「ジョウビタキ」
庭仕事をしていると、野鳥たちによく会う。いまの季節ならジョウビタキ。
「ヒッ、ヒッ」と声がして、剪定の鋏を止めると、隣の梅の枝にいたりする。
いつも独りだ。
「ヒッ、ヒッ」の後、「カタッ、カタッ」と音がして尾を振っている。
また来たな、と思う。
また冬が来た。
竹垣作りの青竹を洗っている時、洗い水が凍ったことがあった。そんな横にもジョウビタキがいた。オレンジ色の腹。こちらの手はかじかんで赤い。
冬の庭は静かだ。あんなに蠢いて(うごめ)いた虫たちもいない。植木屋の天敵のハチたちは、霜が降りる頃には姿を消す。そんな頃にジョウビタキは大陸辺りから渡って来るのだ。
庭土が凍り、微生物レベルで沈黙しているような季節に、ここが楽土と飛び回る。
ここが楽土?
鳥たちはいつも必死な目をしている。
こちらも無言で脚立に上がる。
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