蜂窩織炎にCTRX orz

ド田舎の場末病院で、週に1回寝当直している。
当直入りの回診にて入院中の患者が蜂窩織炎っぽいと看護師から言われ、みてみると片側性に下腿~足背に発赤・腫脹あり、もともと水虫もあるとのことで、こりゃ蜂窩織炎として抗菌薬開始が妥当だろうと思った。
蜂窩織炎は自発痛がないことが多いはずだがこの患者では訴えていたし、皮膚所見がそこそこ派手だったため、CEZ 2g q8hはじめようと思った。
 
ところが日勤の副院長がまだ残業していたので一応セファゾリン始めますと報告したところ、「ピペラシリン入れといて」、と言われて嫌な予感がした。
 
なんとこの病院、点滴抗菌薬の採用がCTRXとPIPCだけだったのである。
 
CEXは採用があるので経口もワンチャンありかと思ったが、やはり所見が激しいし、点滴だろうと思い、言われた通りPIPCにしようかと一瞬思ったものの、PIPCは緑膿菌(TAZ/PIPCのカバー範囲を考えても少なくともグラム陰性桿菌)のイメージだし、最初に始める抗菌薬としてはCTRXでいいだろうということで(オーダー自体も慣れている)CTRXにした。
 
<以下、振り返り>
蜂窩織炎の起炎菌としてはβ溶連菌が一番多く、次点でMSSAである。
黄色ブドウ球菌にPIPCは無効(βラクタマーゼ産生)。
よって、カバー範囲としてレンサ球菌と黄色ブドウ球菌を外すわけにはいかず、二択であればやはりCTRXがベターだっただろう。
とはいえ蜂窩織炎は治療経過の中でescalationを考える感染症であるわけであるし、CEX 1回500mg1日4回、で始めるのでも良かったかもしれない。
 
一般的に蜂窩織炎は血液培養陽性率が低い(4%)が、入院患者では18.4%であり、取るに越したことはないだろう。もちろんこんな場末病院では無理な話であるが。
 
ところでこういった病院でPIPCを患者に投与するべきシチュエーションがあるのだろうか?
PIPCの目的は緑膿菌感染のみであるし、empiricに開始するものではない。
熱源不明でバイタルが崩れるレベルであれば、CTRX+PIPCで加療?…血培取れないし、そんな状態になったら救急搬送で転院がよさそうである。
よって、出番はなさそうと思う。
ちなみにこの病院、誤嚥性肺炎にPIPC入れてたりするのだが、CTRXが良いか。
 
グラム染色できる設備もないため、この病院での抗菌薬は、CTRXと、採用されている経口抗菌薬(CEX、LVFX)で戦っていくことになりそうである。
 

 
※なお、抗菌薬治療以外に、RICE・マーキングは必須である。
初期48時間は抗菌薬が効いていても発赤が拡大することがあり、これは自然経過として知っておくべきである。


忌憚ないご意見いただければ幸いです。

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