる管理職のほとんどが、「良い論文かどうか」の設定ラインを無意識に「論文だけで判断した場合に上位3割に該当するかどうか」に置いていると思います。これは別に悪意があるわけではなくて、受験生の勤務評定がわからない以上、論文だけで決めなければならないので、当然のことです。むしろ気を付けなければならないのは添削をしてもらう側です。
もうお分かりだと思いますが、特に第3グループのようなトップクラスの論文を書かなければならない人たちにとって、以上のような管理職の基準で「良し」をもらっても、合格に届かない可能性が高く、添削をお願いする際は「非常に良い論文かどうか」という基準で見てもらわなければならないということです。

この時期まで来ると新しく添削してもらうより、自分自身の中で解決策のストックを増やすなどしているかも知れませんが、今一度「自分は全受験者の中でどのあたりの位置取りで論文試験の日を迎えていて、どのレベルの論文を書く必要があるのか」を振り返ってみることをお勧めします。

以下、蛇足ですが、今回この記事を書いた背景を述べます。
よく主任試験における質問、相談を受けるのですが、主任試験は論文と勤評の合算で合否判定を行うということが公開されているにも関わらず、それを意識しないで漫然と論文の勉強をしている人がほとんどであると感じたからです。
入都試験や主任試験択一のときには、足切りラインを意識して、憲法や行政法など出題分野別に自分の得意不得意を考慮しながら得点計画を立てて、戦略的に突破してきた人たちが論文試験になると、途端に行き当たりばったりの無計画で試験日に突入するというのが非常に多いと思います。

これは無論、自分の勤務評定がわからなかったり、論文の評価がわかりにくかったりということが原因かと思います。
しかし、私も自分の最終的な業績評価・勤務評定がわかるわけではないですし、論文と勤評の配分もわかりませんが、公表されている資料から推測したり、周囲の様子から見てなんとなく仮説を立てることは可能なわけです。
私自身、主任試験受験時にこんなことを考えていたわけではないですが、もし昔に戻れるのであれば、きちんと毎年業績評価の開示を申請して、立ち位置の確認と、上司から自分の仕事ぶりについてゆっくり助言をもらう機会を設けておけばよかったと思っています。
ちなみに前にも書きましたが、昇給は1号分は課内での相対評価になるので、課の人数が少ない部署や、周囲の職員の能力がいまいちな課での5号昇給は実際の業績評価は並である可能性もあります。こうしたことからもやはり業績評価の開示が大事だと思います。

このようなことに嫌悪感を示す方もいるかもしれませんが、現状を把握・分析したうえで、それを前提に自分にとっての最適解を導き出すということはまさに「主任試験に受かる」という課題に対して論文を作成しているようなものであり、論文を書くための論理的思考力の訓練にもなると思います。
色々とプレッシャーなどかかってくるかと思いますが、みなさんの主任試験合格をお祈りしています。
頑張ってください。