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過去レポ 東宝新作『1789〜バスティーユの恋人たち〜』 2016.05.05(木)ソワレ

過去レポ続きで恐縮だが、とても楽しかったので残しておく。

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新作『1789〜バスティーユの恋人たち〜』初見。これぞザ・ミュージカルという感じで、まずは楽しめた!

歴史の流れや政治的な話に恋愛が絡むというのはある意味ミュージカルの定番で、ミス・サイゴンやウェストサイド物語もそうだ。でも今回はそんな中でもひときわ恋人たちに焦点が当たった作風になっていた。
まぁフランス革命の歴史そのものはあまりにも有名すぎて、物語として描くには観客の興味を惹きづらいというのもあるのだろうか。

10年前の『マリー・アントワネット』と被るところがかなりあったが、あれは(音楽的にも素晴らしかったけど)ずいぶん芝居寄りの作りだったのに対し、今回は丁寧な芝居というよりは、大劇場向けの、歌と踊りを中心に据えた、そう、ミュージカルの王道だった。
演じている役者さんたちはじゅうぶん役を生きていたと思うんだけど、演出上の描かれ方がすごくあっさりしていて、例えばロナンがロベスピエールたちと仲良くなるところなど、何一つ心の葛藤は描かれず、さらっと終わってしまう感じ。でもそれが却って心地よかった。

そう、これこそ大劇場向けのザ・ミュージカルと呼ぶにふさわしい作品だったと思う。

個人的には、ロベスピエールやダントンが完全に善い人として描かれていたのはかなり違和感あった。あいつらだって結局、権力握ったら恐怖政治やったじゃん、との思いが交錯。なんだあの善人ヅラは。
でもあの時代を切り取って、彼らの悪としての面を出さないことで、ショーとしては非常にわかりやすい勧善懲悪になっていたと思う。

キャストも充実。今日の子役の下手さは目をつぶるとして、皆さん歌がお上手。もちろん一部フラフラしている人もいたし、アントワネット役の凰稀かなめさんも噂に違わず歌が苦手なんだろうなというのはうかがい知れたが、悪目立ちすることなく、無難にこなしていた。

歌が少ないとの前情報も得ていたが、どうしてどうして、わたし的にはロイド・ウェバーと同じくらい歌で埋め尽くされている作品と感じた。まったく不満はなかった。
ただ、歌で物語を紡ぐわけではなく、極論すれば歌の歌詞を聞かなくても物語が続く構成だ。でも実はロンドンミュージカルが流行る以前のブロードウェイミュージカルって、基本そうだよね。だから「ミュージカルはなぜ突然歌い出すんだ」と言われる一因でもあり。
そういう意味でも「王道」と感じたのかな、と思ってみたり。作者がやりたかったことは、ミュージカルの原点回帰なのかもしれない。

小池くんのスター性はさすが。伊達にアイドルやってないね。帝劇センターの重責を完璧にこなしていた。相手役の沙也加ちゃんもとてもよかった。コゼットのときの叩かれようはひどいものだったけど、素晴らしいミュージカル女優に成長した。

古川くんも声量が上がっていてよかった。マチネを観たらしい友人からは「金髪長髪が髪を振り乱して踊るとか反則ですよ。あんなの見せられたら他なんてどうでもよくなっちゃう」とメールが来ていた(笑)。

個人的ヒットは、飯野めぐみさんのポリニャック夫人。マルグリット(田代くんのデビュー作)以来注目している女優さんだけど、なかなかセリフや歌のある役に配されることがなくて、今回はその実力を堪能できた。

音響は電子音多用? 生オケじゃないのはちょっと残念かなとも思ったが、テープならではの豪華かつ電子的な音で、それはそれで一興。悪くなかった。

こんなに素敵な作品とわかっていたら、もっと早くから観ておきたかったな〜、というのが正直なところ。でもこういう出会いこそが観劇の醍醐味だ。

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