事業開発におけるチームビルディング
チームビルディングをする際に、自分が意識している視点をまとめました。
初めて、チームビルディングを意識したのは、新卒入社のDeNA時代の3年目くらいです。
その時、会社の中で1番売上の大きなプロダクト(ゲーム)の責任者(Product Owner)になりました。
それまで2~3人のマネジメント経験はありましたが、大きなチームを率いた事はありませんでした。
プロダクトがコケると会社の業績にも大きく影響するため、安定的で強いチームを作る、チームビルディングの重要性を強く感じました。
最終的には、チームビルディングに関しては、以下のフレームを意識して、チームの運営を行っていました。
これは、周りの先輩に教わった内容、本を読んで学んだ内容、チームを観察して思いついた内容を含めて、整理したものです。
チームをベクトル的に考える
このProduct Owner時代を通して、チームビルディングに関して、少し抽象的ですが以下の様に感じていました。
・チームというのは、一つの生命(有機体的なネットワーク)みたいなものである
・生物であるからには、特定の方向への動的なエネルギーを持っており、それを「適切な(ミッションに沿う)方向に向ける」ことと、「その方向への運動の速度を上げる」ことが重要
これらをシンプルに考え、以下の様に考える様になりました。
チームのエネルギーをベクトルと捉え、その方向性とスカラー量を変数として調整する事がチームビルディング
方向性を整える
方向性を整える、というのはチームの感情をマネジメントすることに近しいと感じています。
人間の行動や意思決定の中で、理知的に判断している部分というのは少なく、感情がその大きなウェイトを占めます。
良いチームというのは、皆が同じ方向性を向いており、その目標や日々の行動に前向きな感情を持っています。
NorthStar/存在意義/なぜ、やるのか、を定義する
まず、チームとして、何を目指すのかをいう事を言語化します。
NorthStar、Purpose、MVVと言われる類のものです。
これは、有名なサイモン・シネックの「Whyから始めよ」という事と同じであり、「なぜ、それをするのか」、自分たちの存在を定義するものです。
この言語化に関しては、自分たちが普段、会話の中で使っている単語を参考に作って行くのが良いと思います。
自分たちの腹にしっくり来るから、頻出し、共通言語化しているのだと思います。
「作る」というよりは、「見出す」、「既にあるものに形を与える」というスタンスです。
制約を作る
この目指すところの言語化には、チームの意思統一以外にもメリットがあります。
自分たちの存在意義を定義することで、逆にやらない事が明確になります。
やらない事を明確にすることで、無駄な思考(脳の計算処理)や行動を減らすことができます。
また、自分たちの存在意義が制約となることで、検討スコープが明確化され、アイデアも出やすくなります。
アイディエーションでよく言われる、制約が良質なアイデアを生む、ということです。
ストレッチした目標
基本的には、ストレッチした目標を掲げる事は良い事だと思います。
私自身も、高い目標を皆の前で設定することに気後れしたことがあります。
こんな事言って、馬鹿だと思われるのではないかとか、達成できなかったら格好悪いんじゃないか等。
でも、実際は、チームメンバーは、そのようなリーダーを頼もしいと思うものだと思います。
リーダーの目標(目線、視座)以上に、チームは大きくならないものです。
創造性を高める
また、創造性を高めるという意味でも、ストレッチした目標は有効です。
創造性というのが、目標と現実とのギャップが生み出すものだからです。
必要性は想像の母である、というやつです。
感情マネジメント
チームの日々の職場での感情を整えるのも、リーダーの役割かと思います。
・仕事に前向きに取り組んでいるのか?、やりがいを見失っているのか?
・リラックスして仕事を楽しめているのか?、外部起因のストレスを感じているのか?
