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新型コロナウイルスに感染してみて

はじめに

 こんにちは、にょんです。世界中で蔓延している新型コロナウイルス(ウイルスの名前は"SARS-CoV2")による感染症("COVID-19"は感染症の名前)が猛威を振るっています。やばい地域に関しては第三次の緊急事態宣言も発令されるということで、登場から1年以上たった今も克服する兆しは見えていません。
 さて、僕は4月中旬に新型コロナウイルス(以下、単に「コロナ」といいます)に実際にかかってしまいました。現在は「保健所からの規定に基づき」自宅隔離が解禁になっており、学校にも行っていいことになっています、まだ行かんけど。だってまだ咳とかあるし、他にも症状は結構残っているので。これについては後の方で解説します。

かいじょでええの

 具体的なことは後述するとしますが、実際にかかってみて今まで自分がちゃんと分かっていないことが多かったことに気付きました。まして知っている人で陽性だったという人はまだいなかったし、僕の友人たちに関しても同じような状況の人が多いと思っています。つまり「実感がない」という人は意外に多いと思うんです。そもそも自分が感染していたということを公表するかどうかも含めて結構悩んだのですが(だっていじめられたら泣いちゃうもん)、知ってもらうきっかけになるならと思い、情報発信のため記事をポチポチと書いてみます。例えばPCR検査とか今でこそみんな聞いたことあると思いますが、結局何をやっているか生物選択だった人じゃないと知らないと思う(一応生物選択なら高校で習うぐらい有名な操作なんですけど)ので、それもかいつまんで解説出来たらなと思っています。
 なお、ここに書く情報は科学的根拠に基づく(つまり"エビデンスがある"って言われている)ものになるように注意したいと思います。出来るだけわかりやすく説明するために自分の言葉で置き換えるつもりですが。

コロナに感染するまで

 ご存じの方も多いと思いますが、僕は大阪在住で、そこから京都にある大学に通っています。つまり毎日のように県を跨ぐ移動をしているわけですね。大学院生が、まして実験しないと何も始まらない理系の研究者がラボに通わないとどうすることもできない訳だし、仕方のないことかなぁとは思っています。ここが学部生と大学院生の違いになりますね。

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 さて、僕がPCR検査で陽性だと判明したのは4/13(火)なのですが、そこまでの動向をまとめたいと思います。
 去年とか今年の3月の中旬ぐらいまではちょくちょく遊びに行ってはいたんですけど、4月に入ってからは基本的に自宅↔学校の往復がメインで(1度予定があったついでに奈良公園に遊びに行きましたが)、顔を合わせていたのは主にラボのメンバーになります。サークルとか参加してなくて本当に良かった、めっちゃ迷惑かかってたし……。4/8(木)にいつものように学校でフラスコを振り振りしていたのですが、そこで父親が発熱したという連絡を受けました。その後なぜかすぐに抗体検査をして(僕は抗原検査をしたものだと勘違い)結果は陰性、しかも体調もすぐに回復したということで、コロナではなさそうと判断してしまったんですね。つまり何かしらの風邪だと判断したんですが、僕は個人的に課していたミッションがあって4月末までに今やっているプロジェクトの結果を出しておきたかったので風邪を移されて休むわけにはいかないと思い、友人Aの下宿にしばらくの間泊めてもらうことにしました(サークルの人ではないです)。
 次の日4/9(金)に僕は治験のアルバイトに行って、内容は言えないですがとあるワクチンを接種しました。臨床試験ってやつですね。健康な人に打った後に、なにか副作用等が出ないかモニターするというものです。さらに次の日の4/10(土)に倦怠感と発熱が出ました。37.6℃ぐらいだったと思っております。しかしすぐに熱は下がり、4/11(日)はとても元気だったため、学校と相談した結果、治験による副作用だと結論付けて、次の日4/12(月)は登校することになりました。一方で実家の母親は日曜には発熱があったようで、"父からの風邪が移っただけだと思う"が心配なので翌日4/12(月)にPCR検査を受けに行くことにしたらしいです。
 4/12(月)帰宅後、もう一度発熱しました。次の日4/13(火)の朝、母から連絡があり、母が陽性だったと伝えられました。焦りましたね。泣きそうになりました。母親がコロナ陽性ですよ。50歳を超えると重症率が高くなる、みたいなことをニュースで聞いていましたし、もしものことがあったらとか考えてくると目の前が真っ白になりました。
 僕はそこから、色んなところに電話を掛けました。まず、ラボの先生に電話をしました。確実に僕は濃厚接触者にあたるわけです、同居の家族ですからね。学校はすぐに対策していただいたみたいで、まずラボのメンバー全員が濃厚接触者に認定される可能性があるため、いったん閉鎖されることになりました。学部生向けの授業や実習もいったん中止になりました。陽性であっても陰性であっても、保健所から学校に伝わることになり僕の行動歴も調査される可能性もあるので、サークルの運営の後輩たちに伝えたのもこの日です(お手数かけてごめんね)。
 その後、保健所からの連絡を待たずに、PCR検査を受けに行くことになりました。この段取りは自治体によって違いますが、大阪市に関しては、濃厚接触者だと判明した人に対して保健所から連絡があり、その後自宅待機"要請"とPCR検査の受診を勧められる(強制はできないらしい)ことになっています。ただご存じの通り、大阪は現在日本で一番陽性者が確認されている地域になっているので、それがいつになるか分からない訳です。どうせ濃厚接触者になるし、こんなの待ってられないと思ったので、保健所と連携してPCR検査を行っている「由緒正しい」病院を探して電話で相談し(絶対に窓口に直接行ったらダメ)そこで検査を受診することになりました(病院は検体を採取するだけで実際にPCRをかけるのは他の機関)。

