ワリオ、燃ゆ
(一応前回の続きです。親父エピのやつです。絶対にとは言いませんが前回のも読んではほしいですよもちろん。でもこれを読んでくれてるだけでだいぶ嬉しいですしすごく満たされるので絶対にとは言いません。…いやでもやっぱ読んでほしいかも〜。)
それは僕が小学校3年生の時である。
当時僕には家が近く仲が良かった「しゅん」という友達がいた。
冬休みが終わり登校したある日の教室で、しゅんが僕にとある話を持ちかけてきた。
「明日学校終わったら一緒にサティ行こうや!俺お年玉めっちゃもらって自由に使えるからるいにもゲームのソフト買ったるわ。」
僕は意味がわからなかった。(あとサティってのは今でいうイオンね。)
だってあまりにもWin-Winじゃないから。(あとサティってのはフードコートありおもちゃ売り場ありゲームセンターありのあの頃のキッズにとってのハイパー娯楽施設ね。)
(…俺にしか得ないやん。上手い話すぎて逆に怖いねんけど。)
と小3のまだまだ発展途上の脳みそをフル回転させながらそう思った。
(おかしい、おかしすぎる。お年玉をたくさん貰ったとはいえ、僕らはまだ9歳。せいぜい3〜4万円ぐらいのものだろう。その中の約5千円を使って俺にゲームソフトを買ってくれるだと?絶対に裏があるに決まってる!)
と脳内でしばらく推理したのち僕は、
「え、ええの!?もちろん行くに決まってるやん!!」
とすごく大きな声で言った。めちゃくちゃ二つ返事だった。どうやら僕の脳みその発展は丁度この日にストップしたらしい。
兎にも角にもゲームを買ってもらえることが決定した僕は次の日、ボディには青いドラゴンが刻まれ、後輪の上の部分には謎の突起物がついた自慢の自転車に跨り、変速を最大の6に合わせ、立ち漕ぎでしゅんと共に地元のサティへ向かった。
サティに到着した僕らのボルテージは最高潮だった。僕のテンションはさることながら、ゲームを奢ってあげるという小3の次元を軽く超えた行動を前にし、しゅんはしゅんで一種のエクスタシーに達していたと思う。
そのテンションのまま僕はしゅんに、ゲーム売り場で当時出たてのニンテンドーDS用ソフト「さわるメイドインワリオ」を買ってもらい、さらに大人気カードゲーム「デュエルマスターズ」のカードパックを20パックほど買ってもらい、さらにさらに駄菓子売り場で遠足10回分ぐらいの駄菓子をたらふく買ってもらった。
しゅんもゲームとカードを買い、それらを手に僕らは一日中フードコートで大はしゃぎした。あの日の僕らのはしゃぎようは、マクドナルドのスポンジボブのハッピーセットのCMの子供たちと瓜二つであった。
その後しゅんにこれでもかというぐらい感謝の気持ちを伝え、僕は家に帰った。
それから数日間、僕はワリオのソフトを友達から借りたと言い張り家のリビングで堂々とやった。さすがにカードはいきなり増えると不自然なので自分の部屋の机に隠して、ワリオも借りたという設定なので外のケースは近くのコンビニで捨てた。
小3とは思えぬずる賢さで両親にも訝られることはなく事は進んだ。僕の悪行はこのまま時効をむかえる……はずだった。
それからまた数日後。いつものように朝学校でしゅんに話しかけると、どこか余所余所しい。あれ?と思い、理由を尋ねても答えてはくれない。
「まあ元気ない日ぐらい誰にでもあるわな!へへへ!」ぐらいに軽く思いながら、その日の授業を終え家に帰った。
するとリビングで座っていた母親から開口一番「あんた、私に言うことないか?」と尋ねられた。
(え、言うこと?てか何この状況。絶対機嫌悪いやん。てかキレてるやんこの感じ。いや俺が最近やったことといえば…あれか?あれなんか?いやでもあれはバレる要素なんかどこにも……いや、待てよ。そういや今日なんかしゅんの態度おかしかったよな。ははーんなるほど。
しゅんが何かの拍子にバレる→しゅんの家で家族会議→もちろん共犯者の俺の名前も出る→俺の家に電話かかってきた
やん。これしかないやん。じゃあもう謝るしかないやん。てか言えよしゅんも学校で。まあでもここは逃げも隠れもせずに真っ直ぐ謝ってちょっとでも罪を軽くしとこう!)
