エンタメレビューVol.1 TCG『ビルディバイド』

世にTCG多しといえど、ここまで"ランダムが強く影響するが故に実力差が如実にでるTCG"はあまりないのではなかろうか。
確実に他のTCGとは一線を画する要素をもつ、本格派TCGである。
販売元はアニプレックス。
同社の最初のTCGタイトルという意味でも注目作ですが、3年目に突入してアニプレックスらしさもでてきたタイトルである。

特徴

ゲームとしての大きな特徴は、エースおよびテリトリーという要素をもつことと、デッキ内にあるバスター、ショットの各トリガー、そして相手のターンでも行動が可能なこと(=いわゆるインスタントタイミングがあるということ)。
それぞれの要素だけであれば、エース&テリトリーはForce of Will TCGのルーラー、トリガーはウィクロスやユニオンアリーナ、相手ターンの行動はMtG等、いろんなゲームで存在するものの、すべてを併せもつものはあまりない。
ここからその3要素をすこし深ぼって書くが、飛ばしても構わない。

エースとテリトリー

このゲームでのデッキ構築は、基本的にはエースとテリトリーで何をしたいかを決めて、それを実現するために他のカードを入れ、40~50枚のカードの束を作る。
ゲームが進む中で、エースを手札からプレイしてテリトリーを開けると、そこからゲーム終了まで自分だけ特別な効果をもった状態になる。
たとえば、「5コスト以下のコマンドをプレイしたとき、手札を1枚ゲームから除外するとそのコマンドをもう1回プレイできる」とか「毎ターンデッキの上から2枚見てバスターのユニットがあるなら場に出す」とか「赤いカード(7コスト以上のカードが結構多い)なら全て6コストのカードとみなしてよい」とか(ここではわかりやすくするためだいぶ書き方をおおざっぱにしている)。
どのテリトリーも、基本的には程度の大小はあれど、上の形でなかなかダイナミックなことが書かれている。
そして、その開放につかうエースも、それぞれの対応するテリトリーと相性のいい効果をもって、ダイナミックなプレイができるように作られている、まさに花形、エースである。

トリガーと呼ばれるカード

テリトリーとエースを決めてどういうことをやるか定まったら、それをより実現できるようにカードをいれていく。
最低40枚、最大50枚なので、どんなに少なくともあと36枚は選ぶ必要があるのだが、その36枚のうち(最大)24枚は、トリガーと呼ばれるカードが入る。
バスターのトリガーを持つカードは、他のカードより強力だが、ライフから出てくると(厳密性を欠いた言いかたではあるが)追加で1点ダメージになる。
ショットのトリガーを持つカードは、ライフから出てきた場合コストを払わずプレイできるカードである。
ゲーム開始時に10枚のライフを置くので、40枚デッキの場合はだいたい30%の確率で3枚はバスターがライフにあり、ショットが同じくらいの確率で3枚程度ライフにある形になる。

相手ターンの行動

コストさえ払えるなら、カードのプレイは自分のターンだけに限られない。
もちろん様々な条件があるが、相手のターンやバトルの最中にすらカードはプレイできる。
Quickと書かれたカードは、いつでもプレイができる。
プレイできないタイミングだけ覚えたほうが楽なくらい、いつでもプレイできる。
もちろん安心してほしいのは、自分のターンに相手が先にプレイする、ということは基本できない。
あと、打ち消しがあまりにも弱いゲームなので、だいたいはやりたいことができる。

何がおもしろいのか

一番は、ライフが確率事象であるが故に一発逆転が起こしうること。
第二に、好きなエース&テリトリーで戦えること。
そして、相手ターンにも行動することで最初から最後まで気を抜けない攻防が発生すること。
これらがこのゲームのおもしろさのエッセンスである。

もうダメかもしれない、そういう状況でライフへのアタックをした際に、運よくそのまま全部バスターで勝ってしまう、ということも往々にしてある。
逆に、余裕で勝てそうな局面から、たまたま運悪くめくれたショット1枚で戦局がひっくり返って負ける、ということもままある。
それがビルディバイドである。
そんな確率的な要素が勝敗を決めるその場所にあるため、一見アタックできるのにしないでターンを返したり、逆にアタックしなかったことが敗因になったりという駆け引きが生まれている。
この辺はポーカーのベットやバックギャモンのダブルの感覚に通ずるものがあると思っている。

また、冒頭に書いたが、これはアニプレックスのカードゲームである。
そのため、このゲームにはアニプレックスのコンテンツが(コラボとして)度々登場する。
それらのコンテンツが好きな人がこのゲームに触れ、そのままカードゲーマーになっていく姿も何度か見ていて、その様はソシャゲのコラボに通ずるものを感じている。
膨大な人気コンテンツとTCGを両方完全に自社で保有している会社は他に類を見ない。
もともとはカードゲームの畑にいない会社であったアニプレックスなので、まだまだカードゲーム運営としては力不足ではあるが、ゲームとしては確実におもしろいコンテンツであることは間違いない。

バグ

このnoteは、決してコンテンツを礼賛することが目的ではなく、あくまでレビューである。
そのため、1点だけどうしても言及しなければならないことがある。

ビルディバイドには、無印のラインアップとブライトというラインアップっがある。
どちらもほぼ共通するルールで遊べるが、タイトルとしては厳密には別で、事実上ブライトにしかないルールや、無印にしかないルールもある。
それぞれのラインアップがあるということ自体は問題ではなく歓迎するべきことである。
ただし、裏面も紙の厚さ/固さも違うのに混ぜて使用することが可能である、というレギュレーションがあり、それが実質的な推奨ルールとなっているが、これは問題である。
裏面も紙質も違う以上、プレイ中に簡単にどちらのゲームに属するカードか、すぐにわかってしまう(しかも、紙質は裏が見えないスリーブにいれても相当わかりやすい)。
大人の事情でそういうレギュレーションが存在する、ということ自体には是非をいうつもりはないが、それが推奨ルールであること、無印のみのフォーマットが存在しないことは重篤なバグである。
無印のみのレギュレーションが作成されそれが中心的なフォーマットとなるよう環境整備を行うか、紙質を統一するかを早急に行うことが求められる。
個人的には、本バグ以外に(もちろんエキスパンション個別のおもしろい/つまらないはあるが)、ゲームとしての不満はない。
それだけに、本クリティカルなバグはとても惜しいのであるが、そこを妥協できるのであれば、かなりオススメできるTCGコンテンツである。

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