帝国劇場 『王家の紋章』2021.08.14(土)マチネ&08.22(日)マチネ
三演(再々演)となる『王家の紋章』を観に、帝国劇場まで足を運んだ。
本当は、この2回だけでなく全部で合計6回の東京公演を観劇する予定であったのだが、我が子アマデ(2歳)が保育園でコロナの濃厚接触者になってしまい、家族上京の予定を大幅に変更せざるを得なくなったのだ。愛妻には悪いことをしたが、愛妻にはアマデと共に自宅に残ってもらうことになり、王家ファンであるにもかかわらず帝劇公演を観る機会を作ってあげることができなかったのは本当に申し訳ない。
そのため、1回目は旅程短縮の上でグスタフ(5歳)を連れて2泊で上京し、2回目はなんと単身飛行機で日帰りをさせてもらった。新幹線代もバカにならないので、マイルを使うことで実質無料で上京できる飛行機は強い味方だ。
1回目の上京時は、グスタフを託児室に預ける形となってしまったが、ちょうどアマデと同じ2歳児の女の子も一緒に預けられていたようで、楽しく過ごせた様子で本当によかった。
感想は、2公演をまとめて書き殴ることとする。
何といっても新妻聖子さんのアイシスが最高であった。思う存分歌う彼女を観ることができただけで、上京した価値があったと言えた。
元はと言えば、初演時のアイシスである濱田めぐみさんが作曲家のシルベスター・リーヴァイさんに「私しか歌えないような難曲を書いてください」とお願いして書かれたアイシスの楽曲。しかしまぁ、聖子さんが歌えないはずもなく、本当に素晴らしい歌唱であった。私が聖子さんファンだからとかではなく、掛け値なしに、カーテンコールでの拍手は聖子さんに対してのものがいちばん大きかったと思う。
聖子さんには本当に帝劇が似合う、と思った公演であった。
濱田さんのアイシスは、まさに「姉」という感じが強く、結婚するにしても血を継ぐための結婚なのだなと理解できたが、聖子さんのアイシスはまだ少女のようで、そこにあるのは恋心そのものであった。自分がここまでアイシスに感情移入して観劇できることに驚いたほどだ。濱田さんが凛としたアイシスであるのに対し、聖子さんはキュートなアイシスであった。
そしてあの超絶歌唱。本当に聖子さんのアイシスはサイコウofサイコウであった。
もちろん聖子さんは、キャロルのときも最高であったのだが、如何せんキャロルは「聴かせる」歌がないのがもったいなかった。初演時のお茶会でもキャロルの歌ではなく、メンフィスの(!)歌を歌ってくれたのもむべなるかな、だ。
そして忘れちゃいけない神田沙也加さんのキャロル。初演再演のこれまた聖子さんキャロルが最高だっただけに大変だったとは思うが、どうしてどうして、聖子さんに見劣りしないほどの素晴らしいキャロルを見せてくれたと思う。初演時のAKBの人とは大違いであった。
どうでもよいが、あまり仲が良くないと言われる、母親である松田聖子さんと同じ聖子さんを相手に名前を呼びかけるのが抵抗あるのかどうかわからないが、沙也加ちゃんが聖子さんのことを「てーこさん」と呼んでいるのが印象的であった。
メンフィスは、2公演でふたりのメンフィスを観ることができた。
海宝さんは正直キャラ違いではあるし、彼の魅力を引き出す楽曲とも言い難いのが残念であったが、キャロルに足を舐めさせるときのイヤらしい表情は最高であった(そこ?)。
浦井さんは貫禄。初演時の前半公演ではかなりがなって歌っておりもったいなかったが、ミュージカル俳優としての歌い方を思い出してからは、本当にきれいに歌ってくれる。素晴らしいの一語であった。
とにかく一幕が特に面白く、こんなに見入って舞台を観たのは本当に久しぶりだったと思う。山祐さんが出演していることすら忘れるほどに楽しんでいた。
山祐さんは前回までのシリアス寄りの役作りは影を潜め、コメディ寄りの役作りになっていた。ロボットムーブは健在。や、そこまではよい、そこまではよいのだが、、、ちょっと歌がひどすぎではなかろうか。声質や貫禄やオーラだけで済ませられない域に来てしまったと思う。
山祐ファンの友人も、「今回は山口さんがひどすぎた」と言っていた。もちろんそれでも応援し続けるのがファンという考え方もあるが、もうちょっと音を取ることに神経を使ってくれたらうれしい限りだ。
二幕は一幕ほどには面白くないのであるが、初演に比べればブラッシュアップされており、それなりに楽しめる。特に平方さんのイズミルは、取り立てて歌がうまいわけではないが堂に入っており、これぞイズミルという感じですんなりとナイルの世界に入っていける。
一方で大貫さん、、、私が観た日だけ特に調子が悪かったという噂もあるが、それにしても歌がひどすぎた。山祐さんのように「歌えなくなった」わけではなく、もともと歌えないのだというのがわかる。二幕はイズミルのビッグナンバーが続くこともあり、本当に苦痛であり、悪夢であった。一幕のちょっとした出番だけでも「???」となったのであるが、二幕はマジで何とかしてほしかった。どうやらダンサーらしいのだが、それにしても。。。であった。特にダンスシーンがあるわけでもないしね、、、明らかなキャスティングミスと思う。
初演再演でムッチャ上手に歌っていた宮野さんが大貫さんのイズミルを観たらしく、よいところ探しの精神で絶賛しているのを見た。私もそういう気持ちで舞台を楽しめたらよかった。メリポピの大貫バートを絶賛するツイートばかりを観ていたものだから、歌下手族だということを知らなかったのだ。次回はもっとよいとこ探しの気持ちで観るようにしたいと思う。
というわけで、不満もないではなかったが、とにかくこの作品の面白さを再認識した上京観劇であった。結局木下さんのキャロルと朝夏さんのアイシスは観られなかったので、これはもう博多に行くしかないのだ、、、