第三者委員会の発表と告発についての私見

こんにちは。
連休前の4/28に「選挙人名簿等流出に係る第三者委員会」より調査報告書の発表、並びに記者会見、その後町長による記者会見がありました。
各報道で皆様もご存知の通りですが、参加した人間として感想などを書いていければと思います。
また、こちらを読む際には是非合わせて調査委員会の出しております報告書もお読みいただければと思います。
記者会見の中、第三者委は度々「町民の方にわかりやすい表現を心がけた」とおっしゃられておりました。

新しい事実、予想だにしなかった事実

第三者委の報告でその場の誰もが驚いた新しい事実として大きく二つのことがあります。
1.選挙人名簿に各人の投票状況が記載されていた
2.法的評価で「職権濫用による選挙の自由妨害罪、買収罪」が認められた
まずこの記事では1.について詳しく書いていきます。

投票状況とは

そもそも投票状況とはなんなのか、というところですが報告書のP.45に見本があります。
投票に行かれたことがある方ならご存知かと思いますが、投票所に行くとまず受付で自宅に届いた入場券を渡します。
その際に受付の方が名簿と入場券を照合し、「投票に来た」と名簿側に赤線を引くのですが、今回流出したものはこの赤線が引かれているのに加え、期日前投票をされた方は照合欄に「期」と印字されており、名簿の中で県知事選挙に行った方、行かなかった方がわかる状態となっていました。

対して、P.46の見本が投票状況がない、閲覧をすることが出来る台帳の見本となります。

松本町長を擁護される方の中には、この名簿は手続きを閲覧すれば見ることができるものだから、問題はコピーという手段を使っただけである、と唱える方がいました。
しかし、おそらくそう言われる方達も投票状況の記載は知らなかったと思いますし、知っていればそういった擁護は出来なかったはずです。

報告書の中には「基本4情報」という言葉が頻出します。
これは「氏名、生年月日、性別、住所」を指します。
私はこれ自体が個人情報であると思いますし、何よりその流出元が自治体であるというのは殊更問題だと感じていました。
また、それ以上に一緒に住基台帳を操作し情報を参照していたという話があり、まさかマイナンバーなどより重要度の高い情報が万が一にも漏洩していないかと危惧はしていました。
しかし、蓋を開けてみればマイナンバー等は問題がなくとも別角度で問題のある情報が流出していたことは驚くほかありません。

「投票状況」は秘密なのか

そもそも、投票状況を記した台帳というのは恐らくですが照合に使った後は利用することがありません。
選挙当日でお役御免、それ以降は閲覧されることはないはずですが、自治体には文書の種類によって段階的に最大30年の保存期間の定めがあります。
この名簿が何年の保存期間に該当するかはわかりませんが、そういった事情もあり、誰が見ることがないものでも書庫に保管されていたと想像できます。
一部実務に関わる方以外誰も見たことがないものですし、また、何処かで通常閲覧できる選挙人名簿と同一であるという錯覚が、自分含め関係者内にあったように思います。

ただ、読んでいる方の中には「投票状況ってそれほど大事なの」と疑問を持つ方もいるかも知れません。
第三者委の方は会見で記者の方にこう投げかけました。
「みなさんは自分が投票に行ったか行かないかを知られたいですか」
概ね知られたくない、というリアクションでした。

海外では選挙に行かなければ罰則があるところもあります。
ブラジルなんかは投票に行っていない人はパスポートも取れません。
日本ではそういった罰則こそありませんが、理由なく棄権することは良しとしない風潮は同じです。
普段お話をしている中で、「入れたい人間がいないから選挙には行かない」と仰る方もいますが、普通は何かの事情で選挙に行けなかった場合を含めそれが晒されることは秘密の暴露に他なりません。
候補者も有権者も距離が近い町の選挙なら尚更です。
この投票状況が表に出ることは、基本4情報とはまた別に極めて重大な漏洩と言えます。

また、会見の中で「選挙に行った、行っていないという情報は行った方のみに葉書を送るなどして、戦略上有利になり得る」と第三者委は述べていました。
私から言わせれば選挙に行っていない方を狙い撃ちにすればそこは丸々浮動票になるとも言えるわけで活用方法なんていくらでもあります。
これもまた職権濫用による選挙の自由妨害、買収罪を補強するように思えてなりません。