ながれ

  翌日の4/13(火)PCRを受けた病院から連絡があり、陽性だと伝えられました(その後自宅に迎えに来てもらって帰っています)。

僕の症状について

 コロナにかかるとどんな症状があるか、知っていますか?新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主な症状とは~初期症状と感染を疑った場合の対処方法、回復後も続く後遺症について解説~によると、

初期症状としては、鼻水や咳、発熱、軽い喉の痛み、筋肉痛や体のだるさ(倦怠感)など、風邪のような症状が挙げられます。特に、37.5℃程度の発熱と強い体のだるさを訴える人が多いという特徴がありますが、発熱の症状がなく、体のだるさなどの症状だけが現れる方もいます。また、“においが分からない”“味が分からない”など、嗅覚・味覚障害が起きる人もいることが分かっており、これらの症状は女性や子どもに生じやすいというデータもあります。そのほか、人によっては鼻づまりや鼻水、頭痛、痰や血痰、下痢などが生じることもあります

 特に、発熱および咳・咽頭痛・息切れ・全身倦怠感・下痢が観察の重要な症状だとされていて、保健所からの経過観察で発熱と、この5症状は毎日聞かれます。では、僕の症状についてです。

・4/13(火)・・・PCR検査を受けて結果待ちの日ですが、この時点で発熱はなく、高くても微熱ぐらいに治まっていました。咳は出てましたが、この後も発熱することはありませんでした。しかしこの日、世界からにおいが消えました。しかも急に。ショックでしたね。この怖さは経験したことがない人には分かり兼ねないと思います。人間の五感の内の1つがなくなるんです。30ぐらいあってその内の1つ、とかならまだしも。ご存じの通り、嗅覚障害とセットで味覚障害も発症することが知られていますが、そうなった場合5分の2が無くなるんです(結果的には味覚はおそらく完璧に残ったままでした)。特に僕の場合は、"匂いがしにくい"とかではなく完全に欠如した「嗅覚脱失」という状態で、点鼻薬を使って鼻が通っている時、どれだけ洗い立てのタオルを鼻に擦り付けても、熱々の湯気が立っている食べ物に鼻を突っ込む勢いで近づけても、まるで最初から香りなんていう概念がなかったかのように匂いがないんです。嗅覚異常に気付いた直後ぐらいは、トイレのスプレータイプの消臭力みたいなやつを顔面に吹きかけて「あ、これやったら匂いがする~」とか言ってたんですが、次の日の朝には完全に無くなってました。体重は73.2kg。

