論文紹介:A framework for neurophysiological experiments on flow states(Durcan, O., Holland, P. & Bhattacharya, 2024)

読んだ文献

Durcan, O., Holland, P. & Bhattacharya, J. A framework for neurophysiological experiments on flow states. Commun Psychol 2, 66 (2024).

要約

この論文は、「フロー状態」の神経生理学的実験におけるフレームワークを提案しています。
従来の「課題スキルバランス」パラダイムに加えて、活動自律性フレームワークを提案し、フローを誘発するための複数のテスト可能な仮説を提示しています。さらに、神経生理学的フロー研究におけるベストプラクティスを網羅した24項目のチェックリストを提出し、一貫性のあるフロー状態を捉えるために、神経生理学的研究における統一的なアプローチを提唱しています。
論文では、フロー研究における実験活動の範囲が限られていること、活動の自律性特性の重要性、参加者のスキルや動機付けの重要性、フロー状態を誘発するための適切な手順と分析手法などについて議論しています。神経生理学的フロー研究の質と信頼性を向上させるために、より厳密で体系的な研究方法を採用するよう促しています。

特に関心を持った箇所

We argue that the sufficient requirements forflow to emergemight not be met in contemporary neurophysiological flow experiments. This dis-crepancymight account for the inconsistent experimental outcomes, raising the questions: Are flow states being induced properly in these experiments? Or are different states being measured, erroneously assumed to represent flow? To encourage a wider variety of experimental activities in neuro-physiological flow studies, we present a testable activity-autonomy frame-work.
---
フローが現れるための十分な要件は、現代の神経生理学的なフロー実験では満たされていない可能性があると我々は主張する。この相違が、一貫性のない実験結果を説明し、次の疑問を引き起こす可能性がある。これらの実験ではフロー状態が適切に誘発されているのか?あるいは、フローではない別の状態が測定され、それが誤ってフローとみなされているのだろうか?神経生理学的なフロー研究におけるより多様な実験活動を奨励するために、検証可能な活動自律性の枠組みを提示する。

To our knowledge, no neurophysiological flow studies have yet explicitly manipulated strategy, goals, or feedback, though some have included features that may inspire future research designs. For example, Wolf et al.67 asked participants to imagine table-tennis shot responses based on video stimuli in their electroencephalography (EEG) study—a paradigm that, if compared to actual play, might offer insights into challenges stem-ming from feedback manipulations.
---
我々の知る限り、神経生理学的なフロー研究では、戦略、目標、またはフィードバックを明確に操作したものはまだないが、いくつかの研究では、今後の研究デザインにインスピレーションを与える可能性のある特徴が含まれている。例えば、Wolf ら67 は、脳波(EEG)研究において、ビデオ刺激に基づいて卓球のショットの反応を想像するよう参加者に求めた。このパラダイムは、実際のプレイと比較すれば、フィードバック操作に起因する課題についての洞察が得られる可能性がある。

The emergence of flow depends on individuals possessing the necessary skills to achieve a balance between challenge and skill, as well as having self-efficacy and intrinsic motivation to engage in the activity or situation2. However, these prerequisites are sometimes overlooked in neurophysiological flow studies. In some studies, participants had no pre-established relationships with the task, either inadvertently77 or intentionally by design28,69,78. Typically, participants are instructed by researchers to engage in activities rather than initiating the activities themselves. This formal instruction may diminish intrinsic motivation51,79,80, introduce demand characteristics, and make partici-pant engagement extrinsically motivated25,81,82.
---
フローの出現は、課題とスキルとのバランスを達成するために必要なスキルを個人が有していること、およびその活動や状況に取り組むための自己効力感と内発的動機づけを有していることに依存する2。しかし、神経生理学的なフロー研究では、これらの前提条件が見落とされることがある。一部の研究では、参加者は意図的に、あるいは意図せずに、課題と事前に確立された関係を持たないようにしていた77。通常、参加者は自ら活動を開始するのではなく、研究者の指示に従って活動を行う。このような形式的な指示は、内発的動機を低下させ51,79,80、需要特性を導入し、参加者の活動が外発的に動機づけられるようになる可能性がある25,81,82。

自分にとっての学び

フロー状態の研究として、神経生理学からのアプローチがあることを知りました。フロー状態の研究は、心理学の研究が主流だったように思いますが、今後、神経生理学からのアプローチも増えていきそうです。
フロー状態という概念を多面的に理解する上で、多様なアプローチを採用することは重要に思います。今まで神経生理学については、まったく学んでこなかったので、まずは入門書から読み始めてみたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?