松本町長の言い分に対する強い違和感と怒り

まず、この投票状況が台帳に記載されていたことについて松本町長は「自らの頭から抜け落ち説明していなかった」としています。
仮に知っていて隠していたのならば、それは言わずもがな大きな問題です。
しかし、私はこれほど重大な事項が頭から抜け落ちるということの方が自治体の長としての能力不足を自白しているようなものと考えます。
松本町長は昨年12月の選挙戦において、この問題を速やかに解決できるのは自分自身であるとしてきましたが、事実を明るみに出すことなど、
今ここまでで積極的な姿勢は見られていません。

また、第三者委員会は「個人情報保護を軽んじるような組織的風土がある状況は確認できなかった」と認定し、関係者の遵法意識の甘さ、馴れ合いこそが問題としましたが、その後の会見で松本町長は「町の風土が私をこのように育てたのもある」と仰いました。
果たして、松本町長のいう「町の風土」は正確に何を指しているのか理解できませんが、概ね第三者委と同じフォーカスだとすれば、第三者委が役場の職員が問題ではないといっているのにも関わらず、この後に及んで町長は役場職員全体の問題としたい様に見えます。

これだけ小さな町ですから、役場職員の知り合いも多数おります。
この報告書の中でもありましたが、役場職員の充足率は75%です。
全員のことは分かりませんが、少なくとも私が知っている職員の方は皆、この状況になる前も後も、責任感を持って懸命にお仕事をされています。
にも関わらず、町長がニュースに載った際に苦情の電話を受け付けるのは職員の方です。

私は議員ですから、職員の方と馴れ合うつもりはありません。
苦しい状況で働いてるとはいえ、町民ためにというのがお互いの使命です。
そのために指摘、追求すべきことがあれば手は緩めません。
しかし、この町長の言い分のために普段懸命に働いてる人間の労力を増やし、
なおかつその姿勢に泥を塗るような言い分、いや仕打ちは
議員である前にそれぞれの職員の知人・友人としてあんまりだと極めて強い怒りを覚えています。
役場で働いている人の不利益になったら行けないのでお名前を出すことはできませんが、本当であればそれぞれがどんな思い、状況で今働いているか、一つ一つ教えてやりたい気持ちです。

そして、当たり前ですが最大の被害者は町の方です。
自分たちの個人情報が流出し、町政の停滞を目の当たりにしている。
何か新しい情報が出る度に真鶴町が不名誉な名前の出方をする。
そしてそんな状況は終わりが見えない。
だからこそ、松本町長は「自分が一番この問題を迅速に解決できる」と、
選挙演説で仕切りに仰っていたのではないでしょうか。
私は今の町長の姿勢は誰よりも町民、取分け昨年の選挙で松本町長を支持した方達を裏切っているように見えて他なりません。

民意はどこにあるのか

松本町長は5/9に自分自身を含めた関係者を刑事告発すると発表しました。
しかし、告発ですからスタートラインに立ったに過ぎません。
この問題がどのような幕引きを見せるかは分かりませんが、はっきりいって現状を見れば姿勢も能力も松本町長がこの町のトップに相応しいと私は思いません。
松本町長は仕切りに今回の問題を認め辞職し、再選したのだから再度の辞職は考えないとしています。

私は一つの疑問を呈します。
昨年の12月28日に臨時議会が招集され、松本町長が公約として掲げた「一年間無給で働く」ということに関して議案が出され、賛成少数で否決されました。
この議案については、町長側から今回の騒動で受けた町の被害額を算定し、その補填として一年分の給与を充てる目的の選挙公約の実現と主旨説明がありました。
その時私は議員ではなく、自宅で中継を見ていましたがここに違和感を覚えました。
再度選挙公報を見ても、ネット上にある当時の演説を見返しても、確かに一年間無給で働くとはあったものの補填を目的としているという言葉は確認できませんでした。
この問題の被害額というのは簡単に算出できるものではなく、そこについて同じく疑問に思った議員の方が追求を行なうなどして否決されましたが、
それ以前にもう一つ、補填という言葉が入れば公約と意味合いが大きく変わってきてはしまわないかということです。