・4/14(水)・・・陽性と判明した日です。嗅覚脱失を認めていたので「でしょうね」という感じでした。本当に食べても何も楽しくない。味覚はあるけど、何食べてるか分からないんです、香りって大切なんですね。ひどい倦怠感に襲われてそもそも食欲もなかったのですが、栄養は付けないといけないのでウィーダーインゼリーの安いバージョンみたいなやつを飲んでおきました。幸いにも隣のマンションに親戚がいて、買い出しに行ってくれていたので食料に困ることはなかったのですが、せっかく作ってもらった味噌汁を飲む気にもなれず、申し訳ないという罪悪感にかられながら過ごしていました。そして、鼻詰まりがひどい。普段から鼻は悪いんですけど、それにしてもひどいんです。点鼻薬を差しすぎたら良くないと分かってはいますが、手を離せなかったです。もう一つ特徴的な症状があって、頭痛というか眼痛というか、プールで鼻に水が入ってしまったときのあの痛みがずっと続いているというのも辛かったです。体重は測っていない。

・4/15(木)・・・本来なら対面で行う予定だったラボのセミナー(ミーティングみたいなやつ)にオンラインで出席。現状を報告しました。また陽性の連絡を受けて1日経って保健所から事情を聴く電話がありました。特に感染力が高いと言われる発症2日前からの行動歴を聞かれ、誰が濃厚接触者に当たるかについての判断をしてもらうことになりました。結果、ラボのメンバーについては濃厚接触認定を受けず、泊まっていた友人Aだけが該当しました。ラボのメンバーについてはマスクを外してみんなで食事をしたりはしなかったことと、共通で使う器具もクリーンベンチ(無菌操作用の箱みたいなやつ)でアルコール消毒をしていたことが判断の材料になったようです(今の所体調が悪い人が出てきていなくて安心しています)。症状としては変わらず、この先4/17ぐらいまでは波はあるものの続きました。ご飯は味のないスープと、カロリーメイトを食べました。ちなみに父親ももう一度PCR検査を受けました。体重は71.1kg。

・4/17(土)・・・気持ち、他の症状は快方に向かいました。咳があまり出ず調子が良かったので、この日しかない!と思い、頼まれていたお手本動画用の音源を撮ったりしました。体温が35.8℃で、全然発熱していないのも快方の証だと捉えていました。しかし、嗅覚だけは全く治らず、その日のお昼に食べたレトルトのカレーは、黒いだけで本当に何かわからない液体でした。体重は70.6kg。

・4/18(日)・・・朝体温を測ると、34.6℃。34℃台!?絶対、体温計壊れてる!って思いましたが他の家族の体温はちゃんと高くて37℃台ですし(ちゃんと高いっておかしい表現ですけど)、何回測っても、誤差が±0.4℃ぐらいなんですよね。調べてみても低体温症という症状が報告されているとは見つけられず、何でもかんでもコロナのせいだって断言はできませんが、少なくとも免疫の低下、代謝の悪化が起こっていそうなことは分かりました。そういや、ちゃんとお風呂上りスキンケアしているはずなのに、ニキビができた気がします、ぴえん。買ってきてもらった大起水産のお寿司を食べましたが、ウナギかイカかイクラかそれ以外、ってぐらいにネタが分かりませんでした。体重は70.6kgで変わらず。

・4/20(火)・・・保健所から連絡があり、「発症日から10日が経過し、かつ発熱が見られなくなってから72時間以上経過する」ので、明日から自宅療養が解除されることになりました。後で詳しく説明しようと思いますが、この状況では、他の人に移すリスクが限りなく0であるという状態なので外出が出来るということでした。つまり、「隔離解禁=コロナ完治」では決してないということです。こうした二次感染(=他人にコロナを移すこと)を止めさえすれば、とりあえず保健所の手を離れるということになります。体重は70.6kgでまだまだ変わらず。

