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『自分思い上がってました日記』を読んで

6月13日
 有隣堂書店たまプラーザ店で北尾氏に話を聞いてもらう。同じ目線でこちらの話を聞いて、礼節をもって応答してもらえた。勇気がふつふつと沸いてきて、元気になって帰路に就いた。「言語のかかりつけ医」のカウンセリングセッションのような不思議な場だった。

9月17日
 Titleで『自分思い上がってました日記』を購入。紫煙がゆらゆら漂っている新宿・珈琲タイムズで一気に読了。
 本をつくることを生業としているひとりの人間の暮らし。その偽らざる記録がここにある。何が好きで何が嫌いなのか、何が不安で何を恐れているのかを正直に書くにはとても勇気が要るはず。僕は誰にも見せないという前提で日記を毎日書いているが、それでもありのままを書くのはむずかしい。それはきっと「誰にも定義されたくない」「誤解されていたい」という根深い欲望のせいだ。しかし、嘘がないことが、明晰な眼差しで世界を眺め、戦闘速度で思考しながら生きる秘訣なのかもしれない、とも思う。
 この日記を読んでいると、いろいろな言葉が思い出された。いい読書体験だったなアと感じるのは大抵、記述内容から触発されて連想や思考が活発になっているときだ。「私は、出会うために生まれてきて、出会いを繰り返しながら考えてゆく」「人間にとって、明日誰に会うかがいちばんの楽しみではないか」(寺山修司)「このノートブックの中で語りなおした時間の中で、わたしは生まれなおしている」(スーザンソンタグ)

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