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新ハウス完成直前の皿回し

10月30日

夏にこぼれた種からひまわりが咲いてます

10月20日に完成予定だった新ハウスの工事が延びて11月10日が予定日に変更になりました。遅れると困るのは直後にやりたかった太陽熱養生という太陽熱を使った土作りの作業も開始が遅くなることです。この時期はどんどん気温が下がっているので1日も早くやらないとその効果が十分に発揮できなくなリマス。さらに困るのはそれ以外にも4つありました。

1. ちょうど太陽熱養生を開始するタイミングでパートの人に来てもらわないとならないこと

2. 同じタイミングで太陽熱養生を教えてくれるアドバイザーに泊まりで来てもらうこと

3. その作業開始日までに農地が耕された状態にしておく必要があること

4. 16日〜18日に日本最大級の異業種展示会に出展枠をもらっておりその準備と出展が必要なこと

この日、栽培メンバーで太陽熱養生のスケジュールを作りました。すると、どうやら私は展示会に行っている時間がないことがわかりました。私はフル参加の予定だったので他のメンバーにかわってもらう必要があります。

展示会に出展が決まった時は「太陽熱養生が終わった後で暇でしょ」と予定を立てていたのだ甘かったのです。

とにかくある程度決めていくしかないので「工事が延期になったら全て破綻する」という爆弾を抱えながら、パートの方、アドバイザーの方、農地を耕してくれる方と日程調整を始めていきました。

11月1日

新しく内定を出していたパートの方に最初の出社日の相談をしていきます。既に工事の延期で最初の出社予定日からかなり遅れているにも関わらず、さらにまだ延期の可能性はあるがという前提で相談させてもらいます。幸いにも柔軟に皆様対応していただきました。アドバイザーの方にも同じ日程で伝えます。

これで全員の作業開始日が決定し、後戻りが難しくなりました。もし工事が延びればアドバイザーにもパートの人にもなんらかの補償をして再スケジュールとなってしまい、費用的にも時間的にも大きなロスになります。

11月8日

工事現場でミーティングをして残りの工事を確認します。どうも遅れているようですが、こちらの後の工程も伝えて工事が長引いても農作業は開始できるように調整をしていきます。なんとか11月14日にパートの方とアドバイーの方に来てもらっても大丈夫という形に収めることができました。
あとは工事の終わりの予定の10日からパートの人らが来る14日までにハウス内の工事でカチカチになった土を耕した状態にしておけるかどうかの問題になりました。

11月10日

引き渡しの日になりました。9割9分はできているのですが設備を確認していくと気になるところが出てきます。特に蛇口から水が出ないというトラブルには笑ってしまいました。

蛇口は僕らから追加でハウスの中央に2つつけておいてくれと依頼をしたものでした。配管の職人があっという間にハウス中央付近の配管に蛇口をつけてくれたのですが、その配管は普段は水が通っておらず、水やり(潅水)の時だけ水が通る管だったのです。

「ドリルが欲しいという客にドリルを売るな。客が欲しいのは穴だ」というマーケティングの有名な話がありますが、僕らはまさにドリルが欲しいと伝えてドリルを手に入れて、穴は開けられないという状態でした。(すぐに直してもらえることになりました)

さて明日から工事の重機でカチカチになった地面に取り組みます。

11月11日

やはりうまくいかなかったというか、世の中うまいこといかないよなあというか・・・土を耕すのにトラクターに来てもらったのですが、あまりにも地面が硬いためにトラクターの刃が入っていかず弾かれてしまうことがわかりました。

水をかけて学校の運動場より硬くなった土をほぐします

水をかけてしみこませたり、ショベルカーで地面の表面の硬い層をひっくり返しながら対応することにします。14日に全面を耕された状態を用意するのは難しそうですが、14日にアドバイザーから指導を受けるのは全体の1/8の面積についてなのでそれを最低ラインとして作業を進めることにしました。

ショベルカーで掘り返すには1/8の面積でも2時間ほどかかります。どうなるのでしょうか。

11月12日

今溜まってる仕事はトラクターやショベルカーなど重機担当の岡田さん(仮名)の仕事です。もうすぐ80歳の地元の方で、これまでも夏の栽培からずっとお世話になってきました。

岡田さんの指示でなぜかトクイテンのハウスにそら豆を植えることに

岡田さんは本当に親切な人で、僕ら以外の畑も数えきれないほど管理しています。この日も他の90歳のおじいさんの畑を手伝う約束をしているというので私も時間の節約のために手伝いに行き、次は何か手伝うことがあるかと聞くとトクイテンの畑の空いてるところにそら豆が植えたいというので、「今そんなことやってる場合じゃないよ!」と笑いながら、それで岡田さんが集中できるならと私が代わりにそら豆を植える畝を別の場所に用意したりします。

一緒に遅くまで頑張りました

11月13日

ついに間に合わないことが確定的になってきました。いよいよ最後の手段で、岡田さんにユンボ(ショベルカー)の操作方法を教えてもらい私も参加です。

機械好きにはたまらない音とパワーを手に入れた感覚。「発進!」と叫びました

ユンボの操作は2本のレバーで4つの関節を操作します。これが非常に良くできていて感動しました。特に右のレバーはバケットとアームを上下させるのですが、12時の方向から反時計回りに回すとちょうどアームを下ろして掬い、アームを上げながら土を落とすという動作になるのです。非常によく考えられています。

そして私も岡田さんの半分のスピードではありますが徐々に慣れてきて、数時間で無意識に操作ができるようになりました。人間の感覚ってすごいですね

11月14日

ついに新しいパートの人とアドバイザーの人がくる日になりました。12日、13日の頑張りでなんとか1/8の準備が整ったのです。

準備万端になりました

当日の作業は、土壌分析の結果から設計した肥料類をまき、水を含ませて、ビニールで蓋をするというものです。1区画で何百キロと堆肥などを入れるので大人数で一気に片付けます。

堆肥をまいたあと

最後はビニールをかぶせて密封し、主に酵母が土をよくしてくれるのを1ヶ月待ちます。

酵母が土をふかふかに

酵母なので要するにパンの菌と同じです。パンと同じように酵母が土を膨らますわけです。サピエンス全史という本では、人間が小麦を利用しているのではなく、小麦が生存戦略として人間を利用しているというようなことが書いてあった気がしますが、我々は酵母を使って小麦を作り、酵母を使ってパンを作りを繰り返しているのであれば小麦よりむしろ酵母に人類は支配されているのだなと割と真面目に思いました。

突貫工事でなんとか無事に準備が終わりました。皿回しの皿を何枚も同時に回しているような数週間でしたが無事にスタートを切ることができました。

作業をしながら「なぜこんなに急ぐのか」と自問したりもしましたが、それは僕らがスタートアップだからだし、楽しいからだという結論に至りました。死ぬ間際に「のんびりしたいい人生だった」とか「ワークライフバランスを実践できた」ということでは私は後悔しそうです。ワークもライフも両方全力でやるからこそ、できた時に嬉しいのだし、周囲に良い影響を与えられるでしょう。それに、それができる健康や頭や時間があることは奇跡のようだといつも感じます。そうであればそれを十分に活用することが義務であり社会貢献であると私は信じています。

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