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口述試験完全攻略ノート


1.はじめに

こんにちは。りょうです。

「口述試験ってどうせ落ちないでしょ。」

 僕は実際に論文合格するまでこう思ってました。しかしいざ論文合格したら口述が不安で不安でしかたなかったです。そして何をすればいいのかすごい迷いました。
 そこで僕みたいに何をすれば分からない人の助けになればいいなと思ったので、僕が口述対策として何をしたかをまとめてみます。また口述試験はブラックボックス的な部分があり、情報があまり出回っていないと思うので、その辺の情報もまとめてみました。
口述試験対策に何をしたらいいか分からないって人はぜひ参考にしてみてください。

なお私の口述試験の成績は民事60点、刑事60点(多分)の120点でした。普通!!って感じですね。

2.民事対策

(1)要件事実

要件事実の対策としては「完全講義 民事裁判実務の基礎〔第3版〕(上巻)」をやっていました。いわゆる大島本です。

 ほとんどの受験生はこれをやってくると思います。会場の受験生もほとんどの人がこれを読んでました。口述試験は相対評価である以上、周りがやってくるなら自分もやっておくべきです。

具体的には事例を見て請求の趣旨、訴訟物、抽象的な要件事実、事例に即した要件事実を何も見ずに言えるようにしてました。

 大島本には入門編がありますが入門編だと口述出題実績がある請負契約や債権者代位の要件事実が載っていないので少し不安かなと思います。やるならこの上巻をおすすめします。
<追記>
新しく出た大島本の民事裁判実務[基礎編]には請負契約や債権者代位も載っているみたいです。もしかしたら基礎編でも足りるのかもしれません。

 本書にはAdvanceとして発展的な要件事実も載っています。僕はそこまでしっかり押さえてました。口述出題実績のある遅延損害金請求や代償請求はAdvanceに載ってるのでそこまで目を通すべきだと思います。(商法や会社法の要件事実も少し載っているのですが流石にそれはパスしてました。)

なお令和4年は大島本に載っている要件事実から出題されませんでした。巷では大島本潰しじゃないかと言われてます。来年以降どうなるかわかりませんがとりあえずは大島本で大丈夫かなと思います。

(2)事実認定

 要件事実の対策としては「完全講義 民事裁判実務の基礎(入門編)」の第III部事実認定を読んでいました。

 <追記>
大島本の民事裁判実務[基礎編]という新版が出たみたいです。

まぁやったと言ってもざっと目を通しただけです。口述ではよく事実認定の際に必要な証拠が問われるのでそれを意識して読んでいました。あとは過去問を確認しておけば問題ないです。以下によく出る事実認定の際に必要な証拠をまとめておきます。よかったら参考にしてください。

口述頻出事実認定における必要な証拠
・陳述書→証人尋問の代わり
・銀行通帳→100万円支払った事実など
・領収書→債務を弁済した事実など
・契約書→契約締結の事実など
・借用書→貸金返済の事実など
・登記事項証明書→占有の事実など
・住民票→占有の事実など
・郵便物→占有の事実など

(3)執行保全

 事実認定の対策としては「完全講義 民事裁判実務の基礎(入門編)」の第IV部民事保全・執行を読んでいました。

 過去問見る限りちょっと前は「何それ?」っていう執行保全の難しい知識が問われてましたが、最近だと難しい知識を問われることが少なくなったかなと思います。また傾向としては民事保全法からの出題が多く、仮差押えや処分禁止の仮処分、占有移転禁止の仮処分などを答えさせる問いが多いです。これらがどのような場面で必要になるかしっかり理解しておけば問題ないと思います。
 そしてこの大島本入門編は民事保全法の試験頻出の部分がコンパクトにまとまっていますので民事保全対策はこれで十分だと思います。
<追記>
大島本の民事裁判実務[基礎編]という新版が出たみたいです。


 他方、民事執行法の記述は薄すぎます。執行法を捨てるのは危険すぎるので僕は伊藤塾の基礎マスターテキストで補充していました。執行法の基本部分についてはなにかしらのテキストで補充することをお勧めします。僕は読んだことないのですが、アガルートの一問一答が結構いいらしいです。

(4)民事手続

  民事手続の対策としては主に民事訴訟法の基礎マスターテキストを読んでいました。これは短答対策で使っていたテキストで大丈夫だと思います。僕は主に管轄、口頭弁論の事前準備制度、文書提出命令、証拠保全、証拠調べ手続き、複雑訴訟あたりをざっと確認しました。

(5)法曹倫理

 法曹倫理の対策としては主に弁護士職務基本規定の条文を素読していました。あとは過去問を確認をしていました。これだけでも充分だと思います。頻出の条文は決まっているのでそれらについては条文番号まで言えるようにしてました。以下に個人的に重要だなと思う条文をまとめておきます。よかったら参考にしてください。