 現在4/24(土)でも、咳は出続けてますし、香りはこの世に戻ってきていません。食欲もずっとない状態が10日以上続いています。お昼に、ちょっと珍しくお腹すいてるかもと思い調子乗ってお弁当の大盛を頼んだ日があるんですけど、誇張抜きに2、3口で食べれなくなってご飯を残すことの罪悪感から泣きそうになりながら無理やりお口に詰めました。胃が縮んだんですかね。現在体重が69.3kg。3回生の時ぶりぐらいの60キロ台です。笑った。間違えてもコロナダイエットを推奨しているとかではなく、僕の場合、精神的につらい症状をもたらされた結果こうなったっていう感じだってことを理解しておいてください。恐らくまだCOVID-19患者なので、少なくとも今月いっぱいは療養します。

PCR検査って

 PCRって何か知らない方も多いと思います。今PCRとググったらコロナ関連の検索結果ばかりでしたが、そもそもこれは、生物をやっている人にはとてもなじみのある操作で、選択していたら高校生物でも習います。実際に大学院で生物学を専攻している僕も研究で日常的にPCRを使いまくってます。もちろんコロナの研究者ではないです。そういえばコロナにかかる前にPCRした結果を解析する前に自宅療養になってしまっているから復帰したら電気泳動して確かめないといけないなぁ(分かる人には分かる)。話がそれてしまいましたが、PCRは他にもHIVの発見や、ある種のDNA鑑定にも使われている、広く一般的な手法なのです。
 PCR(Polymerase Chain Reaction)法は一言で言えば、「特定のDNA領域を増やす手法」のこと。更に語弊を恐れずに簡単に言えば、DNAの一部を増やすという操作のことです。この説明の前にDNAの話を超簡単にしておきます。本当にかいつまんで。
 遺伝子の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)には塩基と呼ばれる物質が付いていて、それには4種類(A,T,G,C)あります。そしてこのA,T,G,Cの4パターンの並び方(配列)でDNAが決まるってことです。例えば、(そんなんないけど)にょん遺伝子っていうのがあって、その配列が

ATGAGTACGTGTGGACTC……AATACACAACTTAG

みたいにDNAの種類ごとに決まっているということです。長さもピンキリで、1000文字ぐらいのやつもあれば、10000文字ぐらいのやつももっと長いやつもあります。

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 さて僕はこのDNAをいっぱい欲しいとします。このように文字の並び(=塩基配列)が分かっている場合、ここからここまでを増やしてくれと指定して(知ってる人のために言うと、プライマーを設計して)、売ってるとある試薬と増やしたいDNAを混ぜ混ぜして、20万ぐらいするPCR装置に入れて温度をコントロールしてやると2時間後ぐらいに何億倍(もしくはそれ以上)に増えてきます。ネズミ算的に2倍、4倍、8倍、16倍、……と増えていくので効果的に欲しいDNAを増やせます。

