蛮族700字文体シャッフル・アゲイン

Enho_Oshoです。
3月27日~4月2日開催の「蛮族700字文体シャッフル企画・アゲイン」主催を務めました。

著者予想で優勝されたKiygrさん、SuamaXさんおめでとうございます。先日お二方への優勝賞金の授与を終え、主催としての役目を終えました。結果発表から1週間程経ちましたが、ゆっくりと振り返りをしていこうと思います。

テーマ「空」

「空」には多くの読み、多くの意味が含まれています。前回テーマ「模倣」では「なにを模倣するか」に焦点が当たりましたが、今回テーマでは「空」をどう捉えるかを蛮族一同に委ねました。

このテーマを選定した理由はただ1つ、「私の氏名(姓・中間名・名のいずれか)に空の漢字が含まれているから」です。意味がたくさんあるからとか、仏教における「くう」を書いた作品を見たいからとか、そういった理由は正直後付けです。私の氏名に含まれている故、この漢字が好きなのです。たったそれだけです。

文体の提出が自作品も含め19作品、その中で大きく分けて4種類の「空」の捉え方がありました。「頭上のそら」「空中」「空虚」「仏教におけるくう」の4つです。自作品ではこの内「空虚」を取り上げました。

No.1

目が覚めると目の前に、大きな空蝉がありました。
私より一回り小さな空蝉が、私に背を向け横たわっていました。

触れると崩れてしまいそうなその殻の背には、縦に裂けた大きな孔が開いています。
首を伸ばし孔を覗いてみますが、中は暗くて何も見えません。

ふと、暗闇の落ちる孔に手を差し込みました。
朝の冷えた空気に反して、誰かが脱ぎ去ったすぐ後のような温かさを感じました。

寝巻を脱ぎ捨て、四肢から順に孔の中へと入り込みました。
不思議と全身がすっぽりと収まりました。

全身が温かさに包まれます。
やがて身体の中へと温かさが染み渡りますが、しかし私の身体の芯にある洞だけは冷え切ったままでした。

洞が、ゆっくりと広がっていきます。
洞は私を侵食し、私はからっぽになりました。

中身を失った私の殻は背中が裂け、そして空蝉の一部となりました。
空蝉は私で、私は空蝉です。

空蝉は明日もまた、目覚める私の元へと現れることでしょう。

これは何だと思われた方がほとんどでしょう。これは私が見た夢に、自らの解釈を加えて書いた作品です。故に抽象的で、雰囲気のみの作品になってしまったことは私の力量不足でしょう。精進します。

『空蝉』は蝉の抜け殻です。命ある蝉が残した、役割を終えた中身の無い殻は空しさの象徴であります。夢で見た空蝉は私の空しさそのものであると、そう解釈をしました。いくら中身が満たされようとも直に空しさが襲い、またそれを繰り返す。そんなお話でした。

仏教における「空」

No.12、No.17にて仏教における「くう」の捉え方が見られました。それぞれの解釈はさておき、「空」とは一体何なのでしょうか。

空とは即ち「実体がない」ということです。ここでは般若心経に見られる「色即是空」について簡単に説明をしましょう。あくまでも簡単にです。私が述べることが全てではありませんし、簡単に理解し得るものでもありません。斯く言う私も十分な理解に及んでいないことをご了承ください。

しき」とは私達の心身を構成する5つの集まりである五蘊ごうん(色 - 形あるもの・受 - 六感・想 - 知覚・行 - 意志・識 - 認識)の「色」、即ち私達の肉体のことです。私達は自身の身体に触れたり見たりすることで、その存在を認識することができます。しかし生物を形作る細胞は、絶えず生まれ変わり続けています。今この瞬間私達を形作る細胞が全て新しい細胞へと置換された時、それは自分であると言えるのでしょうか。

観点を変えてみましょう。自身を鏡や写真で見た姿と、他人が自分を見た姿は同じでしょうか。おそらく多くの場合でこれは一致していることでしょう。しかし、人間以外の他の生物から見た私達の姿は、多くの場合で異なって見えていることでしょう。人間の可視光線の範囲を超えた周波数の波長を受容できる生物が多くいます。故に人間から見た姿が実相であるとは言えないのです。

2つの例を上げました。即ち私達の身体は、絶えず変化する無限の関係性の中で起こる現象でしかないのです。これが「色即ち是れ空なり」です。「空」は「零」ではありますが、「全てが存在しない」という意味ではありません。「404」という数字が「44」でないように、その「0」にも存在はあるのです。

最後に

余談ですが「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー アゲイン」より「アゲイン」を頂戴しました。

創作は趣味の範囲内である限りはその過程を楽しまなければいけないというのが持論です。今回の企画を通して、皆様が楽しんでいただけたのであれば幸いです。

蛮族700字文体シャッフル企画・アゲインへ関わってくださった多くの方々へ感謝を申し上げます。ありがとうございました。

イボンコペッタンコ!

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