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ダウ90000第6回演劇公演「旅館じゃないんだからさ」の感想

感想記事なんていつ書いても自己満足に過ぎないので、たぶん多くの人には読むに堪えない駄文です。それでも公演を観て、今日のうちに文字に残したかった気持ちを「感想」と呼んで書いています。

ダウ90000を初めて知った日

僕が初めてダウ90000を知ったのは、2011年の7月。
当時、すでに社会人だった大学の同期がなぜか、深夜に僕の家に遊びに来た日のこと。『ダウ90000ってのがいま業界で話題らしい』という、どこからともない噂をたよりに、YouTubeでダウ90000を検索し、深夜1時に同期とふたりでスマホを囲んで覗いて観たのを覚えています。

今日の公演の表向きの感想

今日観た「旅館じゃないんだからさ」は再演公演になります。
元々は3年前、ダウ90000を知ったその直後に行われていた公演で、配信ながら初めて「ダウ90000を観た」作品でした。
メモを振り返ると、3年前のちょうど同じ日に観ていたみたいで、「本当にそんな経ったんだ」と妙にその月日に現実味を感じたり。

物語は、斜陽となったレンタルビデオ屋が舞台。
3年前初めてみたときは、あまりの面白さに、配信終了日まで誇張なしに毎日配信を見返しました。なので今回、物語は大体覚えているどころか、細かい台詞まですべて記憶に残っていました。だからこそ、あの時のフレーズや大好きだったやり取りはそのまま、3年の間に変化したレンタルビデオ店との距離感が丁寧に手直しされていて、それもまた流石でした。

僕がこの公演の好きな理由

僕がこの公演が大好きで、正直今更書く感想なんてないです。だからこそ、今日残そうと決心した「感想」は、どうしてこの公演が好きなのかに向き合うために書き始めました。そしてその答えは、

きっと、園田さんが演じる主人公「片山」が、自分のことを描かれているみたいだったから。

です。というのも僕は、初めてダウを観た記憶にしても、当時の家の家具の配置やその同期とスマホを覗いていた「外側」の風景や思い出が大切だと思っていて。みんなそうかも知れないけれど、この作品で「片山」がDVDと取る距離感、台詞が僕はすごく共感させられるんですよね。
そして物語が進むほどに、「片山」の発言のひとつひとつ、怪異(に見える)言動が、物語では笑いのタネになっている部分すら含めて、「そう、片山ならきっとそう思ってるよね、その言葉を選ぶよね」というものの連続で、段々笑いよりも首をタテに振る時間が長くなっていて。
ダメ押しのようにラスト、「片山」が自分の中の大切で綺麗に閉じ込めた思い出を【テラリウム】と表現したとき、物語を飛び越えて「ああ僕のなかのあの思い出ってテラリウムだったんだ」って、僕よりも僕自身の心情を明瞭な輪郭で表現されたことに、心を撃ち抜かれました。

これを読んでる誰かは「いやいや、あの台詞あの演出は、貴方にかぎらないよくある心情描写で、」なんて言うかもしれません。けどそれを恥ずかしいと思わないくらい、僕はあの描写がすべてで、本当に好きになりました。

作品への野暮な感想

そもそも、それを言い出したら、この物語に登場する人物はすべて”本当”すぎるんですよ。笑いのタネになっている元カップルの会話あるある、女子の会話あるある、どれも単にあるあるなんて見過ごしちゃ駄目で「自分がいつ見た・誰がしていた仕草か思い出せない」のに、「たぶん視野の片隅でみた覚えがあって、あるあるだと”思えている”」なんていうとんでもない日常と人間に対する観察眼の賜物のあるあるが、ベストなタイミングで差し込まれている。雑多にエチュードさせて生まれる”自然さ”なんて陳腐な人工物だと気づかされるほど、観る側・観客の感想を意図的に用意しながら”本当らしさ”を演出した台本で。そこに加えての「花の名前教えて消え去ってやろうかな」 「やめろよ。咲くたびに思い出すじゃん」。この台詞をお笑いに差込む感覚、清々しいまでのサブカルチャーを匂わせて最高じゃないですか。

「別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。」

(川端康成【掌の小説】)

最後に

かつてダウ90000の感想を書いたときに、

『この人たちに関わると面白いものが生まれそう』と思わされる、羨ましい雰囲気がいま漂っています。
そして『叶うなら、この人たちの創る世界に少しでも関わりたい』と思いながらも、きっとそんな機会は今後ないまま、応援しつづけると思います。

ダウ90000本公演「ずっと正月」の感想

なんて書き残しました。あれから3年、僕がダウ90000を大好きになる原点の作品にあらためて触れて、悔しい気持ちが込み上げてきました。羨ましすぎるんですよ、この8人は。可能性に溢れすぎている。
『この人たちの創る世界に少しでも関わりたいと思いながら、機会ないまま指をくわえ続ける』なんて悔しすぎる。なんとかして、並び立ってみたい。そう思わされました。

ただ、僕は自分の職業に誇りはありますが、あいにく演劇やお笑いとは縁遠く、自分の生活の延長線上にこの人たちとの交差点はきっと期待できません。だからといって、ファンとしてただ会いたいというだけなら、会ったところで向こうになんのメリットも理由もない。

なのでいつの日か、ダウ90000に会ってみたいと思ってもらえるように、目の前の自分の毎日を頑張ろうと思いました。ああ、変な感想。


僕の感想はどうでもいいです。配信があるかわかりませんが、もし配信があって、興味があれば、ぜひご覧になってください。グッズのサコッシュ欲しかったな。

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