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鼻に感じたあの違和感は。

2018年12月 エルサルバドル・サンサルバドル

 街の匂いが、急に変わった。

 燦々と太陽が照りつける、エルサルバドルの首都・サンサルバドル。首都と言えど、それほど高い建物は建っておらず、日本にいる時よりも、目の前には青空が広がっている。

 街を歩けば、どこからともなく聞こえてくる、ラテン音楽。それに、陽気なエルサルバドル人の笑い声が加わる。そして、あちこちの屋台から立ちのぼるのは、伝統料理「ププサ」を焼く香り。見事に食欲をそそられる。

▼屋台で伝統料理「ププサ」を売る、女性たち。

 青空の下、賑わうサンサルバドルの街。歩けば歩くほど、心が踊るーー!

 華やぐ心が絶頂に達したそのときだった。

 街の匂いが、急に変わった。街の風景に変化は感じなかったのだが、変な匂いがするのだ。鼻の奥で感じる、排泄物の匂い。

 鼻に違和感を感じたものの、まだ午前10時過ぎで、周りが明るかったこともあり、もう少しだけ、先に進んでみることにした。その先に、特段、予定は無かったけれど。

 すると、街の雰囲気が突然、変貌した。

 変な匂いを感じた場所から10mも歩かないうちに、道路の脇の植木の中に人が倒れていた。失礼を承知で正確に言うと、薄汚れた40〜50代のおじさんが、上半身は裸で、ジーンズがずり落ち、お尻が半分見えている状態で、死んだかのように寝ている。夜でも、気温が20度近くあるサンサルバドルなので、その場所で、昨日の夜から寝ているのだろう。

 僕はさらに足を進めた。すると、排泄物に加えて、ゴミの匂いが増してくる。ふと足下を見てみると、そこら中に、路上で暮らしている人、人、人。

 街の様子は一見、変わらなかった。低い建物に囲まれた青空が広がる街で、平和に見えた。

 しかし、どうやらあの匂いが、街の変わり目だったらしい。気がつくと、僕は、スラム街に迷い込んでしまったようだ。

 朝だったこともあり、危険な雰囲気はしなかったのだが、長居する場所でもない。僕は、道路に気持ち良さそうに横たわるホームレスを華麗に避けつつ、朝から色目を使い、道を塞いでくる巨大な娼婦たちをかわし、足早にその街を後にした。

 あの鼻に感じた違和感は、危険のサインだった。

 だからこそ、海外で治安の悪い国を歩く時は、目だけではなく、鼻も頼りにするようにしている。

 ゴミや排泄物の匂いは、その先に浮浪者や売春婦が溜まっているかもしれない、サイン。どれだけ街の景色が変わらなくても、少しでも、何か匂うな、と鼻に違和感を感じたら、引き返す。

 街歩き中に違和感を感じた時に、一歩踏み込むか、引き下がるかは、目も鼻もフル活用して、判断する。

 エルサルバドルのスラム街で気がついた、安全に旅をするためのコツ。


▼スラム街を抜けたあとに、振り返りざまに撮った一枚。ホームレスと娼婦と娼婦を買いに来た男性が行き来している。



編集後記

 中米の最小国である、エルサルバドル共和国。スペインに征服された時に名付けられた、エルサルバドル(El Salvador)という国名は、スペイン語で「救世主」を意味する。(ちなみに日本語表記は、「救世主国」)首都・サンサルバドルには、約24万人が暮らす。首都とはいえ、決して治安のいい地域ではなく、一部地域は、外務省が発表する危険レベルが2(不要不急の渡航は止めてください)にもなる。

 そんなサンサルバドルであるが、昼間の街は、いたって平和だ。本文中にもあるように、街を歩けばラテン音楽、そして人々の笑い声が、絶え間なく聞こえる。街の中心には教会と広場があり、そこにたくさんの人が集まる。そして、その教会「IGLESIA EL ROSARIO」が、なんとも言えないほど、美しいのだ。これを見るために、エルサルバドルに来たと言っても過言ではない。教会内部が、太陽の光によって、虹色に照らされるのである。

▼太陽の光の角度により、さらに違った表情を見せる。

 伝統料理「ププサ」は、エルサルバドルの国民食だ。日本の「おやき」のようなもので、とうもろこし粉の生地の中に、豆のペーストや肉、チーズを入れて、丸く平たく伸ばして焼く。ププサは屋台で売られ、その屋台は街中に出ているので、気軽に食べることができる。もちろん青空の下で食べるのだが、これがまた旨い。僕のエルサルバドル滞在中の朝食は、全てププサだった。2つセットで1USドル。(ちなみに、エルサルバドルの通貨はUSドルが使われている)

▼おやきのような、伝統料理「ププサ」

 変わった食べ物でいうと、エルサルバドルをはじめ、中米の一部地域では、イグアナを食べる。滋養強壮になると言われる。

▼隣国・ニカラグアの市場ではこのようにイグアナが売られている。

 僕も試しに、レストランで、Garroboというイグアナを食べてみた。注文したのは、Garroboの姿焼き。まだ原形をとどめていて、イグアナ感が十分残っている。恐る恐る食べてみると……堅い鶏肉を食べてる感じで、普通に美味しくいただけた。しかし、イグアナ初心者だと、どこまでが身で、どこまでが骨かわからないので、かなり食べづらい。スープ付で15USドル。

▼Garroboの姿焼き。レストランで注文しているのは、僕ぐらいだった。

 しかし、忘れてはいけない。エルサルバドルの治安は、かなり悪い。拳銃が普通に出回っているため、街中で銃声が聞こえることもある、と聞く。ホテルの入り口には、24時間、ライフルを持ったガードマンが警備にあたる。もしも、エルサルバドルに行く機会があれば、夜は外出を控えるなど、細心の注意を払い、行動してください。

▼ホテルのガードマン。彼のライフルが火を噴かないことを、祈るばかりである。



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1987年岐阜県生まれ/平日は広告代理店で働く傍ら、週末で世界中を旅する“リーマントラベラー”/70カ国159都市に渡航/『地球の歩き方』から”旅のプロ”に選ばれる/著書に『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』『休み方改革』など/YouTube公式チャンネル更新中

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平日は広告代理店で働くかたわら、週末で世界中を旅する「リーマントラベラー」である著者の、日本では味わえない”非日常な週末”をまとめた旅行記です。

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