エッセイを読んで感じたこと

これまでの23年間の人生の中で、マンガ以外の読書にほとんど時間を費やしたことのない私に、最近ちょっとした読書ブームの波が押し寄せてきた。さざなみ程度の弱々しい波ではあるが。

きっかけは同棲しているパートナーで、彼女にとって読書は生活に欠かせない習慣のように思える。

暇さえあれば本を手に取って...というほどではないが、小説や短編集など沢山の本を読んでいる。

そんな彼女には、小学生の頃からの非常に付き合いの長い友人(Nさん)がいるのだが、Nさんとオススメの本を貸し借りして、ああでもない、こうでもないと感想を語り合ったりするのも楽しみの一つのようだ。

そして、「この本がとても面白いからリョウくんも暇なときに読んでみて!」と私にもオススメしてくれる。

いくつか紹介してくれるオススメの本たちにも、あまり惹かれない本や、興味をそそられる本など色々ある。

その中で私が最初に興味を示して手に取ったのが、絶賛Nさんからレンタル中だという、『女ふたり、暮らしています』という韓国の女性二人によるエッセイだった。

二人の出会いや日常生活の中で繰り広げられる些細な出来事を、それぞれ全く異なる感性を持つ二人が独自の視点で面白おかしく文章化している。

最初は、毎日寝る前に数ページ読む程度で、時間をかけてゆっくり読もうと思っていたが、読み始めたらまんまとハマってしまい、1週間ほどで読み終えてしまった。

余談だが、私は普段ドラマも滅多に見ない。

少し期間が空いてしまううちに前回どこまでストーリーが進んだか曖昧になってしまう感じが苦手だ。

それと同様に小説なども久しぶりに読む時に、しおりを挟んだページの少し前から読む、あの思い出し作業が苦手なのだ。

その点、エッセイというのは基本的に一話完結のような構成になっているので思い出し作業を必要としない。

本はあまり得意ではない、と読まず嫌いをしていた私にとって、エッセイというのは一つの解決策のようだった。

前置きが長くなったが、このようにして、さざなみ読書ブームが私という海岸に達した。

他にも本を読んでみようと思った私は、初めてマンガと仕事に関連するもの以外の本を目当てに書店に向かった。

なんとか賞受賞作品とか、衝撃のデビューとか、色々あってよくわからないが、次に手に取る作品があまり私に響かず、早々に読書ブームが去ってしまうのは少し残念な気もする。

なので、エッセイを読んで面白いと思ったんだからまずはエッセイを自分で買ってみよう、と思いエッセイのコーナーへ。

著名人のエッセイが山のように積んである一角の中から私が手に取ったのは『どうやら僕の日常生活は間違っている』という、お笑い芸人ハライチ岩井勇気の2作目となるエッセイ。

以前の記事でもラジオの話をしたが、私はラジオを頻繁に聴いていて、お笑い芸人による深夜ラジオも大好きなのだが、毎週欠かさず聴いている番組の一つがTBSラジオから毎週木曜24〜25時で放送されている「ハライチのターン!」である。

ハライチの二人が繰り広げるフリートークは非常に面白くて、車での移動中に聴くことがほとんどなので、人目を気にせず大笑いできる。

エッセイという入口から本に興味を示し始めた私にとって、毎週聴いているラジオ番組のパーソナリティでもある大好きな芸人のエッセイは正に求めていた一冊だった。

周りのエッセイには目もくれず、その一冊を手に取りレジに直行した。

買った瞬間は久々にワクワクを感じた、無論「早く読みたい!!」のワクワクだ。

書店から真っ直ぐ家に戻り、まずは「はじめに」の部分を読んだ。

うん、面白そう!

岩井勇気というひねくれ者が、日々の何気ない暮らしの中で感じたコンプレックスやモヤモヤを、ネチっこく文章にしていく、そういうエピソードがこれから沢山出てくるぞという感じがした。

面白そうだから続けて一つ目のエピソードも読んでみようと思いページをめくった。

一つ目のエピソードは、ダイエットを決意した岩井が、1ヶ月ほどして徐々に成果が現れてきた頃に友人に飲みに誘われる事からプチ災厄に見舞われる、というもの。

この話は、過去のラジオでも話していたから知っていて、懐かしく感じながら読んだ。

その後、半月ほどかけてエッセイを読み切ったのだが...

結論から言うと、面白かったが物足りなかった。

というのも、ほぼ全てのエピソードをラジオでも話していたから、読む前から何となく知っている話ばかりだったのだ。

もちろん、エピソードを知ってはいるものの、芸人さんだからちゃんとオチもあって何度読んでも面白い。

それに、ラジオという音声で繰り広げられるエピソードと、文章で書かれたエピソードは、表現の仕方が異なるので違った良さがある。

だが、作者が感じたこと、思ったことを自由に書き記すエッセイというジャンルにおいて、その話の概要を既に知っているというのは、ある意味致命的だ。

誤解を招くことがないように書いておくが、私は岩井勇気のエッセイにあるエピソードを事前にほとんど知っていたから物足りなく感じただけで、一冊のエッセイとしてはめちゃくちゃ面白い。

現時点の私にオススメの一冊を聞かれたら間違いなくこの本を推す。

それだけはハッキリと記しておく。

『女ふたり、暮らしています』を読んで、エッセイはエピソードと文章表現を楽しむものだと感じた私は、次の一冊に『どうやら僕の日常生活は間違っている』を選んだものの、読む前にほぼ全てのエピソードを知っていたので、岩井勇気という作者の文章表現に注目するほかなかった。

エッセイを読んで感じたこと、それは、

エッセイは、あまり詳しく知らない人の作品を読んだ方が面白い。

ということ。

もし、エッセイを読んでみようかなと思っている人があなたの周りにいたら、手始めに私のこのエッセイを読ませてあげてほしい。

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