エンタメレビューVol4 アプリゲーム『アルケミストガーデン』

序文

いわゆる3マッチパズルと呼ばれるゲームのひとつ、『アルケミストガーデン』、公式略称は「アルデン」。
パズル一般と限らずとも、3マッチパズルですらとてつもなく多くのゲームが出ている中、このゲームだけはベータテストから(途中やめていた期間もあれど)続いている。
なぜ続くか、それに焦点を当てながら、今回はアプリゲームにおけるひとつの重要な運営指標に言及したい。

ゲームの仕組み

メインストーリーは、3マッチパズルでの戦闘を行うことで進めていく。
ストーリー、というほどの会話はないのだが、10~20程度のステージで1話、というものが20話ある。
メインストーリーのクリア自体は、かなり育成が必要ではあるが、課金なしでも充分クリアできる難易度である(ここまで書いていなかったが、いわゆるフリーtoプレイのゲームである)。

正直、ストーリー的な要素、すなわち対戦等を除いた純粋な意味でのソロプレイ、という観点では、このメインストーリーと、最近実装された"タワー"と呼ばれるシステムだけである。
タワーでは、ステージによっては編成の制約があるものの、その中で行う編成でコンティニューなしでクリアする必要があるコンテンツである。
メインストーリ-は、実はクリア後も度々再戦する必要がでてくるが、タワーは再戦できないため、メインストーリーのクリア後にソロだけでやるためのやりこみコンテンツという位置づけであろう。

ソロのみのコンテンツだけを聞くと、特段の面白さがないように感じる。
なんならこのゲームの独自性も伝わってこない。
それはそうである、そう感じるように書いたのだから。

このゲームは、基本的にはソロで遊ぶものではない。
ギルドという仕組みと、そのギルドでの様々なイベントに有利になるような配置物を配置して独自のガーデン、すなわち箱庭的なものをつくることを楽しむゲームである。
ギルドのイベントには、まずワールドマップがあって、そこで配置されたNPCと戦うとか、他のギルドと直接戦って資材を集めるとか、サーバ一丸となって他のサーバと戦うとか、そういう遊び方が中心にあるのがこのゲームである。
いくつかのイベントはギルドに加入していないと参加ができないので、基本的にはどこかのギルドに参加しておくことが強く勧められている。
もちろん、入らない理由はほとんどない。

また、ソロで楽しめるコンテンツには、対戦コンテンツであるアリーナというのもある。
リアルタイムではなく、相手の防御編成を自分の攻撃編成で3マッチパズルによって突破する、というもので、これもエンドコンテンツとして継続を担保するためのものだろう。

実情

仕組みの中で「他のギルドと直接戦う」ということを書いたが、基本的にはどのサーバも原則としては争わないように相互に取り決めて"治安"が維持されている。
そのため、殺伐とした雰囲気はほとんどない。
よくあるワールドマップと箱庭要素をもつゲームで見るような、ワールドマップのどこかで常にギルドAとギルドBが争っている、という光景はまず見ない。
この落ち着いた雰囲気が支配する中、各ギルドメンバーは、ギルド内での会話を目当てにログインをするように思う。
そして、そのギルドメンバーとの会話や、そういった会話を通して仲良くなった人とイベントをより有利に進めよう、というようなことがあるのだろう。

基本的にあまり好戦的な人はこのゲームをやっていない、ということは感じられる。
戦力が高いユーザを抱えるギルドでも、必ずしもアリーナをやっているプレイヤーが多いとは限らない。
また、アリーナ月間報酬も順位ではなくポイントでもらえるので、がんばればがんばっただけ報われるため、(ごく少数のアリーナに全力かけるプレイヤーを除き)特別激しいしのぎ合いはおこらない。
それに加えてメインとなるゲーム要素が3マッチパズルなので、手軽にできるゲーム性である。

アプリゲームとして

アプリゲームである以上、継続運営が必要である。
多くのゲームが1年以内にサービス終了する世になった今、なんとこのゲームは1.5周年を今まさにお祝い中だ。
正直メインのゲーム性は、今どきこれか、というくらい高いとは言えないものである(3マッチパズルなので、すでに絞りつくされている)。
それでもサービスの継続ができているのは、ギルドの仕組みにより、多くのユーザが(ほぼ)毎日戻ってくるからであろう。

また、一般的にはかなり渋いガチャの当たり確率であるので、各サーバの最上位ギルドではさぞ重課金者もいるのだろう。
アリーナで実践級にするまでには、よほどの重課金者でなければ半年近く育成に時間がかかる。
逆に言えば、アリーナを中心的にプレイする人にとっては、環境変化が遅いため、同じ編成で長く戦える、ともいえる。

システムとしては課金要求がかなり強いのに、ギルドとその作り出す雰囲気が大して課金を要求しない空気であるため、微課金/無課金に優しい、という環境が作り出されているように思う。
この環境が果たして本当にいいのか、その答えは運営が続いているからいいのだ、以外には外から言えることはないが、つまりそういうことである、と言える。

What About Myself?

私自身は、(↑のような分析をしながら)かなりアリーナのみを意図してプレイしている。
3マッチパズルである以上、初期配置によって良し悪しは左右されるのだが、編成とどのようにパズルピースを消すかで戦える要素は、体感7割以上で、実力勝負の世界がそこにある。
いち営利企業の商品で勝った負けたをすること自体には、それ自体を楽しむという過程以外にはほとんど意味がないのだが、それでもその過程を楽しめるくらいにはキャラクターのスキルが寄与している。
最近のアプリゲームは、かなりゲーム性を高めた結果、気軽さが失われたものが多くあると感じている。
だが、このゲームはどこまでいっても3マッチパズルである。
そこには手軽な勝敗体験だけを得ることができる。
そういった意味では、"理想的なソシャゲ"と言えるのではなかろうか、と個人的には考えるのである。

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