「こころ」

 こころ腫れているときは、植栽がいい。土にまみれ、微生物にまみれ、星のかけらにまみれ、木を植える。木は空を受ける。
 こころ定まらぬ時は、石仕事がいい。石の色、重さ、質感を組み合わせ、石積み、延べ段、園路、テラス。石の経てきた時間、これからの時間を吸う。
 こころ漏れる時は、作り仕事がいい。板塀、竹垣、パーゴラ、道具小屋。構造は、少なくとも何かを繋ぎとめる。
 こころよどむときは、左官仕事がいい。縁先たたき、版築、土壁、アプローチ。左官仕事は水仕事。水の引き際を見極めて、身体で待つ。
 こころころころころがって、こころ腫れ、こころ定まらず、こころ漏れ、こころ淀む。
 こころ遠くへうっちゃって、庭に立ち、自分なんていらないんだと思う。歌うように、身が動けば、踊るように仕事ができれば、今日いちにちは全うし、今夜は、酒がうまいだろ。明日はまた別の日だろ。

 「こころよ、では行っておいで」(八木重吉)
 

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