微分形式 Differential Form

微分形式をnLabサイトでは以下のように説明している。

A differential form is a geometrical object on a manifold that can be integrated. A differential form $${\omega}$$ is a section of the exterior algebra $${\Lambda * T * X}$$ of a cotangent bundle, which makes sense in many contexts (e.g. manifolds, algebraic varieties, analytic spaces, …).

https://ncatlab.org/nlab/show/differential+form

逐語訳してみると・・・

微分形式は微分可能な多様体上の幾何学的な対象(もの)である。
微分形式$${\omega}$$は、(多様体の)余接束 $${T * X}$$
の外積代数 $${\Lambda * T * X}$$の切断である。
そしてこれ(多様体の余接束の外積代数の切断)は多くの(数学的な)文脈(多様体、代数的多様体、解析空間などの数学対象を取り扱う場面)で、理にかなった意味を持つ(make sense)。

整理すると以下のようになる。

微分形式は(多様体の、余接束の、外積代数の)切断である。

この文がちんぷんかんぷんではなく、意味をなして読めてくるためには、(「多様体」と)「束の切断」がイメージできる必要がある。

「多様体」のイメージは「曲面」でよいだろう。「曲面が三次元空間に浮かんでいるイメージ」を持ちつつ、空間としては曲面のことだけを考えればよい。または、曲面上に住んでいる小人は曲面を世界のすべてだと思っているようなイメージ。ヒョウタンのような小惑星上の小人が「世界は平らだ」としか認識していないような状況のこと。

「束の切断」の方はどうだろう。

制約の少ない「束」の定義は、大きな集合(次元が高めの空間~多様体)を小さな集合(次元が低めの空間~多様体)にうまく対応づけ(写像が存在す)るときに、この大小の集合と写像の組が「束」である、というようなもの。
微分形式を考えているときはなめらかな多様体が対象なので、小さな集合の方が多様体である。大きな集合の方は、小さな集合~多様体を底として、多様体上の点のそれぞれに、何かを対応づけたとして、その底と対応づけたものの全体が大きな集合に対応する。具体的には、多様体のすべての点に接平面を貼り付けたら、多様体と張り付いた接平面とを合わせた全体が「大きな集合」。多様体上にベクトル場があるときは、多様体と多様体の点に貼り付けたベクトルたちを合わせた全体が「大きな集合」。
大きな集合の部分集合を小さな集合の要素に対応づける写像があれば、「束」の出来上がり。

「切断」はこの大きな集合から小さな集合の要素への写像のこと。

微分形式は(多様体の、余接束の、外積代数の)切断である。

このように書いたときには、
小さな集合として多様体を取り、
多様体上の点の接空間を考える。
接空間と同じ次元の~双対関係にある~余接の方を考えて、多様体の点と対応づける。
こうして多様体とその余接空間とを合わせた全体を、大きな集合とする。
ここで「束」を考えるためには大きな集合を底である多様体に対応づける写像が必要になる。
(その対応づけはもしかしたらたくさんあるかもしれないけれど、それをうまく対応づけるのに)外積代数を使ってやると、その写像がここでいう「切断」であって、それが「微分形式」のことである、と書いてある。

補足。「束」のイメージはこう。
底となる小さな集合として、長さ1の線分を取ることにする。
大きな集合を縦横それぞれ長さ1の正方形とする。横軸をx、縦軸をyとし、横軸を底とすると、正方形をx座標が等しい線分の集まりと考えることにすると、大きな集合である正方形がうまく底に対応づく、このx座標が等しい線分の集まりを取る、というのが切断。
別の例。
輪ゴム~円環を底とする。輪ゴム上の点に長さ1の線分を、輪ゴム上の点を中点として貼り付けることにする。輪ゴムに関してぐるっと一周させながら線分をどんどん貼り付けていく。その際、隣に来る線分を滑らかに張り合わせて、幅1のリボン帯になるようにしていくとき、この線分は切断関係を表しており、リボン帯は大きな集合を表している。ぐるっと一周してかえってきたときに、最初と最後の線分をひねらずに張り合わせれば円柱が出来上がり、1回ひねるとメビウスの輪ができる。
輪ゴムと円柱と線分との三つ組みは「束」。輪ゴムとメビウスの輪と線分との三つ組みも「束」。二つの「束」の局所の様相は同じだが、リボン帯全体が構成する「形~位相」は異なる。このような意味で、「束」はトポロジー対象(の局所の記述)に用いられる。多様体を考えるときも局所をデカルト空間的に考え、それらの移り変わり~張り合わせ方~接続を問題にするので、やはり「束」がmake senseする。

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