機能的価値、情緒的価値とエシカル価値
機能的価値と情緒的価値
マーケティングでは、機能的価値と情緒的価値の双方を満たすことが重要であると、よく語られる。
これは、2000年代初頭までは、物質的豊かさを実現することが重要であったが、いざそれが実現されると、今度はデザインや顧客体験などの情緒的価値が差別化要因になったという文脈で説明される。
+エシカル価値
最近は、この機能的価値、情緒的価値に加えて、エシカルさに関する価値基準も顧客の購買意欲を高めるために重要になった。
エシカルさとは、リサイクル素材を使うなどのサステナビリティに配慮した製品であること、人権や環境汚染に留意して生産されたクリーンな製品であることなどを指す。
例えば、スイスのスニーカーメーカーであるOnは、クッション性のある機能性の高いランニングシューズであり、シンプルでソールに特徴のある外観はデザイン性が高い。
そして、このOnは更にサステナビリティを売りにしたプログラムを提供し、高い優位性を構築している。
OnにはCloudneoというサブスクリプションサービスがある。
このサブスクリプションは、100%リサイクル可能な生物由来原料から作られたランニングシューズをサブスクリプションで月額3,380円(執筆時点)で購入するものだ。
利用者はサブスクで届いたランニングシューズを使用し、日々ランニングを行う。
そして、ランニングシューズを履き潰した際は、Onに使用したシューズを返送し、また、新しいシューズを配送してもらうという仕組みである。
Onは返送されたシューズを再利用して、Cloudneoの生産に活用します。
Cloudneoはサブスクリプションの仕組みを活用することで、上手く自社製品の静脈を構築し、サステナビリティを実現しています。
Cloudneoの利用者は、新しいシューズをリクエスト後に、古いシューズを返送しないと追徴課金される仕組みになっており、リサイクルループが回る様に徹底されています。
この様なリサイクルループが回るのは、あくまでOnのシューズが機能的にもデザイン的に優れており、ユーザーがブランドや商品に愛着を感じている点が大きいと思います。
愛着を感じていない商品をわざわざサブスクリプションしたり、返送したりするユーザーは少ないからです。
そういった点から、このようなブランド価値が高い商品だからこそ、Onはリサイクルループを回して、サステナビリティを実現できていると見ることができます。
エシカル消費に関する留意事項
この事例から留意しなければならないのは、エシカルさが強みになるのは、あくまで機能的価値とデザインなどの情緒的価値が高いレベルで満たされている場合のみであるという点である。
機能性やデザイン性に劣る商品をエシカルであるというだけで、消費者が選ぶことはない。
消費者のサステナビリティへの意識は高まっているとはいえ、機能性やデザイン性を犠牲にしてまで重要視されるほどの購買要因とはなり得ていない。
あくまで、機能性とデザイン性を高いレベルで満たした上での、更なる競争の為の差別化ポイントとなりえるという事である。
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