<重要条文>※☆は特に重要
 11条 非弁提携
☆14条 違法行為の助長
 21条 正当な利益の実現
☆22条 依頼者の意思の尊重
☆23条 秘密の保持
 25条 依頼者との金銭貸借等
☆27条 利益相反
☆28条 利益相反
 29条 受任の際の説明
 30条 委任契約書の作成
 32条 不利益事項の説明
 42条 受任後の利害対立
☆52条 相手方本人との直接交渉
 53条 相手方からの利益の供与
 54条 相手方に対する利益の供与
 72条 他の事件への不当介入
☆75条 偽証のそそのかし

3 刑事対策

(1)刑法各論

刑法各論の対策としては「基本刑法II」をやっていました。

 基本刑法IIはほとんどの受験生がやってくると思います。会場の受験生もほとんどの人がこれを読んでました。口述試験では刑法各論が毎年のように聞かれるのでしっかり対策すべきです。

 僕はこの基本刑法IIを5周くらいしたと思います。構成要件や論点について何度も何度も確認しました。特に財産犯、放火罪、文書偽造罪、賄賂罪の出題が予想されていたので重点的に読み込んでいました。あとは基本刑法には事例が載っているので、それを読んで何罪が成立するかパッと言えるようにしてました。

 なお最近の傾向として財産犯と財産犯以外の犯罪が出題されています。例えばR4だと1日目窃盗罪、2日目文書偽造罪といった具合です。そして財産犯以外の犯罪は結構出尽くしてしまっていて残っているのは賄賂罪くらいです。R5は結構賄賂罪が怪しいのでしっかり対策しておきましょう。

(2)刑法総論

刑法総論の対策としては「基本刑法I」をやっていました。

 おそらく刑法総論までしっかり抑えてくる受験生は少ないかなと思います。しかし過去には総論の因果関係や中止犯、承継的共同正犯の出題実績があるので完全に捨ててしまうのは危ないです。

 僕はこの基本刑法Iのうち論文の重要トピックに絞ってざっと一通り読みました。具体的には因果関係、不作為犯、抽象的事実の錯誤、正当防衛、誤想防衛、不能犯、未遂犯、中止犯、共謀共同正犯、承継的共同正犯、共犯からの離脱、共犯の錯誤あたりを読みました。

 なおあくまでも口述では各論の出題が中心なので総論に時間を割きすぎるのはよくないかなと思います。

(3)刑事手続

 刑事手続の対策としては「基本刑事訴訟法I 手続理解編」をやっていました。

  口述試験では毎年刑法各論と刑事手続が半々ずつ出題されるというのが基本です。なので刑事手続は刑法各論と同じくらい重要であると考えるべきです。

  この基本刑事訴訟法Iでは刑事訴訟法•規則の細かい手続きが網羅的に分かりやすくまとまっています。特にイメージがつきにくい証人保護や被害者保護の手続きについて図を用いて分かりやすく説明してくれてるのが非常にいいです。これを読めば口述対策はばっちりだと思います。実際、R4では、勾引や証言拒絶、遮蔽措置などややマイナーな分野が出題されましたが、基本刑訴Iを読み込んでいたので、しっかりと答えることができました。

 僕は基本刑事訴訟法Iを3周ほどしました。条文が出てきたらとりあえず六法を引いて確認してました。また僕は番号を覚えるのが好きなので出てきた条文•規則番号は全部覚えました。ただ本番では条文は聞かれなかったのでそこまでやる必要は多分ないです。

 また刑事手続については過去問からの出題がかなり多いです。なので過去問はしっかり確認しましょう。特に緊急執行、冒頭手続、公判前整理手続、伝聞証拠あたりはよく出ます。過去問からの出題が本当に多いので過去問を先に確認して出題傾向を把握してから基本刑事訴訟法Iを読むのもありだと思います。

 なお周りの受験生では「刑事実務基礎の定石」をやっている人も一定数いました。いわゆる定石本です。確かに定石本は刑事手続がコンパクトにまとまっていて悪くはないです。しかしコンパクトな分網羅性が欠けているので、個人的には定石本だけだと不安かなと思います。なので僕としては網羅性がある基本刑事訴訟法Iをおすすめします。 

(4)刑事訴訟法論点

刑訴論点の対策としては「基本刑事訴訟法II 論点理解編」をやっていました。

 おそらく刑訴論点までしっかり抑えてくる受験生は少ないかなと思います。しかし刑訴論点についてもたまに出題されるのでの捨ててしまうのはかなり危ないです。

 僕は論文の時に使っていた論証集を中心に理解があやふやだったり、忘れてしまっているところをこの基本刑事訴訟法IIで確認するという勉強をしてました。深いところまで突っ込まれることはあまりないので論証を覚えておけば大体は対応できると思います。

 また逮捕や伝聞例外についての論点は刑事手続に関連して聞かれる可能性があるのでこれらについては基本刑事訴訟法IIでしっかり確認してました。

 なおあくまでも口述では刑事手続の出題の方が多いので刑訴論点に時間を割きすぎるのはあまりよくないかなと思います。

(5)法曹倫理

 民事と同様に弁護士職務基本規定の条文を素読してました。特に46条〜49条に刑事弁護における規律が規定されているので、そこはしっかり確認しておくべきだと思います。

4.口述模試

 僕は伊藤塾の口述模試を受けました。口述模試はすぐ埋まってしまうので論文合格発表後すぐに申し込みをしましょう。

 結論から言えば模試は受けるべきです。一番大きいのは形式面の確認になることです。伊藤塾では本番と同じ形式で模試を行なってくれるので本番形式面で困るということはなくなると思います。また特に口述練習してくれる友人がいない場合には練習の唯一の機会となります。頭で理解をしていても口頭で説明するのは意外と難しいものです。なので練習してくれる友人がいない場合には複数の模試を申し込んで口頭で喋る練習をしっかりしておくべきだと思います。

