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好きな冬の曲

寒さ厳しき折、というのは今日のような日のことをいうのだろう。
夏に夏の曲を聴いて気分が盛り上がるのと同じように、寒さが厳しい冬の日にこそ聴きがいがある曲が存在する。私は冬が好きだ。特に厳冬という言葉そのもののような風が吹く、今日のような寒い日が好きだ。やはり冬は厳かな季節なのだと思う。冬は眠りの季節で、死の気配を含んだ静けさをしている。冬の寒さは孤独を癒す。この世のすべてが自分に向いていない、人と人が支えあう社会で生きることに向いていないと感じる孤独に、冬の寒さは静かに寄り添ってくれる。冬は、部屋に一人きりでいる時の安心感に似ている。雪国暮らしの人や寒さが堪える身体の人に眉を顰められようと、私は孤独を癒す冬の寒さが好きだ。寒さが厳しいほど響く、私の好きな冬の曲の話をします。

Winter, again - GLAY

寒さに孤独を重ねて描くのが冬の曲の定番だけど、この曲ほどそれをありありと描いた曲もないと思う。特に好きなのは景色の描写で、「のしかかる雲を見上げて」という歌詞でどんよりと重い雪空が思い浮かぶところ。広々とした灰色の虚空に響きわたるようなギターの伸びやかさも沁みる。「厳しくも日々強く生きてる者よ」と呼びかけてサビに入るのも好きだ。GLAYの冬の曲のすごいところは、行ったことのない函館の雪景色が見えるところだと思う。「生まれた街のあの白さをあなたにも見せたい」と歌ってるけどもう見えてるよ。何度も聴いた曲だけど、去年のTHE FIRST TAKEのアレンジがここ数年で一番いい。

Snow White - BUCK-TICK

夏の気分を盛り上げる曲がサザンの波乗りジョニーなら、冬の気分を盛り上げる曲はバクチクのSnow Whiteだ。曲が進むほど寒さが増して雪の重さも増して凍えて死にそうになる曲。迫りくるような大量の白い塊でおおわれた雪景色を思い出す。圧倒的な白さって死を感じるけど、穏やかに眠れるような気さえしてくる。眠りの季節である冬と死の気配を含んだ冬を音楽にするとこうなる。冬ソングを通り越して厳冬ソングだ。寒さが特に厳しい日こそ聴きがいがある美しいバラード。

unlost - The Brow Beat

特に冬のことを歌った曲ではないけど、このさみしそうなピアノのメロディと呼吸と孤独さが冬っぽくて好きという一曲。ひとり残される孤独さと冬が癒す孤独さは通じるものがある。PVはワンカットなうえに天気に左右される外のロケで、この寒そうな曇り空の瞬間をよく撮れたなと思う。

冬の海は遊泳禁止で - Plastic Tree

リンクは曲が始まるところで秒数指定してあります。この記事の最初に、冬の寒さは部屋で一人きりでいる時の安心感に似ていると書いたけど、それが描かれた一曲だと思う。孤独を癒すさみしい景色が見える。歌詞の内容は心中を思わせるのに、なんだか曲の雰囲気が幼くてかわいい。居心地のいい孤独。

I LOVE XMAS - Tommy heavenly6

好きなクリスマスソング。「寒いけれど少し歩こう」という歌詞が好き。信念とか愛情とか――ライブの余韻とかでも言えるけど――そういった心に暖かいものがある状態で寒い空気の中を歩く心地よさを、この歌詞を描いた人は知っていたんじゃないかと思う。この曲は「働く女性のクリスマス」というテーマだとどこかで読んだ。マイナーな曲だけど、響く人いっぱいいそうなんだよなー

ねえ 誰かのために何かになろうとしなくていい
君は君のままでいてほしい
そのままで
自分の好きな自分でいい

https://www.uta-net.com/song/48818/

冬の遊歩道 - GLAY

イントロのアコギの間でどーんと響く低いピアノは、まるで重く厳しい季節である冬を表したよう。この曲は冬と春の間の曲。うんざりするほど続いた冬の寒さがほんの少し和らいだような、東京でいうと2月末くらいの曲な気がしている。私は春が苦手だ。春の暖かさは、集団の中にいる時に感じる息苦しい孤独と似ているから。冬の厳しさを歌えるバンドは冬の終わりも歌えるという持論がある。この曲の「冬の声が微かにまたねと告げている」「春はいつものように微笑んでいるだけ」という歌詞が、憂鬱で仕方がない冬の終わりを楽にさせてくれる。

以上、寒さ厳しき折に響く冬の曲を語る日記でした。やっぱり冬が好きだ。