と瞬時に察知した僕は迷わずにこう言った。
「…え、は、な、何のこと?まま、まじでわからんね…やけど、うん。」
この期に及んでしらばっくれた。斜め上を向き目を逸らし明らかに動揺しながら。頭ではわかっていたが「ごめんなさい」の一言が言えなかった。まじミスった。
もちろんこれで押し通せるわけもなく、何なら母の怒りを増幅させる燃料となってしまい烈火の如くめちゃくちゃ怒られた。
母親によると、しゅんのお母さんがお年玉を銀行に預けに行こうとしゅんの財布を開けたときに、数万円あったはずのお金がすっからかんになっていたことで問いただして事件が発覚し、その日の朝に連絡がきたらしい。しゅんちゃん話が違うじゃん。てか俺の推理ほぼ当たっとんがな。
その後母親から、その日ちょうどあった習い事のスイミングのテストに合格したら父親には黙っておいてあげるという救済処置を与えられたが、もちろん当たり前みたいな顔をして落ち、父親にもこの話が伝えられることになった。
奇しくも僕が通っていたスイミングスクールはサティの中にあり、天国のような思いをした同じ場所で数日後辛酸を舐めることとなった。
スイミングから帰ってきた僕は戦々恐々としていた。なぜなら父は母の数十倍ブチギレるに決まっているからだ。ましてや、なかなかの額のお金が関わっている問題。帰ってきたら今度こそ死ぬほど謝ろう。とにかくボコられるのだけは嫌だ。
そう思っていた矢先、ガチャッと玄関の扉が開く音がした。父の帰宅である。
僕はダッシュで玄関へ向かい、
「実はこの前しゅんのお金でゲームとかカードをめちゃくちゃ買ってもらったの黙っててん!ほんまにごめんなさい!」
とはっきりとした口調で、誠心誠意謝った。
「え?詳しく話聞くから一旦リビング行こか。」
と父は言った。とりあえず謝罪の気持ちが伝わったのか殴られるのは免れた。
その後リビングでいつ何があって、しゅんにどれぐらいの額を買ってもらったのか事細かに話した。思っていたよりも父は冷静で、もちろん悪いことだから使った分のお金はお前のお年玉で返せという話で落ち着いた。
(はーよかった。今回は殴られずに済んだ。)
と胸を撫で下ろしていると、父が何のゲームを買ってもらったか尋ねてきたので僕は迷わずに、
「メイドインワリオやで。あのDSのやつ!」
と元気よく答えた。
すると父親の顔が一変し、
「メイドインワリオ?それってこの前友達から借りてきたって言うてたやつちゃうの?」
と言った。
「…え、そうやけど。。」
と僕が言うと、
「あ、なるほど。お前俺に嘘ついてたんか。
……それはお前が悪いわ!!!」
といきなり語気を荒げ、めちゃくちゃに殴られた。僕はいきなりすぎて意味がわからなかった。だが父は止まらない。殴られて倒れ込んだ僕をもう一度持ち上げリビングに叩きつけ、「何を嘘ついとんねん!!」と怒鳴りつけてきた。
どうやら父は息子に嘘をつかれたことがどうしても許せなかったらしい。いや他にあったやろキレるとこ。
絶対にもっと怒られるポイントはあったし、今回それらのチェックポイントはクリアしたと思っていた矢先に思わぬトラップに引っかかった。僕の選択しだいでは引き金を引くことは避けられていたはずなのに…。すごく損した気分だった。
その後父は、「ワリオ持ってこい!!」と町中に響き渡る声で叫び、僕は半泣きでワリオのソフトを差し出した。
怒りに震えた父は何を思ったのか、鞄からライターを出してきて、ワリオを持ち換気扇の下へ向かった。
そして、
「おいお前、悪いことしたらこうなるからなぁ!」
と言いながらあろうことか、なんとワリオのDSのソフトのデータが入ったギザギザの部分をライターで炙り出したのだ。
いやまじどういう行動?まず勿体無いって。売ったらそれなりの値段なるのに燃やしてるやん。ほんで何らかの罪に問われんちゃうのこれ?わからんけど。とにかく教育の範疇越えまくってるから。とりあえず今からでも遅ないし任天堂に謝りに行こ。
と今なら思うが、当時は「ワリオが燃やされた後、次炙られるのは俺や」と本気でちびり倒していた。
その後ワリオは灰と化し、僕は炙られることは免れたが、次の日に頭を五輪刈りに丸められしゅんの家にお金を持って謝りに行き、この事件は収束した。僕は僕で次の日には反省するどころか、新しい坊主頭を気に入りヘラヘラしていた。こいつはこいつでもうちょっと痛い目を見たほうがいいとは思う。
以上が僕の父親を代表する「おとんファンキーエピ」である。本当に愉快痛快な親父だと思う。
その後父に話を聞くと、嘘をつかれたことと同じぐらい、奢「られた」ことに怒っていたらしい。今度するときは奢「る」側になれと。
いやあんまその理論小3にピンとこーへんって。
何やったら今でもあんまりピンときてないし、今度実家帰ったときはとびきり美味い飯奢ってもらおーっと。
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