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 さてPCR法は、単純に「特定のDNAがいっぱい欲しい!」っていう場合以外にも活用方法があります。それは「このDNAって本当に存在してるの?」って時です。上で説明したPCRの方法と比較して、リアルタイムPCR(RT-PCR)とかqPCRとか言ったりするんですけど(知っている人のために言っておくとコロニーPCR、通称コロピーもこれ )、例えば遺伝子組み換え植物を作ってその中に自分が作ったDNAがどれだけ存在するかというのを検出するためにPCR法を活用したりします。なんとな~く想像してもらえたら嬉しいんですけど、特定の配列を持つDNAがどれだけ存在しているかなんて目では見れないし、植物に対してDNAはめちゃくちゃ少ないのでそのまま調べるのは至難の業です(というか無理だと思います)。でもめちゃくちゃ量があったら意外と分かるもので、もしPCRをしてその遺伝子が増えてきたら(それっぽく言うと、DNAが増幅してきたら)そのDNAがちゃんと植物の中にあるということだし、逆に存在しなかったらいくらPCRをしてもそのDNAが増えては来ないことになります。どのタイミングでどれだけ増えてきたかを観察すれば、もともとどれだけのDNAがあるかというのも推定できます。
 コロナのPCRはこれです。鼻の粘膜から検体を採って、そこにコロナウイルスが存在するかどうか、コロナの遺伝子があるかなんて、かなり目がいい人でも分かりません。マサイ族でも分かりません。(コロナの場合はDNAの代わりにRNAを持っているタイプのウイルスなのですが、PCRの原理的には同じだと考えてもらって大丈夫です。)コロナに含まれるRNA(DNAのお友達)の配列は分かっているので、その一部を増やすことのできるPCR検査をすることで、そのウイルスのRNAが増えてきたらその検体の持ち主はコロナに感染してそうだと分かるし(=陽性)、増えてこなかったら感染していないと推定できるわけです(=陰性)。
 このタイプのPCRも当たり前のようにやるので、僕のように試薬さえ送ってくれればやろうと思えば検査できる人は結構います。僕も大腸菌からDNAをPCR検査して「陽性だ、やった~」とかやってますし。ただ、仮にもウイルスの一部を増やしていることになるので勝手にやっちゃダメなんです。
 しかしながら、結構PCRは失敗します。1個でもDNAがあれば何億にもなって帰ってくるという意味では感度が悪いという訳ではありません。マジで理由はいろいろあるし、ほとんどがなんで失敗したのか分からないですけど、ひどい時には14種類PCRして成功したのが3種類。次の日同じ条件でやったら、9割以上成功、とかしょっちゅうあります。上の方で、僕が最近PCRして解析する前に自宅待機になったって言ってますけど、それも一回失敗したやつのやり直しです。増えてきたと思ってもう少し調べてみたら、全然違うのが増えてたりってことも偶にあります。
 ではコロナのPCRについてはどうか、という話ですが、理由はたぶん専門家も分からないと思いますが、偽陰性(つまり感染しているのに陰性と出る)になることも少なくなさそうだということです。銚子市医師会がまとめた記事、新型コロナウイルス感染症の概要によると、205人のCOVID-19患者の色んな所から検体をとってPCRしたところ、肺胞洗浄法という肺から検体を採る方法では93%でちゃんと陽性と出たのに対し、インフルエンザの検査でもするような鼻の粘膜からの検体では63%(僕がやったのはこれ)、咽頭からの検体では32%しか陽性と出ないというデータが出ています。結構出ないものなのですね。また、自分で唾液をとって民間のPCR検査に頼む場合の結果の扱われ方についてなどもまとめられているので、是非見てみるといいと思います。これは僕の意見なのでそういう可能性があると思って聞いてもらえればいいですが、自分のPCRの経験上、サンプルの保存の質やPCR反応液中のイオンなどの組成も大切で、実際にPCRするときの試薬にMgとか入れたりしますし、素人が何も知らず検体を採る直前にミネラルウォーター飲んで色んなものが混じった唾液を採るとか、入れ物の蓋を触るとか、そういう条件でPCRかけてもエラーが出やすい気がします。
 実際僕と濃厚接触と認定された友人Aも僕が濃厚接触者であり陽性である可能性が高かったことから、僕の次の日にPCR検査したのですが、そこでは陰性という結果が出ました。しかしその後も体調が回復せず、数日後もう一度別の検体でPCRをしたところ陽性と出ました。死ぬほど申し訳ないです。PCRは感度が高い方法ではありますが、潜伏期間ではウイルスの局在があることや、反応条件次第で(もしかしたら本人の体調なんかでも)結果がぶれることが多いことが分かります。つまり、体調が悪かったら陰性って出ようが保健所の指示通り自宅待機することが大切だと思います。

