「植木畑の縄文」

 田人に植木畑を借りてもう十五年以上になる。セリ市で仕入れた植木をストックしておくと、作庭のイメージがつかみ易いので重宝する。いわきでは珍しい黒土の畑だ。
 借りてすぐに驚いた。土の中から縄文土器の破片が出てくる。地主に尋ねると、以前、市の調査が入ったことがあるという。その残渣がまだ畑に埋もれているのだ。
 スコップの先にカチリと何か当たると指で探ってみる。大抵は割れた欠片だが、きっちりと文様の作りこまれた塊が出ることがある。数千年。なんてことだ。腐食もせず、今作ったかのようだ。
 田人は田人石、コンニャクの時代があり、炭鉱の時代があり、山仕事の時代があり、その前は、その前は? うまくイメージが結ばないが、それでも縄文からここで暮らしてきた人々があって、いのちが連綿とつながり、自分らもここに吹き寄せられ、いま暮らしている。
 私たちがいま暮らしているということを、数千年後だれが思い出すだろう。


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