【オーダー例】アミノレバンとリ~バクト

BCAA製剤(分岐鎖アミノ酸製剤)について。
主に、内服している患者を受け持った際にある程度処方の目的を理解し、例えば入院時にわけもわからず不安を持ちつつdo処方、みたいにする必要がないようにまとめてみる。なお、基本的に副作用はない(悪心嘔吐はあるらしいが)からそこは安心できそう。なお、リーバクトはT-bil>3、肝性脳症昏睡度Ⅲ以上で禁忌。
 

ポイント


LC患者(BCAAは筋肉においてエネルギー源として使用される)に対するBCAA製剤の投与は低アルブミン血症、脳症(アンモニアの分解を促進する効果がある)、そしてQOLの改善に有用である。食事摂取が良好な患者ではリーバクト®を用いる。食事摂取が不良な患者では、BCAAに糖質、脂質、ビタミン、ミネラルを加えた肝不全用経口栄養剤(アミノレバン®EN)を投与する。
前提:LCでは色々な理由でBCAAが低下する。これにより、肝性脳症と低蛋白栄養状態がもたらされる。低蛋白栄養状態は生命予後を規定する因子である。
 

アミノレバンについて追記


アミノレバン®EN(半消化態栄養剤:医薬品)は肝疾患用の経腸栄養剤であり、「肝性脳症の発症を伴う慢性肝不全患者」が対象。アミノ酸の含有量が多く食事摂取量が不十分な場合に有利。Fischer比38と高い。肝性脳症の改善効果が確認されている。SA<3.5g/dL以下の低アルブミン血症を認め、エネルギー摂取量も不足している場合に選択する。就寝前補食糧法(late evening snack:LES☆)として用いても有用。非代償期のLCあるいは肝性脳症からの回復期に良い適応。
(☆入院患者に1wアミノレバン®EN1包LES投与したら色々良かった、外来通院患者でも同様に栄養状態が改善した、とか報告あり。)
妊娠3か月以内または挙児希望女性に投与する場合には用法用量に注意。
静脈栄養について:アミノレバン®は肝不全用のアミノ酸製剤であるが、栄養療法を目的として長期間投与する製剤ではない。肝性脳症が改善すれば速やかに総合アミノ酸製剤に変更する。なお、劇症肝炎・急性肝不全では原則投与しない。急性肝不全時に投与すると、肝性脳症を増悪させる可能性があり禁忌。
 

処方例を3パターン(①~③)にわけてみる


<①肝性脳症初期加療(発症時)>


急速に大量に投与すると肝性脳症が悪化することがあり、まず200mL程度を1~2時間で投与し、その効果を確認する、と記載されていたりするが、◎処方例記載本が多い。
・アミノレバン®1回500mLを3~5時間かけて点滴投与……◎
・アミノレバン®点滴静注+糖液50%20mL 1日1~2回点滴静注
・アミノレバン®EN200mL+50%ブドウ糖液20mL×1~2A(濃度4.5~8.3%)100mL/h
・アミノレバン®EN500mL+50%ブドウ糖液20mL×3~4A(濃度5.3~6.9%)250mL/h
※禁忌に重篤な腎障害のある患者があるため注意
※特殊アミノ酸製剤の点滴静注時には副作用としての低血糖予防が重要(糖が含まれていない)であり、糖液を併用する、と記載されているものがある。受け持った症例はアミノレバンだけ投与していた。
※効果が認められない場合は1000mLまで増量可能だが、劇症肝炎による急性肝性脳症の場合、上記の量さえ過剰な窒素負荷になるため適応にならない。
 

<②肝性脳症入院後(覚醒後、再発予防)>


低アルブミン血症(3.5g/dL)かつ低栄養状態があれば、開始する。
・リーバクト®3包分3各毎食後内服ないしアミノレバン®EN3包分3毎食時
(+ラクツロースシロップ30~60mL分3、毎食後+リフキシマ®錠6T3x毎食後)
一般的に食事摂取不良な患者が多く、退院後も内服する。
 

<③肝硬変>


保険上は非代償期に入ってからとなるが、より早期からの投与が望ましいとの報告も。
長期投与により、肝不全(腹水、浮腫、肝性脳症、黄疸)の悪化、食道・胃静脈瘤破裂、肝癌発生、そのほかの原因による死亡からなる複合イベントと肥満LC患者における発癌が有意に抑制される。2006年のヨーロッパのガイドラインでもLC患者への経口BCAAは推奨度B。
〇食事摂取良好、蛋白低栄養状態(SA≦3.5g/dL)
・リーバクト®配合顆粒3包分3、毎食後
〇食事摂取不良、エネルギー低栄養状態、肝性脳症の既往、蛋白不耐症
・アミノレバン®EN配合散(213kcal)2包分2、日中・就寝前
・アミノレバン®EN1包50gを約180mLの水、温湯(50℃)に溶かして摂取。1日3回。
 

参考文献


・研修医のための内科診療ことはじめ
・総合内科病棟マニュアル 青本
・内科レジデントの鉄則
・医師1年目からのわかる、できる!栄養療法
・レジデントのための食事、栄養療法ガイド
・消化器診療プラチナマニュアル
・消化器内科診療レジデントマニュアル
・日本肝臓学会肝臓専門医認定試験問題・解答と解説 第5集
・必ず役立つ!肝炎診療バイブル 改訂4版
・ホスピタリストのための内科診療フローチャート

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