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他にも抗体検査抗原検査っていうのも聞きますよね。"抗体検査で陽性・陰性が出る"っていうのだけ聞いて、熱出たからとりあえず抗体検査(キットはネットでも売っている)しとこうっていう人もいますね。うちがそうでしたから。んで、それでコロナじゃない可能性があると思って、勘違いにつながった訳です。
 分かりやすくまとめている国⽴感染症研究所 感染病理部 鈴⽊忠樹さんがまとめているCOVID-19の抗原・抗体検査についてを参考にしてほしいのですが、抗原検査は、コロナウイルスが持つNucleocapsidというタンパク質の有無を検出する方法(他にもコロナのトゲトゲ部分のスパイクタンパク質の有無を調べるパターンもあるらしい)で、その人の中にコロナウイルスが存在するか(≒感染しているか)を判断する材料として行われる検査です。インフルエンザの検査もこれで、インフルエンザの検査にわざわざPCRしていないです。あるかないか調べるだけの定性的な検出もできるし、存在量を推定できる定量的な方法もあります。時間がかかるPCRと比較して、抗原検査は30分ぐらいで結果は出ますが、感度は低い傾向にあるようで(コロナに関しては。インフルの正確性については調べてないので知りません)、やはり偽陰性の可能性を考慮に入れておく必要があります。
 一方で抗体検査は感染して回復した後にも体に残っている、ウイルスに対する抗体(語弊を恐れずに言えば獲得免疫になるタンパク質)の有無を検出する方法で、抗体検査が陽性だったとなれば、体内にアンチコロナウイルスの抗体がある、つまり過去に感染していたということが推定できるという検査になります。次のセクションで、"一度感染した陽性者はコロナウイルスのキャリアになりにくい"という話をしますが、そうした意味からもこの検査をすることに一定の意義はあるのですが、やはり感度がめちゃくちゃいい訳ではないし、抗体が検出できるようになるのは発症後2週間ぐらいたった後と言われている(Nandini S, et al. Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2)し、そもそも今感染しているかという判断材料にはならないので、キットが簡単に手に入る今、何を調べているのかを知っていないと安心はできません。

保健所の規定の根拠

 発症日から10日が経過し、かつ発熱が見られなくなってから72時間以上経過するというやつです。明日から自宅療養解禁です、と言われたとき、「え、こんなんが外出てもいいの?」って思いました。感染力が低いと言われても、それがどれほどのものかシンプルに知りませんでした。そしてこの無知が、コロナ差別やそういうのにつながっていると思うので調べたものをまとめておきます。

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 国立感染症研究所感染症疫学センターによる発症からの感染可能期間と再陽性症例における感染性・二次感染リスクに関するエビデンスのまとめによると、軽症、中等症患者において、2つ例外はあるが発症後10日以降では感染性のある(人に移る、二次感染)コロナウイルスが検出されなかったとあります。つまり、コロナウイルスには悪さをするしないに関わらず、"人に移る期間"と"人には移らない期間"があり、それはたいていの場合、発症後10日を目安に推移しきるということです。ただずっと発熱がある等、重症化している場合は同様ではないので、その可能性を考慮して「発熱が見られなくなってから72時間」という規定も設けられていると考えらます。それに関するメカニズムがあるわけではなさそうであくまで統計的な結果に基づくものではあるが、感染能が無くなる特性があるということは本人も周りも安心するという意味では知っておいてもいい事実だなと思いました。

 さらに面白いことに、一度コロナにかかった人が再び感染する再陽性例では、その人がキャリアになって他の人に移した(二次感染した)という例が国内外ともにないというのも驚きです。参考文献内の"ウイルス培養が陰性"というのは、培養しても増えない=他の人の体内に入っても増殖しない=感染しないと解釈しています。

 しかしあくまで、この規定は「他人に移す心配がないから外に出していい」という基準であり、コロナが完治したという訳ではないです。ので、今PCRをしても陽性である可能性は高い(原理的には不活性なコロナウイルスでも陽性にはなりうる)ですし、自分の体調と相談して、10日という数字に縛られず(もちろん10日以前は良くないが)周りも安心できるタイミングでゆっくり復帰出来たらなと思っています。僕は何を言われてもお家でまだまだゆっくりするつもりですが、職場などで、保健所が外出できるって言っているから会社からの命令で体調がまだ悪いけど出勤を余儀なくされ、体調も優れないし周りから白い目で見られるし、精神的にも肉体的にもやられてしまう、みたいな悲しいことが起こっていると思うので、こういう報告がされていることは皆が知っておいた方がいいなと思いました。