などを、しっかりモニタリングしていきます。
メンバーが出社している場合は、夕方などにぼーっとチームメンバーの様子を眺めると、なんとなく、各メンバーの感情が感じ取れる様になってきます。
仕事にあまりポジティブな感情を抱いていない人は、たとえ優秀でも、チームにネガティブな感情を与えてしまうので、早めに対処します。
特に、自尊感情(仕事への自信)が下がると、その人のパフォーマンスも連動して下がるので、その様なメンバーが居たら早めに対処します。
具体的には、個別で1on1をするなどして、抑圧を生んでいる要因を解消していきます。
また、感情のマネジメントには、座席配置、ランチや食事会での交流など、業務外の雑談をどのように発生させるかがポイントとなることも多いと感じます。
業務の話しかしないチームは脆弱です。ピーター・ティールもこの点について、Zero to Oneの中で触れています。
実力を上げる
優秀な人材の獲得
強いチームを作るためには、優秀な人材が不可欠です。
もちろん、チームに入った後の育成で底上げはできるものの、最初から能力の高いメンバーに参画してもらった方が効率は良いです。
スタートアップであれば、採用は最注力アジェンダの一つだと思います。
これは大きな会社内でのプロジェクトでも、同様に注力すべきです。
社内でプレゼンスを高め、注目を集めたり、異動が可能なメンバーを見つけ、交渉するなどで、必要な人材を集める努力が必要です。
もちろん、社内の場合は、他部署との関係性や見え方を考慮した上で動く必要がありますが。
育成
1on1
育成に関しては、コーチングの手法を活用した1on1が有効です。
「コーチングの手法を活用する」とは、具体的に以下の様なイメージです。
メンバーの将来の目標や、やりたい事を聞き出す
その目標に対して、現在値はどのような状況なのかを聞く
(ここで、本人の自己認識がズレている場合は、客観的なフィードバックを行う)次に、目標と現在地との間のギャップには何があるかを可視化する
可視化するギャップを埋める為に、今、このチームでやるべきこと(アジェンダ)を明確にする
最後に、明確化したアジェンダの中で、次の1on1まで(2週間後等)に何をするかのアクションを決める
この方法で、本人の内発的動機から導き出されたアクションプランを作成します。
その中で、会わせた方が良い人、紹介した方が良い本などを積極的に紹介します。
また、自身がマネージャーで部署や全社の経営情報等にアクセスできる場合は、可能な範囲で積極的に、配下メンバーにシェアします。
これは、自身のチームメンバーがサイロ化しない為に行います
学習
チーム内での学習をファシリテートします。
組織学習に関しては、有名なものに野中教授のSECIモデルというものがあります。
これは、組織内での知の創造を個人/集団、暗黙知/形式知の間を移動することで組織学習が促進されるというものです。
このプロセスを意識しつつ、各自の学びを言語化して伝える機会を増やす、また、暗黙知(身体知)を得る為に、同じ場所・空間を共にする機会を増やすことが肝要かと思います。
また、チーム内でできるだけイノベイティブ(クリエイティブ)な事を起こすためには、現状のテーマから離れた領域の探索が必要になります(下図のサーチ)
この探索に関しても、チームでどの様な範囲の知や経験を体験すべきなのかを考えることは有用です。
効率化
最後に、効率化です。
チームの感情にも繋がる話ですが、業務で効率化すべき箇所は徹底的に効率化します。
もちろん、不要な工数を圧迫するという意味もあります。
ただ、それ以上に、ルーティンワークなど、定型業務が増えれば増えるほど、クリエイティビティの高い人材はモチベーションが下がるからです。
以上が、事業開発におけるチームビルディングのポイントになります。
チームビルディングの1番の効能
最後に、チームビルディングに注力することの1番の効能についてです。
それは、自分の判断は信用できなくても、チームの判断であれば信じられるようになることです。
事業開発の不確実性の中で、事業リーダーは多かれ、少なかれ、不安を抱えているものだと思います。
自分の判断によって、事業価値を大きく毀損するリスクがあるからです。
その様な状況の中で、自分一人で導き出した意思決定には不安を感じるものです。
一方で、自分が作り上げた強いチームで議論をし、意思決定をしたことであれば、自分の判断を超えて、遥かに信じることができます。
そして、この信じる力が事業開発を前に進める大きな力になります。
この自分自身の思考回路や判断を超えた、意思決定ができるようになること、そして、それを信じる事ができるようになること。
それが、チームビルディングの1番の効能だと思います。
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