エンタメレビューVol3 TCG『Magic: the Gathering』

序文

Vol1でいきなりマイナーなTCGの紹介から入ったんですけど。
よく考えたら、TCGとしての楽しみとはなんぞ、ということをちゃんとレビューすることは必要だな、と思いました。
TCG、と一口にいっても、ぱっと思いつくだけで100以上のタイトルがあるわけで、その原点かつ最高傑作のひとつである"Magic: the Gathering"を紹介しない、ということは難しいのではないか、と思うのです(以下、MtGと書きます)。

TCGとはなにか

TCGとは、トレーディングカードゲームのことです。
お店で売っているパックを開けて、出たカードで自分だけのカードの束を作り、それを用いて他のプレイヤーと戦う、そういう娯楽です。
一口にTCGといっても、様々なルールがありますが、共通するポイントとしては、上の他にも、ターン制である、何かしらの勝利条件がある、いち営利企業の製品である、カード固有に絵や効果が設けられている、といった共通点があります。

TCG一般の面白さ、というのを考えることとします。
上のような共通点から、基本的には以下のことはどのようなTCGでも同じくした楽しみでしょう。

まず、不確実性を楽しむ娯楽です。
ゲーム開始時に、自分のカードの束をよくシャッフルしてからカードを引くので、基本的に全ての試合で最初の手札が違います。
もちろん、その後の展開も違います。
不確実である、言い換えれば、毎回異なる内容で遊ぶことになる、ということは、TCG一般の魅力です。

基本的に、勝敗が定義されています。
MtGは、プレイヤーのライフが定められていて、20点です。
相手のこれを0にすれば勝ち、それより早く自分のライフが0になれば負け。
この簡単な勝敗定義が、娯楽として面白い要素になるのです。

そして、いち営利企業の製品であり、すなわち定期的に"更新"が入ります。
たいてい、新しいカードが使えるものとして市場投入され、それを買うことで新しいカードプールからカードの束を作ることができます。
このカードプールからカードを選別していく過程も、TCGとしての面白さのひとつです。

他にもいろいろあれど、最低限でいうとこんなところです。

MtGの固有の面白さとは

マジック:ザ・ギャザリングの世界では、あなたはプレインズウォーカーとよばれる魔法使いです。
壮大なファンタジー世界の主人公となり、呪文を駆使して戦います。

https://mtg-jp.com/startguide/

そう、私は魔法使い。
もちろん、相手も魔法使い。
ここでまさに、魔法使いの決闘がはじまります。
このロールプレイこそが、世界観としてMtGがMtG固有で面白い理由を作っています。

決闘なので、相手の行動に対しても即対応しなきゃいけないですよね。
ということで、相手の番でもカードがプレイできます。
呪文の中には、(ほぼ)いつでもプレイできる"インスタント"と呼ばれる種類のカードがあって、これは大きくMtGを特徴づけています。
自分のターンだけでプレイできるのは"ソーサリー"と呼ばれていて、どちらも基本的にはプレイしてすぐ効果が処理されて、そのカードの役割は終わります。

場に残り続けるカードもあります。
魔法生物である"クリーチャー"、同類の仲間を呼ぶ"プレインズウォーカー"、場に残り続けるタイプの呪文"エンチャント"、道具っぽいものである"アーティファクト"、さらにそれらのカードをプレイするためのコストとして使う"土地"。
これだけ多くのカードのタイプがあるカードゲームは、MtGだけじゃないでしょうか。
情報負荷が適切にあるということが面白いと感じる要素になっている、ということを示す研究は数ありますが(例:https://www.toyo.ac.jp/assets/research/991.pdf)、カードタイプが多いということは、その情報負荷に寄与しているはずです。

しかも、カードの種類数は、毎弾250枚ずつくらい増えていきます(厳密には、過去のカードと同じものをもう1回発売することも多いので200枚程度しか増えてない、ともいえますが、それでも多い)。
約3ヶ月に1回、250種類増え続けることを30年続けているゲームはこれだけです。

まとめ

TCG一般の面白さと、MtG独自の面白さ。
その要素の多くは、"数十枚程度のカードの束を作り、それを使って他人と対戦する"という一言に集約できるほど単純なことしかしない遊びであるのに、自分で組んだカードの束がどれだけの動きを示すかは自分の制御外にある、ということに起因します。
MtG独自の話としては、コストとしてのみ使用するカードを含めて膨大なカードタイプの、膨大なカードの種類から選んで束を作っていく、という過程から、ターンベースでありながらほとんど常に行動できるほどの行動の自由度をもって、明確に勝敗をつけてくれる、という点に惹かれていくことでしょう。
自分が魔法使いとしてロールプレイできる、という点も、実際には魔法を使えない我々だからこそ夢を見れるところに、惹かれる要素があるのかもしれません。

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