例えるならば、交通事故の示談交渉を行う際、被害者側に正装をして菓子折りを持っていき、丁重な謝罪を行うなど誠意を見せた上で実際の金額どうこうの示談交渉に入るのが普通の流れです。
ここに照らし合わせた時、松本町長の一年間無給で働くという公約は示談交渉前の誠意を見せる部分のようなものだと思っていました。
それが補填などという言葉が出てくると、実際の示談交渉に入ったような印象を受けました。
いち有権者として選挙戦からここまでの流れを見ていて、町長本人にどこまでの意図があったか分かりませんが、まるで今後の自分の立場が有利になるような公約の意味合いに対する大きなすり替えがあったように感じました。

政治家についても公務員についても、いかに税収から給与をいただいているとはいえ、とにかく報酬・給与が安い方がいいとは全く思っていません。
財政状態に対して、仕事ぶりに対して適正な給与をもらうことこそが適正な人員の呼び水になるはずです。
ですから一年間無報酬なんてもってのほかですが、そういった誠意を示す候補者を民意が支持したなら賛成をせざるを得ません。
しかし、それが弁済、補填ということであれば全く話が変わります。
そもそもその補填という言葉、有権者の同意を得ているのですか。
細かい部分を突いているように映るかもしれませんが、私は根底の意味合いが変わる大きなすり替えだと思っています。
選挙で民意を得たとは言いますが、こういったことをはじめ、今の町長の姿勢、行動はたった5ヶ月前に千四百人余りの有権者が望んだ姿でしょうか。
私は俄かに信じ難いです。

また、個人的に強く憤怒していることがあります。
私の知り合いのおばあちゃんに町議選の際、こんな話をされました。
本当は投票をしてあげたいけど手が震えて名前が書けない。
役場の人が代筆してくれるけど町の選挙で誰を書いたか万が一にも漏れてしまったら大変だから投票には行けない。

ごめんね、ごめんねと仕切りに謝られました。
私が八票差で落選した後も、自分が投票できなかったからと前にもまして謝られました。
私自身、事情があるんだから気にしてないですし、役場の人も漏らしたりしないよ。
別の選挙の時は行ってみてね、というしかありません。
自分の票が減ったなんてことは考えませんでしたが、町政が身近すぎる故に選挙に行くことを諦めざるを得ないという状況は悲しいことだと思いました。
ただ、今回投票先は記載されていないものの、投票状況が載ったものが漏れてしまえばこのおばあちゃんが投票に行けない理由はある部分で真実となってしまいます。
こういう小さい町では選挙の秘匿性というのは他の市町と比較になりません。
今回の諸問題で嫌気がさして町政の情報を見ないようにしているとの声も半年弱でたくさん聞きました。
町の課題を解決するのに町政と町民の方の相互理解は不可欠です。
その中で、行政と町民の距離を遠ざけているのは本当のところ一体誰なのか。
前に進むためにはこの問題もなるべく早く解決するしかありませんがその流れをいまだに停滞させているのが誰なのか。
皆さんにはもう一度考えていただきたいです。

総括として私はどう思うか

まず、私はこの問題が発覚してからの再選挙後
「松本町長についてどう思うか」と聞かれた際に、一貫して
「民意によって選ばれたのだから評価はしているが今の姿勢は改めるべきだ」としてきました。
再度選挙になったとして、その税負担というのは大きなものです。
そのことがあるからこそ、態度を改めて欲しいと思い続けてきましたが
先日の会見を見る限り、どうも無理そうだと思わざるを得ません。

総務経済常任委員会・協議会が5/12(木)に開催されます

第三者委員会の調査を受けた常任委員会の会議を5/12に開催します。
こちらの委員会はYoutubeでも中継されます。
アーカイブで配信もされますので、ぜひお時間ある時にご覧いただき、
判断の材料としていただければ幸いです。
私自身もこの会議において、松本町長は姿勢を改めることができるのか、
それとも辞めるべき人であるのか、判断をしたいと思っています。


また会議など出席した上で、法的評価で「職権濫用による選挙の自由妨害罪、買収罪」が認められたという部分についても記事を投稿いたします。

お読みいただきありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?