酒の席で”天文学者”に出会ったら

僕はふだん、大学で宇宙についてあれこれ研究するお仕事をしております。いわゆる”天文学者”と呼ばれる職業です。この仕事についてもっとも厄介なのが、

「職業の質問を、居酒屋で隣の席のお客さんに聞かれる」

というシチュエーションです。自分の仕事を伝えると、相手のリアクションはいつも次のどちらかです。「すごい、格好いいですね!」のような驚き顔の反応か、「あ、あぁ…難しそうですね。」のような困り顔の反応か。どちらの反応も慣れっこなので、嫌だったりは全くしないですが、全くいい答えが浮かばない。なぜ楽しい酒の席で、こんな聞かれやすい質問で、いつも困らないといけないのか。

ただ珍しい返事がかえってくることもたまにあります。
居酒屋で隣の席だった、弁護士のオジさんから仕事を聞かれたとき。いつものように「宇宙とか星の研究をしてます」と答えると、自然な顔で

『あれだよね、太陽って寿命の最期は白色矮星になるんでしょう?』

と、返されました。あぁー、この人は知識の使い方と人への踏み込み方が巧いなぁーと、鮮明に覚えています。こんな酒の席の記憶をたまに思い出しては、寝れない夜に「居酒屋で隣の席のお客さんに仕事を聞かれたとき」の質ベストアンサーを考えてみたりするのです。

もしアナタが酒の席で宇宙の研究者に会ったときはぜひ『太陽って寿命の最期は白色矮星になるんでしょう?』と言ってみてください。きっと喜ぶと思います。

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