 ただしこれは従来型に限った話で、変異型ではどうなのかは分からないとのことです。

大阪の状況

 大阪のコロナに対する諸々が逼迫しているというのはご存じの通りだと思います。今回の療養を通してそれを実感できたので、これについてもレポートします。

 重症患者用の病棟がパンクしているというのはその通りなのですが、それ以前に保健所の電話対応もパンクしている印象を受けました。よく考えたら1日1000人以上新規感染者がいる訳で、新しい感染者に一回15分ぐらいかかる濃厚接触者や本人の健康状態等の面談をする必要があるのに加え、自宅療養者に対しての毎日の経過観察の電話も掛ける必要があります。僕が陽性だと診断されたのと、恐らく僕が移してしまった友人Aが陽性だと診断された約一週間のギャップのなかでも逼迫度が変わっていて、僕の場合PCR→陽性報告の電話が1日、陽性報告→保健所からの事情聴取がさらに1日だったわけですが、Aの場合、PCR→陽性報告で2日半、陽性報告→保健所からの連絡は今現在で3日目ですが未だに連絡がないみたいです。一般的に保健所からの連絡があって、濃厚接触などの事情を聴き→学校や職場への対策を保健所が指示する / 本人の症状が軽症か重症か、もしくは自宅療養かホテル、病院での療養かを判断するのですが、この電話対応がない間は患者はほったらかしということになります。その間に重症化している人も多く、かといって重症化しても受け入れてくれる病院がないという状態です。現状、医療現場ももちろんですが、その前の保健所の対応が律速になっている可能性もあるかもしれません。

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 何が言いたいかというと、このタイミングで絶対にかからない方が良かったということです。多くないタイミングだったら安心してかかっていい、っていうのはもちろん違いますが、特にこの状況下でコロナにかからないように細心の注意を払うべきだと思いました。かかった僕が言っても説得力なさそうですが、反面教師としてここは我慢が必要だと思いました。

さいごに伝えたいこと

 めっちゃ長くなりました、ここまで読んでくれていた方は本当にありがとうございました。サークルなら運営のみんな、ラボのメンバー以外には誰にも言わなかったので、結構孤独との戦いでした。ひまアピールしていたのもその為です。今回の療養でいろいろ調べて新たに知ったことや再認識したことも多く、そもそも近くに陽性者がいなかったので、自分が感染するか周りがかかるかしない限りはニュースでの情報程度にしか知らなかったことでしょう。

 まず、マスクや手洗い、アルコール消毒には有意に二次感染を防ぐ効果があるということを再認識しました。あったりまえですけど、毎日のように顔を合わせていたラボのメンバーに今の所感染者が出ていないというのは、マスク、アルコールの効果が大いにあると考えてもいいんじゃないかと思いました。

 また、コロナは誰にでもかかりうるということ。僕は去年とか何回か旅行に行ったり、今年に入っても基本的に2人だけではあったものの(緊急事態中は避けてましたが)ご飯に行ったりはしばしばしていましたが、そこで感染したのではなく、なんでこのタイミングで?みたいなときにコロナにかかった訳です。自己弁護以外の何物でもないのですが、対策していてもかかるときはかかるものなのかなと思っています(対策していなければめっちゃかかりやすいと思います)。

 最後に、コロナはただの風邪理論はめちゃくちゃナンセンスだということです。僕は軽症で済みましたが五感の1つが未だ行方不明です。友達のAは死ぬほどつらい思いをしています。両親や友達が重症化して病院がなくそのまま最悪の事態に陥る、みたいな想像をして鬱になります。もしかしたら僕はこれを読んでいるみんなから白い目を向けられているかもしれません。これのどこがただの風邪なんでしょうかね?

 コロナのやばさと、逆に陽性になって回復した人に対して安心していいところの両面を知って、withコロナの時代、というかコロナ克服のために乗り切っていきたいと思います。また、自分の感想の部分以外について、根拠のないことや間違ったことは極力ないようにはしていますが、何か疑問に思ったことがあれば信頼できるようなサイトやレポート、論文等を調べてみると正しくコロナに身構えることが出来ると思います。

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