5.本番について

(1)本番の流れについて

本番のおおまかな流れとしては、

試験場着いたら、受験票確認、体温測定
                ↓  
体育館のような場所で待機
                ↓  
列ごとに順番が来たら別室へ移動(いわゆる発射台)
                ↓  
自分の番が来たら、試験室に移動
                ↓ 
終わったら、別室に移動して、全員が終わるまで待機

といった感じです。
順番については当日発表されるので運です。試験場に着いてから20~30分で発射台に移動する人もいれば、2時間待たされる人もいます。
体育館では、参考書の確認は可能です。発射台では、参考書の確認はできなかったような気がします。また水分補給以外の飲食はダメだったと思います。
スマホ等の電子機器は紙袋に封印させられるので、触れません。IPad等に参考書が入ってる人は気を付けましょう。
トイレは係員さん付き添いで行けます。

(2)ホテルについて

ホテルは取りましょう。電車遅延で口述が受けられなくなったら、人生終了です。また、口述試験は精神的にめちゃくちゃきつい試験なので、ホテルで休息をとれるというのはめちゃくちゃアドバンテージだと思います。ホテル料金はめちゃくちゃ高いですが、リスクヘッジとして取っておくのをおすすめします。
ホテルの候補としては、基本的に「ホテルエミオン東京ベイ」、「ホテルマイステイズ舞浜」の2択かな?と思います。僕は、ホテルマイステイズ舞浜に泊まりました。

口述試験会場までは、ホテルエミオン東京ベイの方が近いです。大体歩いて15~20分くらいで試験会場につきます。
ちなみにホテルエミオン東京ベイには、大浴場があります。ホテルマイステイズ舞浜には、大浴場がないので、客室のシャワーを浴びることになります。大浴場がいいという人は気を付けましょう。
口述試験前は予約いっぱいになるので、早めに予約を取るべきですが、論文試験発表後、キャンセルがちらほら出るのでそこを狙うのもありです。

(3)持ち物・服装について

当日の持ち物としては、受験票、飲み物、筆記用具、ノート、漫画、参考書がいいと思います。

参考書について、順番によりますが、待機時間が結構あるので、かなりの時間を最終確認に費やすことができます。何を最終確認するかあらかじめ決めておいて、その参考書を持っていきましょう。僕は、大島本と基本刑法IIを持っていきました。

次に筆記用具、ノート?と思われるかもしれません。しかし試験終了後の待機時間は、スマホ触れないため、めちゃくちゃ暇です。この時間を使って、口述再現を作るのをおすすめします。口述試験は試験問題も手元に残らないので、すぐ忘れます。予備校等から口述再現債務を負わされる場合も多いと思うので、口述再現を作るべく、筆記用具とノートを持っていきましょう。

また、再現は意外とすぐ作り終わるので、ぜひ漫画を持っていきましょう。試験後、順番によりますが1~2時間近く暇になります。何もないと本当に苦痛なので、暇つぶしグッズとして漫画は必須です。僕も予備合格者の友達にその情報を教えてもらい「葬送のフリーレン」と「かぐや様は告らせたい」を持っていきました。まじで助かりました。ありがとうY君。


バッグについては、なんでもいいと思います。バッグは試験室の前に置くので、試験員に見られることはありません。僕はいつも使ってる普通のリュックでした。

服装については、普通に黒のスーツにしましょう。周りの受験生は100%スーツでした。私服で行くと落ちるみたいな噂も聞きますし、逆張りしない方が安全です。

なお2日目については、ホテルをチェックアウトしてから試験会場に向かうことになりますが、試験会場に持っていかない荷物についてはホテルが預かってくれます。安心してください。

(4)ご飯について

ホテル、試験会場周辺に、ごはん屋さんはびっくりするくらいありません。気を付けましょう。コンビニはあるのでコンビニで済ませるか、新浦安駅前のショッピングセンターの中にあるフードコートに行くしかありません。
なおフードコートはホテルから新浦安駅までは歩いて20分くらいかかります。遠いです。コンビニはホテルから歩いて5~10分くらいのところにファミリーマートとセブンイレブンがあります。

(5)その他

ホテル周辺には、ディズニーランド・シーに行くであろう家族、カップルが大量にいます。非常にまぶしいです。メンタルハラスをしてきます。「俺は予備論文合格者だぞ。」という鋼の心を持って、耐えるようにしましょう。

5.最後に

  口述試験は落とすための試験ではなく受からせるための試験です。R4口述の合格率は98%です。みんながやってくることをしっかりやればまず落ちることはありません。頑張りましょう。この記事が参考になれば幸いです。

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